5月30日に、第4回目を迎えたサンフランシスコでの「元祖 WordCamp」 、WordCamp San Francisco が開催されました。登録者数は過去最高の700名を超え、数々の豪華なスピーカーが登場しましたが、Tシャツやグッズ、そして朝食・昼食、アフターパーティまで付いて入場料は25ドルと相変わらず。様々なバックグラウンドを持った参加者がそれぞれ楽しめる、オープンでWordPressらしさが表れたイベントでした。
計15のプレゼンは、基調講演をのぞき、2つのホールで同時に進行しました。本稿では、筆者が出席したセッションのうち主なものをレポートさせていただきます。
写真1 世界最大のWordPressイベントとあって、カリフォルニア州外にとどまらず30ヶ国以上からの参加者が訪れた
拡張可能なブログの運営方法(ティモシー・フェリス氏)
ニューヨークタイムス、ビジネスウィークなどでベストセラーランキング1位を獲得した「The 4-hour Work Week (邦訳:なぜ、週4時間働くだけでお金持ちになれるのか)」の著者であり、ライフハッカー界で有名なフェリス氏(The Blog of Tim Ferriss )は、同時に人気ブロガーでもあります。
自分のメインブログを例にとって、ブログを効率的、効果的に運営するコツをたっぷり披露してくれました。彼がブログをやっているのは「お金のためとか有名になるためというよりは、ブログを通してしか得られない交流が何ものにも代え難いから」とのこと。
例えばUSオリンピックのスイミングチームのコーチなど、普段は直接話す機会がないような意外な人からコメントやトラックバックで反応があったり、自分では思いつかなかった新しいアイディアのインスピレーションをもらったりすることの面白さを語っていました。
よりブログの記事を多くの人に読んでもらうためには、かなり綿密に解析と対策を行っているということです。ホームページに何らかのデザイン変更を加えたときはヒートマップとアクセス解析を使って必ず反応をテストする、何曜日の何時頃にどういうタイプの記事を公開すればクオリティの高いコメントやトラックバックが集まりやすいかを実験してみる(長めのしっかりした記事は金曜の夜が一番良いなど) 、実験場的なブログも持って動画などメインブログではやっていないことを試してみる、などといった具体的な例を挙げていました。
こうすればブログはうまくいく、といういろんなルールがあちこちで語られていますが、彼らはまずそれらにすべて従って効果を計ってみたそうです。また、そのまったく逆の間違っていると言われていることをやって、再び実際の反応を見るそうです。誰かが言っていることをそのまま鵜呑みにしてもそれが自分のブログにとって一番のやりかたなのかは分からないので、自分にとってのルールはそうやって作っていく、ということを力強く話していました。
実践による試行錯誤を繰り返し、データを集めて分析し、その結果を見て対策を行っていくというプロセスは、徹底的にやってみれば大きな手応えを得られることが理解できる内容でした。これはブログだけではなくウェブサイト運営全般に活用できる姿勢ですが、テーマテンプレートにちょっとした変更を加えてテストするのが簡単なWordPressには特に取り入れやすい手法といえるでしょう。
写真2 さまざまなテクニックを披露した最後には、「 楽しんでブログをするのがとにかく大事!」というメッセージを送ったティモシー・フェリス氏
Googleがあなたに知っておいて欲しいこと(マット・カッツ氏)
Googleのスパム対策部に所属しているにも関わらず、同社のサービスblogger.comブログではなくてインストール型WordPressを自分のブログとして使っているマット・カッツ氏(Matt Cutts: Gadgets, Google, and SEO ) 。WordPressサイトの検索エンジン最適化(SEO)についてのプレゼンでした。
彼が現在入れているプラグインは5個だけ。WordPressは自動的にSEO的に問題のある点を解消してくれるようにできているので、コアインストールの持つ機能だけで検索エンジン向けに最適化されたページを生成させることができるとのこと。機械的に可能なSEOの8~9割はWordPressが行ってくれるというのはユーザーにとってうれしい情報だったと思います。
一方、バックリンクの数を気にしすぎたり、技術的な面を研究してページランクを高めることに時間を割きすぎるよりは、上質のコンテンツを増やすことに時間をかけるべきだと話していました。
そのためには、自分の書きたいと思うトピックを選んでブログ全体が関連性の高い内容にする、ページランクが高いサイトからリンクしてもらえるように評判を高める、練習になるよう頻繁に書くなどといった基本的なことが大事とのことですが、専門家である彼が実際にそれをやって良い結果につながっているとのことで、非常に説得力がありました。
