9月3日、グーグル(株)は、同社が開発したWebブラウザ「Google Chrome」についての記者会見を行った。
「ブラウザには選択肢がある」ことを認識させたい
まず同社エンジニアリングディレクターLinus Upson氏から、Google Chromeの製品コンセプトについての説明が行われた。
Google Chromeは、次の3点を主眼において開発されたという。
- 新たなユーザエクスペリエンスによるユーザビリティの向上
- 開発者に新たなブラウザ、Webシステム開発環境を提供し整備する
- オープンソースでブラウザを提供することによる、Web環境そのものの発展
これを具現化するため、まずブラウザの高速化を検討、HTMLレンダリングエンジンとしてSafariなどで採用されているWebKit、JavaScriptエンジンとしてV8を採用した。また同社内で「OmniBox」と呼ばれている検索とアドレス入力が統合された入力ボックスや、非常に高機能で多彩なタブ操作が可能なタブブラウズ機能により簡単な操作で便利に利用できる点が紹介された。
このタブ機能を支える技術として重要なのがマルチプロセスモデル。各タブの処理が独立して実行されるため、あるタブがビジーあるいは無応答の状態でも、ほかのタブでのブラウズに影響が出ない。また、このため1つのタブのセキュリティリスクが他のプロセス(タブ等)に影響しない。
このほか基礎技術としては同社のオフラインでのWebアプリケーション実行を実現する技術「Google Gears」が採用されている。これについても今後はオフラインでのデータベース保持や、バックエンドの標準化技術としてWeb標準に提案していきたいとのこと。
その後の質疑応答ではまず、なぜさまざまな技術をFirefoxやSafariといったプロジェクトに提供しているGoogleがブラウザまで作るのか?という問いが上がった。これに大してLinus氏は「Mozilaなどのブラウザは長年開発されすばらしいソフトウェアになっているが、Googleではこれとは別にブラウザに対する意見や希望がある。ただ、これをすべてMozillaに押しつけるわけにはいかない。Googleのブラウザに対する考え方を具現化したかった」と答えた。
またレンダリングにWebKitを採用した理由として、動作が速い点とともに、コードがシンプルである点を上げた。Linus氏によると、他のエンジンに比べコードサイズが1/4という。また、Androidの開発ですでに使っているので、同社の開発陣になじみがあったというのも大きいと述べた。
Windows版のみが提供されている点については、「プラットフォームを意識した開発は行っていない」と述べ、まずブラウザのスピード、安定性、既存Web環境との互換性を重視し、日付ありきのリリースではなく、自信をもって送り出せるものができたときに、順次リリースしていきたいとのこと。
Chromeのシンプルさの例して、ダウンロードサイズが小さい点もアピールした。現在ダウンロード可能なベータ版を例に取ると、約7Mバイトのダウンロードファイルで47言語をサポートしている。「この手軽なサイズと簡単な導入手順で、ブラウザには(OSに付属するものだけではなく)選択肢がある、ということをユーザに認識させたい。それがわかっていないユーザが大部分だから」(Linus氏)
堅牢、高速、安全
次にGoogle Japanのシニアプロダクトマネージャー 及川卓也氏が、実際のデモを交えながらChromeの機能や特徴について説明を行った。
及川氏はChromeの特徴として「シンプルで使いやすい」「洗練されたテクノロジー」「Webイノベーションを加速」というポイントを挙げた。
使いやすさのポイントとしては、先にLinus氏も挙げた多機能な入力ボックス(多機能ワンボックス)がある。これは検索とURL入力が統合されたボックスで、Googleに限らず任意の検索エンジン、ブックマーク、閲覧履歴、キーワード候補、URL補完によるページ候補などをまとめて表示、入力、選択する機能を持つ。これにより、たとえばAmazonの商品検索を使って希望の商品ページに直接アクセスするといったことが可能となる。
また非常に柔軟なタブ操作も魅力のひとつ。新しいタブを開くと、よくアクセスするページがアイコン状態で表示されるほか、最近のブックマークや閉じたタブなども表示され、オフラインながら一種のポータル的な使い勝手を実現する。またタブを別のブラウザウィンドウにドラッグで移動したり、並べ替えたりすることも可能。
またよく使うページだけではなく、Webアプリケーション単位でショートカットを作成し、たとえばGmailをショットカット化して、あたかもデスクトップのメールソフトのように使うこともできる。
そしてテクノロジーのポイントとして「堅牢、高速、安全」の3項目を挙げた。堅牢さの例としてタスクマネージャによるタブやコンポーネントの管理、各タブプロセスを独立して動作させていることや、ブラウズ履歴やCookieなどを他のタブから隠し、終了時には消去する「シークレットモード」などがある。
また高速=パフォーマンスを示す例として、複数のWebページを順に表示するスクリプトをInternet Explorer 7、Firefox 3、そしてChromeで比較実行するデモを行い、IE7の1/3、Firefox3の約1/2の時間で表示できることを示した。
なお、多くのブラウザに採用されているアドオンプログラムなどを付加する機能は設けていないという。「ブラウザを肥大化させないで、シンプルかつ便利な機能の実現を目指します」(及川氏)とのこと。
- Google Chromeダウンロードページ
- URL:http://www.google.com/chrome