Yahoo! JAPANが展開する人脈管理・人脈拡大SNS―「CU」開発の舞台裏

2008年11月5日、Yahoo! JAPANは同社の新サービスとしてCUを発表しました。同サービスはSNSの一種ではありますが、現在日本で主流となっている、幅広いユーザを対象としたコミュニティ強化型のSNSとは一線を画したコンセプトとなっているのが特徴です。リリース後、1週間で約4,000人のユーザを獲得するなど、今、注目を集めるWebサービスの1つとなっています。

今回、CUの開発を担当したヤフー株式会社地域サービス事業部企画制作部 企画3 古賀真紀氏、マーケティング本部 桧谷計仁氏のお二人に、サービスローンチの経緯、今後の展望について伺いました。

トップ画面
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人脈管理・拡大の“きっかけ”

――まずはじめに、このサービスを始めようと思った経緯とコンセプトについて教えていただけますか。

古賀氏:

CUの一番の特徴は、本人公認かつ実名での登録を強く推進しているSNSという点です。従来のSNSでは、ニックネームなど、本人を認識しない登録名でのコミュニケーションも活発に行われていましたが、CUは実名であるところが一番のポイントです。

これは、ビジネスユースを意識したサービスで、ビジネス上の人脈管理・拡大を実現できる場を提供したいためにこのようなコンセプトにしています。

CUでは、ビジネスの⁠きっかけ⁠を作れる場を提供することを実現したかったんです。

アクセスコントロールを活かしたネット上への人脈マッピング

――CUならではの機能やCUの特徴がありましたら教えていただけますか。

桧谷氏:

「CUならでは」という意味では、⁠マイコネクション管理」です。これは、リンクを登録したマイコネクションのつながりの度合いを三段階に分けられるものです。

マイコネクション管理
マイコネクション管理

この機能はプロフィール欄と紐付いていて、自分のプロフィールの公開範囲についてアクセスコントロールを指定できます。基本的にビジネス向けのサービスであるため、職歴などの情報は公開しやすくしている一方で、誕生日などの個人情報を制限するときなどに使用できます。

また、CUならではの特徴で見た場合、他のSNSで実装されている「日記」⁠あしあと」といった機能はあえて付けていません。これらの機能は、新しいコミュニケーションにつながりやすいものですが、CUが目指すビジネス上での人脈管理・人脈拡大では不要と考えているからです。

開発の裏側

――CUの開発について教えてください。具体的なプラットフォームや開発体制はどのようになっているのでしょうか。

古賀氏:

使用しているプラットフォームは、オープンソースソフトウェアのSNSツールOpenPNEです。

開発については、あまり複雑な機能追加を目指してはいなくて、先ほども述べたように「ビジネスのきっかけづくり」ができるよう、可能な限りシンプルなものを目指しています。

開発については、CU上に機能改善に関するコミュニティがあり、その中でユーザの方からの忌憚無きご意見をいただいております。今後はこれらを参考にしながら、より良い形を目指していきたいです。このようなスタイルを採用しながら、速く質の良いものを実現することを心がけています。

CUで考えるビジネスモデルと世界観

――具体的なビジネスモデルについて教えていただけますか。

古賀氏:

正直なところ、現時点ではマネタイズの部分について強く検討していません。まず、サービスの中身を強化し、⁠たくさんのユーザを獲得すること⁠を目指しています。リリース以降、非常に順調にユーザが増えており、また、クチコミで広がっていることを体感しているため、当面はこの流れに沿って展開していきたいと思っています。

また、課金や有料会員といったことについては、現時点では検討していません。その代わり、実名ベースかつ招待制という形で、ビジネスユーザをどんどん増やしていきたいです。

桧谷氏:

ビジネスに関しては、CUの世界観も非常に関係していると感じています。CUから見た場合、Yahoo! JAPANの他のサービスも、外部企業や組織のサービスも同列の扱いとなります。というのも、CUが持つ世界観を重視しているからです。そして、それらに対するアプローチの判断基準は、⁠CUユーザにとってメリットがあるかどうか⁠という点です。そのため、たとえば現段階ではネット広告といった部分についてはあまり考えていません。

今後の展望

――最後にリリース後の感想と今後の展望について教えてください。

古賀氏:

まず、リリース後の反響ですが、こちらが想像していた以上にたくさんの方に参加していただけたと思っています。とくにアーリーアダプターと呼ばれる、ITリテラシーの高い方、ネットに強く興味を持っている方たちに、ご登録していただくことができました。

今後は、参加しているユーザの皆さんにビジネスのきっかけを掴んでいただき、実際にビジネスにつなげていただければと思います。

それから、個人的には、仕事をするときに紹介状が必要になる状況があったときに、紹介状ではなくCUのつながりによる信頼から仕事につながるような、そういう動き、つまり、CUで完結せずに、外に広がるような活用をしていただけるとうれしいですね。

機能追加についてですが、まずはローンチできたことで一安心しています(笑⁠⁠。ただ、ビジネスユースという観点から見て、携帯電話などモバイル対応については、早めのタイミングで実現したいと考えています。

桧谷氏:

CUは「ビジネスの一人の人格をプロットする」ためのサービスだと考えています。現在、本人公認の実名のプロフィールを公開することで、ネット上の信頼あるつながりを作ってもらいたいです。そして、その信頼を元に、たとえば、つながっている人の先に、自分自身は交流はなくともコミュニケーションを取りたい人がいた場合など、知らない人に対しても積極的にメッセージを送ってつながっていってもらえればと思います。

――ありがとうございました(取材日2008年11月10日⁠⁠。

以上、CU担当者のお二人に、CU開発の経緯や今後の展望についてお話を伺いました。現在、日本のSNSというとmixiが最大ユーザを獲得しています。一方で、CUのように新しい切り口で、従来のSNSとは違った使い方を目指すことで、新しいコミュニケーションが生まれていくのではないでしょうか。

とくに、日本のような名刺社会においては、ビジネスにおける名刺情報の管理とアップデートが求められます。CUはそういった用途に最適なサービスと言えるでしょう。また、メッセージ機能やコミュニティ機能を併用することで、新しいビジネス展開につなげることができるはずです。

なお、CUは完全招待制となっています。参加を希望する方は、知り合いからの招待メッセージを待ってみるか、知り合いにCUユーザいる場合は、その方に招待していただいてください。

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