また、Googleキーワード、Googleウェブマスターツールなどの紹介もあり、「 やりすぎる必要はないけど、便利なツールを使ってリンク切れなどのサイトの問題点を発見したり、人気の記事を発見して続編を書いたりするのもおすすめ」とのことでした。
「塊魂の哲学」とキャプションがついた画像をスクリーンに表示し、「 最初は小さなブログであっても、少しずつニッチなコンテンツを拾い集めて成長していくようなやりかたがいいよ」と、サイトを徐々に成長させていくことの大切さを分かりやすく説明してくれました。
細かいSEOテクニックをたくさん披露するかわりに、自分のサイトをより多くの人に見つけてもらうため、長期的に検索エンジンとつきあっていくための心構えが凝縮された内容でした。最新の技術が取り入れられているWordPressのようなツールを活用する利点は、そういったテクニックの多くを心配しなくていいというところにもあることが伝わってきました。
写真3 Googleページランクの仕組みを説明するマット・カッツ氏
WordPressの現況(マット・マレンウェッグ氏)
「WordPressの現況(State of the Word) 」は、WordCampで毎年行われる恒例のプレゼンです。講演するのはWordPress.orgの創始者であり、WordPress.comを運営するAutomattic社を立ち上げたマレンウェッグ氏(ma.tt ) 。過去一年を振り返る統計情報と、これからの一年に対するビジョンがたくさん詰まった内容で、WordPress の成長や今後の方向などを知ることができました。
今年誕生から6周年を迎えたWordPressプロジェクトは順調に成長しており、ダウンロード数・投稿数などすべてが昨年を大きく上回る数字になっています。昨年のダウンロード数は各バージョン合計して1千万回以上、現在世界中にあるインストール型のWordPressブログは約500万サイト、そしてWordPress.comのレンタルブログは約340万サイトという発表がありました。
特に英語以外の言語圏での成長は目覚ましく、昨年は全体の27%だったローカライズ版パッケージの合計ダウンロード比は、この一年で42%を占めるようになったそうです。これを受け、使い方のスクリーンキャストなどの動画を集めたWordPress.tvにはdotSUBという字幕翻訳サービスを統合し、英語以外の情報リソース提供にも前向きに善処していきたい、と述べていました。
写真4 統計情報をたっぷり使ってプレゼンを行うマット・マレンウェッグ氏。圧倒されるほどの桁数からWordPressの展開スケールの大きさが感じられる
この先一年の課題のひとつとして、GPL準拠のテーマの配布をさらに促進する活動を行っていくことを挙げていました。プロプライエタリーライセンスのテーマやプラグインは、WordPressのライセンスに反しているだけではなく、自由でオープンな派生物の創作や開発を妨げてしまうのが問題です。Thematicテーマ を例に挙げ、GPLライセンスでソースコードを配布してコミュニティに貢献しつつ、サポート提供などのビジネスを両立させることも可能だと紹介していました。
さらにマレンウェッグ氏はこの場で、WordPressおよびWordPress MU(マルチユーザー)のコードベースをマージするという大きなニュースを発表しました。これは 一つのインストールで複数ブログが可能になることや、MU限定のプラグインセットであるBuddyPressがより簡単に利用できるようになることなどを意味しており、詳しい時期については言及されませんでしたが、これから非常に楽しみな動きといえます。
その他、WordPress関連の開発やサポートを行うビジネスモデルを成功させているCrowd Favorite社のアレックス・キング氏の紹介、リリース間近のバージョン2.8の説明、コミュニティによるWordPressプロジェクトへの貢献を促進する取り組み、既存のiPhoneアプリに加えたBlackBerryアプリなどでモバイル方面への対応を強化していくことなど、駆け足ながら多岐にわたった話題が語られた講演でした。
写真5 コロラド州でWordPressに限定した業務のみの会社を運営するCrowd Favorite社のアレックス・キング氏。同社はGPLライセンスのプラグインやテーマも多数配付している
Whuffieの作り方(タラ・ハント氏)
Whuffie(ウッフィー)とは、有名ブログBoing Boingのコリー・ドクトロー氏による造語。彼のSF小説によると、Whuffieは周りからの評判が高まることに量が増えるという新しい概念の「通貨」のこと。小説では、生活に必要な物品や贅沢品の多くが誰にでも無料で手に入るようになった未来に、貨幣の代わりにWhuffieを目に見える形で交換したりといった世界が描かれています。ハント氏(::HorsePigCow:: )はこの概念をさらに掘り下げ、オンラインなどのコミュニティでこのWhuffieという考え方をどう活かして成功するかを書いた「The Whuffie Factor」という書籍を出版しています。
