オフショア開発の最前線と成功に導くキモについて訊く

オフショア開発というと、日本よりも数倍の人口を持つ中国やインドをひとくくりにして語られることが多く、一律的な話に違和感を感じることがある。そこで、伊藤忠テクノソリューションズ㈱主催の「海外から見たオフショア成功の秘訣」セミナーで講師を務めた大連毅信軟件有限公司(e-TRUST)の総経理 白石久充氏に、オフショア開発の現状などについて聞いた。

白石久充氏
白石久充氏

同氏は、長年に渡って日本の大手メーカーに技術者として勤務し、中国でのオフショア開発にも携わってきた。その過程で会社との方針の相違から2004年に自身で現地にて起業するに至ったという。現在は30名以上の中国スタッフを抱えている。

同社の特長として、発注側である日本のメーカーが重視している点などを、中国人スタッフ(開発者)に周知徹底しているところだという。また、同社の拠点である大連はいわゆる中国の東北三省に位置し、中国内で一番の親日都市であり、大連ハイテクパークや大連ソフトパークなどがそれぞれ政府と民間主導によって建設されていて日系企業も多い。

オフショア開発を成功に導く点として、白石氏は「オフショア開発と言っても同じ人間同士なので、腹を割って真剣に向き合うことが重要」と強調しながらも、実際にあった出来事を交えながら、ほんの一例として次のような点を挙げてくれた。

  • 納期など期日、納品物はお互いに納得したうえで決定する(⁠⁠来週の後半」などとは言わない)
  • コミュニケーションには相違があることを前提にして常に確認する(⁠⁠わかりました」には内容/日本語の意味も含めて理解している場合と、内容は不明のままだが、言っている日本語は理解した場合の2種類がある)
  • 問題が発生した場合などは人前で大きな声で怒らずに前向きな対応をしながら注意する(相手の面子を大事にする)
  • 常に指示どおりに行ってもらうのか、部分的には開発側で判断してもよいのかを明確にしておく
  • できる限りカタカナを使わずに、漢字かIT英語を使う(ただし、インドと比較して仕様書などのドキュメントをわざわざ英語に翻訳せずに通じる点が強み)
  • 同じことは2名以上が把握できている体制を作る(人材流出の対策や緊急時対応のため)

そして白石氏は何よりも大切なこととして、次の言葉で締めくくった。⁠オフショア開発で成功するためには、会話は日本語であってもよいのです。要は中国を含めた海外の企業と、きちんと一緒に仕事ができる⁠日本人⁠の育成が一番重要です」

大連毅信軟件有限公司
URL:http://www.e-trust.com.cn/

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