2008年11月25日、渋谷センター街にあるBarTubeにて、今注目のガジェット――ポメラにフォーカスしたイベント「ポメラNight!」が開催されました。本レポートでは、その模様を速報でお届けします。
pomeraで変わるライフスタイル
11月10日の発売から約2週間。「テキスト入力のみ」というコンセプトの潔さでユーザの心をつかんだのが、キングジムのデジタルメモ「ポメラ(pomera)」です。ニュースサイトではさまざまな特集が組まれ、個人ブログでも次々とエントリがアップされる毎日。単一機能の商品としては考えられないほどの盛り上がりを見せています。創作が趣味の人々から小説家やライターなどのプロまで、執筆を日常とする層からじわじわと広まりつつある状況。mixiではポメラユーザのための「ポケットメモライター☆ポメラ」コミュニティが立ち上げられ、機能改善の要望はもちろん自作のポメラ用ゲームやツールがアップされるなど、ラボさながらの様相を見せています。
そんな中、このコミュニティに参加しているKandaNewsNetworkのビデオジャーナリスト・神田敏晶氏が「ポメラNight!」なるイベントを開催するとの情報をキャッチ、お邪魔することにしました。テーマは「pomeraで変わるライフスタイル」。キングジム開発本部 電子文具開発部長 亀田豊信氏、開発課リーダー 立石幸士氏、広報部リーダー 田辺賢一氏をゲストに迎え、生みの親の皆さんから直接お話を伺いつつ、ユーザ同士の交流を図ろうというものです。会場でチェックしたところ、なんと参加者は全員がポメラの所有者。ブログをやっている方も多いようで、セッション中もポメラでメモる(記録する)人の姿が目立っていました。
ポメラの力を再確認する
セッションの内容は、
の3項目。
1つ目の「ポメラとは?」では、そのあまりにも独特な商品特性と魅力を改めて考えようという内容です。ピックアップポイントは下記の5点。
- デジタルメモ
- キングジムが出したデジタル文房具
- モノクロ、ネット接続なし
- 単4電池2本で長時間使用
- 2万7,000円という高価なメモ
「デジカメを始め機能に特化した商品は必ずあったので、企画の段階でデジタルメモという1つのカテゴリを作れると思った」というカテゴリ認識、「ポリシーは他社の物真似をしないで、生活に役立つ新しいを作ることです。ポメラはその使命から生まれた商品」という誕生のきっかけなど、回答から物づくりへの心意気が伝わってきます。
さらにポメラの大きな特徴であるフルサイズキーボードは、何個もモックを作り実際に使って選んだデザイン。立石氏曰く、「持ち歩き時のB6サイズと17ミリピッチのフルサイズキーボードは絶対は譲れなかった」そうです。またモノクロ&ネット接続ナシの英断には「小さくて持ち運びしやすい点を優先していましたし、メモにカラーは必要ないので始めからモノクロで考えていました。うちがやらなければどこがやる、位の気持ちでしたね」と力強く主張。電源を持ち歩く面倒をなくすための乾電池採用、社内でも賛否両論だったという価格面なども含め、現行機に辿り着くまでの過程や意図がざっくばらんに語られました。
ポメラとユーザ
次のテーマは、ポメラとユーザの関わりについてです。実はユーザの間で密かに話題になっているのがユーザの総称。ポメラー、ポメラニアン、ポメリストなどが並ぶ中、田辺氏は「商品発表の夜に2ちゃんねるをチェックしたら、もうポメラニアンという名前が生まれていたんです。なんて商品にぴったりな名前をつけてくれるんだろう、と驚きつつとても嬉しかったですね」とポメラニアン押し。イベントでも「ポメラニアン」と呼ぶ人が多く、意外とこのまま定着するかも? しばらくはユーザ内での話題になりそうです。
神田氏が熱い思いを込めて語った「禅の世界へ通じるポメラ」「自己との対峙」という項目をきっかけに、話題はライフスタイルとポメラの関係へ。「万年筆のようにステイタス感のあるものを目指した」という立石氏、「今は何でもできる誰にでも合う小型車ばかりで2シーター車が見つからないですよね。それと同じで、何でも乗せてコンセプトが曖昧になるよりはエッジを利かせた物を作りたかったんです。だからWebのように外部につなげる機能は、思い切って捨てた方が市場では目立つと思って」と文具メーカらしいこだわりを教えてくれました。
またポメラは、亀田氏が10年前に提案した内容を立石氏がブラッシュアップしたことで完成した共同アイデア。亀田氏の「今回売れた背景には、セキュリティの関係でノートパソコンの持ち出しが厳しくなったことやウルトラモバイルが安いけど使い道が少ない、という社会評価の間にうまくはまった」という分析には、多くの参加者が深く頷いていました。「シェルキー(二枚貝+キーボード)」「キーパ」「メモディア」など100以上から選ばれたことなど、名前にまつわる苦労もとても興味深いお話でした。
ポメラの今後
開発上の苦労などをたっぷりお聞きしたものの、改善の余地がある点は伝えておきたいと思うのがポメラニアンの親心。8,000字の入力上限や入力規則、ソフトウェアアップデート、周辺機器に関する機能提案や改善要望など、短時間ながら多くの要望があげられました。それらの意見に丁寧に回答いただいた他、立石氏は「ポメラを作るにあたり、Windowsのメモ帳やパナソニックのLet's NOTEなどをお手本にしてきました。しかし今後はユーザとともに変わっていくでしょうから、ポメラ独自の進化ができればと思います」と今後の展望を語ってくれました。
ポメラコミュ管理人・カワイ氏によるポメラの素敵さを語るプレゼンを始め、開発途中のモックや赤・ブルー・ショッキングピンクなど現行品にはない天板素材、参加者のポメラコレクションが見られたのもこうしたユーザイベントならでは。主催の神田氏も、「ラボの中でこっそりやるより、こんな風にみんなでワイワイと言い会える場っていいよね」とイベントの手応えを感じられていたご様子でした。
皆さんの言葉を聞いていると、これは何かおもしろい物や新たなライフスタイルが生まれてくるんじゃないか、とワクワクさせられます。華々しく生まれたITガジェットとは少し違う、別の世界の可能性を秘めたガジェット。質実剛健な日本企業が作るポメラは、そんな未知数の存在なのだと再確認した2時間でした。