若手テストエンジニアを育てる試み 「WACATEワークショップ」レポート

13歳のハローワークではありませんが、三度のメシよりゲームが好きだった筆者が、一日中ゲームをできる職業(?)があることを知ったのは中学1年生のときでした。それはゲームテスターと呼ばれる職種で、ゲームのバグを⁠ゲームをプレーしながら⁠発見するお仕事です。ゲーム好きゆえ、そこのところを⁠ゲームを遊びながら⁠に脳内変換したのは言うまでもありません。

その後、少年は身も心も大人になり、知恵もついて、ゲームテスターというものがなんなのかを知ることになりました。ちょっと(いや、かなり)イメージしていたものとは違いましたが、筆者がソフトウェアの「テスト」という存在を認識するきっかけになったことは間違いありません。

そして『ソフトウェア・テストPRESS』の編集に携わるようになり、エンジニアとしてテストに携わるさまざまな方たちと出会ったことで、⁠ソフトウェアテスト=想像力、さらには妄想力」を要する仕事であることを知ります。⁠空想してから寝てください」というナムコ(当時)のキャッチコピーが大好きだった筆者は、エンジニアとしても職人としても魅力のある仕事と再び認識するようになりました(微妙にずれていますが気にしないでください⁠⁠。

そんな折、「WACATE 2007」(Workshop for Accelerating CAdet Testing Engineers)という、実務経験の浅い若手テストエンジニアを主体とした日本初のワークショップを取材する機会を得ました。

手で、頭で、口で、胃で、肝臓で、勉強するWACATE

第1回目となったWACATE 2007は、2007年の年の瀬せまる12月15~16日の2日間、東京上野にある水月ホテル鴎外荘にて開催されました[主催:ソフトウェアテストワークショップ実行委員会(WACATE実行委員会⁠⁠、参加者40名弱⁠⁠。名称こそ「WACATE」ではありますが、第1回目の参加者の比率は、若手2:中堅2:ベテラン層1と、大きく偏ることもなく、各層がお互いに刺激しあえる絶妙なバランスです。

会場となった「水月ホテル鴎外荘」
会場となった「水月ホテル鴎外荘」

WACATEは、組込み業界における同種の取り組みである「SWEST」(Workshop on Embedded System Technologies)にヒントを得たメンバー有志により企画・運営されています。そのため、

  • 若者の積極参加を促すプログラム
  • ⁠宴会⁠⁠泊りがけ⁠⁠夜更かしの分科会⁠といった、世代を超えたコミュニケーションを図る場の創出

といった共通性が見られるほか、第1回目は天然温泉までついた、粋な環境での開催となりました。

2日間に渡って開催されたワークショップの詳細な内容は、WACATEのWebサイトにもレポートが掲載されていますが、各プログラムは講習+即実習という形式で、グループディスカッションやテスト技法、マインドマップを用いた演習を行います。とくにマインドマップを用いた演習では、自分の考えや人の考えを引き出し、グループとしての結論の出し方を調整するといった作業が要求され、主催側も想像しなかったような独自の分析結果が飛び出すなど、大いに盛り上がりました。

事前に用意したポジションペーパーをもとに行われた「テストを熱く語ってみよう!」のグループディスカッションの様子
事前に用意したポジションペーパーをもとに行われた「テストを熱く語ってみよう!」のグループディスカッションの様子
Myersの三角形を題材にしたテスト設計を、マインドマップを用いて行うグループ実習と成果発表の様子
Myersの三角形を題材にしたテスト設計を、マインドマップを用いて行うグループ実習 成果発表の様子

また、1日目のプログラムの締めに設けられた分科会では、⁠テストエンジニアのメンタルとモチベーション」⁠テストチーム戦略」⁠品質の理想と現実」⁠キャリアについて」といったテーマ別に4つの部屋に別れ、お酒とつまみを持ち寄って車座になって意見交換が行われました。分科会では、とある参加者が持ち込んだ書籍をめぐって、突発的に「だれがいちばんおもしろいバグの話をするか」で華々しい(?)争奪戦が行われる分科会がある一方、ほかの分科会が散会したあとも集合論の話が夜な夜な懇々と続く部屋もあり、お酒が進むほどベテランが本領を発揮している印象でした。

深夜の分科会の様子(つまみのうまい棒は余り気味でした)
深夜の分科会の様子(つまみのうまい棒は余り気味でした)

2日目には、電気通信大学の西康晴氏による「テスト海外動向」や、NARAコンサルティングの奈良隆正氏による「ソフトウェアテストと品質の基本」といった講義も用意され、若手に限らず、組織内で毎日業務と向き合っていたのでは得られない視野と知識と体験が得られるプログラムが提供されていました。

NARAコンサルティング、奈良隆正氏による講義
NARAコンサルティング、奈良隆正氏による講義

第2回目の開催も決定!

JaSSTTEFでは必ずしも経験の浅い若手エンジニアが主役になれるとは限りませんでした。それならば、そういうことを目指した場を、若手自身の手で作ってみればいい。開発の最前線で実際に汗をかいている次代を担う若手にこそ、勉強や交流の場、そして勇気を与える場が必要なはずです」⁠実行委員長の池田暁氏)という想いで実現したWACATE。第1回目ということもあり、機材の準備にドタバタする光景もありましたが、参加者を主体にしたプログラムが進行するにしたがって、参加者間の緊張も打ち解け、このようなワークショップへの参加が初めてという方にも親しみやすく入っていけたのではないでしょうか。

実行委員長の池田暁氏
実行委員長の池田暁氏

今後も継続的に開催される予定で、直近となる第2回目は2008年6/14~15(1泊2日)に予定されています。詳しくは、WACATEのWebサイトのほか、ソフトウェアテスト関連のメーリングリストなどで告知されますので、興味を持たれた方は参加されてみてはいかがでしょうか。

WACATE公式サイト
URLhttp://wacate.jp/

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