ハント氏は、Whuffieを増やすことに集中すれば、オンラインでより多くの人へ自分の声を届けることができるようになる、と語りました。例えば同様の手法で顧客満足度の向上に成功した Dell 社は、Direct2Dellというブログをベースにこれを実践しています。
もともとDell HellというアンチDellサイトなどでの批判によってブランドへの評価が下がっていた同社は、ブログなどをはじめとしたツールを使ってネット上での声にすばやく誠実に対応することにより、見事にWhuffieを作り出して評判を取り戻していきました。
こういった例をたくさん挙げながら、Whuffieを作り出すためのコツをまとめて紹介しました。
1. お客さんに大声でどなりつけて振り向かせるような宣伝やアピールはやめる
マスではなく個人にフォーカスし、一人一人の違いを尊重したコミュニケーションをする。
2. コミュニティの一部となり、信頼を得る
そのためには何か注目に値する価値があなた自身(または商品、サービス)に必要。
3. 相手に「すごい!」という感情を持ってもらえるようにする
シームレスなユーザーエクスペリエンスで感動してもらったり、役には立たなくてもちょっとした楽しい機能などによってクチコミを促進したりする。
4. 無秩序さを受け入れる
制御しようとせず、バランスのとれたオープンさと透明性を、ちょうどいいさじ加減で見極める。
5. 自分にとって価値ある目的を発見する
自分がコミュニティに対してお返しできるような、たくさん与えても減らないようなものを見つけ、どんどん共有していく。例えばブログの記事を書くことでも良い。
いわゆるマーケティング担当の人が上記のようなルールに従った広告展開などをしているわけではないWordPressのようなプロジェクトでも、照らし合わせてみると自然に同じ方向性のアプローチを取っている点が多く、興味深い内容でした。個人ブロガーから大企業まで、それぞれの環境に応じて活用できるヒントがたくさんあったと思います。
写真6 Flickr が行った「海賊の日 」にちなんだサイト上でのイベントを紹介するハント氏。役に立つかどうかは別として、訪問者が楽しんでくれて友達に話したくなるような遊び心も大切と語った
コミュニティ(クリス・ピリロ氏)
英語圏では有名なブログネットワーク、LockerGnome(ロッカーノーム)サイトや、テクノロジーカンファレンスGnomedex(ノームデックス)イベントの運営者であるピリロ氏(LockerGnome.com ) 。 これらを通していわゆる「ギーク」達のコミュニティに深く関わってきた彼ならではのユーモアあふれるエピソードやジョークを交えながら、"いったい「コミュニティ」とは何なのか?""コミュニティの最適な姿とは?"といった考えを披露してくれました。
ピリロ氏は、「 コミュニティとは、ある特定のツールのことだと思うのは間違っている」と述べ、例えばブログやフォーラム、コミュニティ機能を持ったサイトなどを立ち上げることを優先するのではなく、参加している人たちがつながる手助けをしていくことを強調しました。
参加者たちはコミュニティの取り扱うトピックに興味を持っているというのも事実ですが、それはどちらかというと二次的な参加理由のはずで、他の人たちとの交流を通して、その人にとってのコミュニティの価値が上がるはずです。
まったく同じ人間はどこにもいないし、人々はそれぞれ多面的な興味やライフスタイルを持っています。そんな人たちを大事にし、彼らの求めているものを知ることが、その交流の場としてのコミュニティを良いものにしていく鍵だという考えが繰り返し述べられていました。
コミュニティを運営し、成熟させるには一朝一夕というわけにはいきません。しかし、ネット上で世界的に有名なコミュニティを運営するピリロ氏から伝わってくる「ツールや形態にこだわるよりも、参加者を本当の意味で理解することによって正しい答えが見えてくる」というメッセージが印象的でした。
写真7 コミュニティを成功させるには、仕組みやツールよりも参加者を大事にし、彼らの交流を促進することを第一に考えるのが大切と語ったクリス・ピリロ氏
WordPress ショーケース(ダグラス・ハンナ氏)
英語版のWordPress.org の1セクションとして存在するWordPress ショーケースサイトを運営している Automattic 社のハンナ氏(Service Untitled )によって、このサイトのしくみ、掲載するサイトの承認プロセス、そして現在掲載中のサイトの特徴の紹介などが行われました。
ショーケースサイトはWordPress.orgとはまた別個のインストールとなるWordPressからできています。記事評価プラグインを入れ、カスタムタクソノミー機能を使って「フレーバー(サイトのタイプ) 」分類をしているそうです。
掲載するサイトは、推薦として投稿されるうちのたったの5%。現在は約390のサイトが掲載されています。その選考条件は、次の4つ。
