Googleテクノロジーカンファレンス「Google I/O」レポート

サンフランシスコで27日、28日と2日間にわたって開催された、GoogleテクノロジーカンファレンスGoogle I/Oが大盛況のうちに幕を閉じました。本稿では、そのGoogle I/Oに関して私の印象に残ったトピックについてお届けします。

なお、おそらく皆さんご存知のとおりGoogle I/Oで非常に大きな発表が一つあり、今回の記事も半分ほどはそちらについての話になります。また今回触れなかった話題についても非常に役に立つ話題が多くあります。Gooogle I/Oのセッションは後日すべて動画で公開されますので、一通り確認してみることをお勧めします。

参加登録
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Google Wave

今回のGoogle I/Oの目玉はなんと言ってもGoogle Waveでした。初日のセッションで何かほのめかしたスピーカーがいたようで、2日目のキーノートで何か大きな発表があるという噂は一部参加者の間で流れていて、キーノート入場待ちの列でもちらほらと「今日の発表はなんについてのものだと思う?」という話が聞こえてきていました。ただこの時点ではそういった耳聡い人たちの注目も「Googleのどの既存サービスに関する発表だろう」という点だったと思います。

Google Waveスクリーンショット
Google Waveスクリーンショット

Googleはその期待をいい意味で裏切ってくれました。発表されたGoogle Waveは既存サービスの機能追加などではなく、半世紀ものあいだコンピュータを介したやり取りの主流であるEmailを置き換えるという野望のもとに、Googleのエンジニアたちが「コンピュータを使ったコミュニケーションはどうあるべきか」をゼロベースで考えた、まったく新しいサービスです。

スピーカーたちによるとGoogle Waveは製品(Product)でありプラットフォーム(Platform)でありプロトコル(Protocol)でもあるという3つの側面を持ちます。つまり、そのままでサービスとして利用でき、その上にユーザー独自のサービスを構築でき、またその環境自体をGoogleから離れた独自サービスとして展開することもできる、というところでしょうか。考えてみればこの3つの特徴はEmailにも完全に当てはまります。つまり「Emailを置き換える」というGoogleの言葉は修辞的なものではなく、本気でそう考えているのだろうと私は感じました。

Google Wave開発者陣
Google Wave開発者陣

Google Waveはチャットのようなリアルタイム性を持ちつつも、ツリー型BBSのように遅れてやりとりに参加した人ともコンテキストを共有することができ、メールのようにまとまった文章をやり取りしつつ、Wikiのように同一文書を複数人で編集し、その変更履歴をたどることもできます。たしかに一つ一つの機能が飛びぬけて新しいわけではありませんが、既存のサービスの長短をよく把握してそれらの機能を破綻なく一つのサービスにまとめるのは並大抵のことではありません。Googleサービスの統合と進化を同時に見せてくれたGoogle Wave。今後も大いに注目すべきサービスです。

Android

順番が前後しますが一日目のキーノートの一番の目玉はこのAndroidでした。キーノートの最後にAndroid Developer Challenge 2の開催と、AndroidのDeveloper Phoneと30日間の無料データ通信つきSimカードの参加者全員へのプレゼントがThree More Thingsとして発表された瞬間、事実を反芻するため少し静まり、そして割れるような拍手。本当にサプライズでした。配布は午後からでしたが、それ以降は開催期間中を通じてAndroidを真剣に触っている参加者がそこかしこに見られました。

Three More Things...
Three More Things...

ADC2は8月の半ばが締め切りになっています。そのころには日本でもAndroid携帯が発売済みのはずですし、今から総額$250,000を狙ってみるのも面白いのではないでしょうか。

Google App Engine JVM

これまでプライベートβとしてアカウント数に制限のあったApp Engine for Javaがついに一般公開されました。これまで日本国内ではマイナーなPythonしか使えなかったせいでApp Engineの利用をためらっていた方はこれを機会にぜひ試していただきたいと思います。

以降、少し偏った話になりますが、多くの人が指摘しているようにApp Engine for Javaという名称には少し問題があります。実際はJavaに限らずともJVM上で動く言語であれば全て実行可能ですので、App Engine for Javaではなく、App Engine for JVMと呼ぶのがより正確です。この「App Engine上でJava以外の言語を動かす」というのは本当にホットな話題で、今回のGoogle I/OではApp Engineに関係するセッション12枠のうちの2つのセッションでJRubyを初めとするJVM上で動作する言語をApp Engineで使用することがテーマとなっていました。

JRuby on GAE/Jをいち早くブログで紹介したOla Bini氏
JRuby on GAE/Jをいち早くブログで紹介したOla Bini

またエンタープライズ枠でApp Engine for Javaについて講演したThoughtWorksのマーチンファウラー氏もApp Engine上でJRubyを動かすことに興味があると話をしており、このJVM上で他言語を動かすという課題はプログラマの技術的興味だけではなく、エンタープライズの立場からも検討に値するものであることがわかります。

ThoughtWorksのMartin Fowler氏
ThoughtWorksのMartin Fowler氏

Pythonはマイナーすぎて覚える意欲がわかないけれど、Javaは冗長すぎてApp Engineを使う気力がわかないという人がもしいれば、JVMを利用した他言語を試してみれば、単に技術的好奇心が満たされる以上のものが手に入るかもしれません。

まとめ

今年もGoolge I/Oは非常に充実していました。特に、将来もしかするとWebが生まれ変わった瞬間だったと言われるかもしれないGoogle Waveの発表の場に居合わせることができたのは非常な幸運でした。

次は6月9日に横浜でGoogle Developer Day(GDD)が開催されます。Google Waveはまだ始まったばかりで日々バグ修正や機能追加など成長を続けています。10日後のGDDではさらに進んだGoogle Waveを皆さんと一緒に目にできることを期待しています。

Developer Sandbox
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疲れたらゲームも出来ます
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その場でYouTubeにアップロード
その場でYouTubeにアップロード
Google自転車も走っていました
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パーティ
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