他では見られない使い方でWordPressを活用している
アクセスがずば抜けて多い人気サイトである
著名人や、専門分野で有名な人が寄稿している
特筆すべき企業や団体、または政府などのサイトである
これらのいずれか、または複数を満たしていることが必要になります。
イギリスの首相官邸やEye-Fiの公式サイト、マーサ・スチュワートやヴァージングループ社長、eBayチームのブログといった例を挙げ、それぞれをなぜショーケースに含めることにしたのかを説明していました。
かなり手の込んだカスタマイズをしている例も多く、「 推薦サイトを見たとき、本当にWordPressを使ってできているというのが信じられないこともある」と語っていました。
たくさんの具体例を挙げることで、WordPressという共通のベースを使いつつ、目的に合わせて幅広い種類のサイトが作れることを改めて理解できたプレゼンテーションだったと思います。また、世界有数のトラフィックを誇るブログを支えているWordPressの底力を実感した参加者も多かったのではないでしょうか。
写真8 WordPress ショーケースへの推薦をレビューしているダグラス・ハンナ氏。数多くのサイトを見てきた経験に基づき、興味深いWordPressの使い方を紹介した
Mozillaから学んだこと(ジョン・リリー氏)
リリー氏は、Firefox ブラウザや Thunderbird メールクライアントで知られているMozilla コーポレーションのCEO。WordPressの哲学と同様に、フリーでオープンなソフトウェアの普及に成功しているモデルであるMozillaのトップによる講演には、参加者も興味津々だったようです。
Mozillaのミッションは、「 ネット上で、選択肢とイノベーションを促進すること」 。例えばブラウザが一つしかなければ、より革新的な技術は生まれにくくなってしまうでしょう。彼らはただソフトを提供するだけではなく、利用者にとってさらに便利で良い技術が生まれる可能性のある環境を作ることも重要視しています。
Mozillaでは、20ヶ国に散らばる200人以上の従業員のほか、4割はコミュニティからの貢献により開発が進んでいるそうです。そんな彼らの組織運営スタイルは、「 Chaord」という考え方に基づいているとのこと。無秩序性/カオス(Chaos)と秩序(Order)の2つの言葉を組み合わせたこのコンセプトでは、ある面ではしっかりと秩序を保ちつつ、他の面ではルールを無視したカオス的な状態を受け入れることになります。
具体的には、核となるプロジェクトに対する価値観(ビジョン)を全員がしっかりと理解していることが大事、とリリー氏は主張します。一方、細かい決定事項などは各パーツを開発するグループの判断に委ね、それぞれのグループの作業の仕方を尊重しています。決断権を持つ人の数を限定するのではなく、濃密なコミュニケーションを通じて良い判断をしていけるような工夫が大事だとのこと。
チーム間のコミュニケーションツールとしては、Wikiやブログ、バグトラッキングシステム(Bugzilla) 、IRC チャンネル、ニュースグループなどに加え、ビデオや音声通話、チャットなども積極的に取り入れており、一つの方法を確立することにこだわらず、複数の交流チャンネルを場面に合わせて活用していく自由さが、「 選択肢とイノベーションを促進する」という彼らの哲学そのものだと感じられました。
コミュニケーションをはじめとして、チーム自体やプロジェクトを運営していく最適の手段にたどりつくには、色々な方法を試してみて、それに対する反応や結果のデータを集めたあと、「 自分たちにとって大事な核となる価値観は何なのか?」という質問に照らし合わせて最終的な決断をしていくという形をとっているそうです。
また、モバイル Web についても触れ、まだはっきりと形作られていないモバイルの将来は、まさに現在私たちによって定義されていっているのだと述べました。モバイル Web の未来が自由でイノベーションあふれるものになるのと、特定のメーカーやサービス提供業者によってがんじがらめになったものになるのと、どちらが良いかよく考えてみてほしいと呼びかけていました。
オープンソースプロジェクトやソフトウェア開発だけに限らず、チームとして何かをする際それを成功させるためのヒントがたくさん詰まったプレゼンテーションだったと思います。例えばイベント運営や会社経営などに関わっている人にもとても勉強になった内容だったはずです。
写真9 Mozillaでの経験から蓄積したプロジェクト運営のコツを語るジョン・リリー氏。オンラインでのコラボレーションはまだまだ大きな可能性を秘めていることを感じさせられた
マット・マレンウェッグ氏へのQ&A
本イベント中に、マット・マレンウェッグ氏にインタビューすることができました。
Q:WordPressは今後もっと、いわゆるCMS的な方向に進んでいくのでしょうか?
A:WordPressに合うのはフレームワーク、パブリッシングプラットフォームという表現だと思います。何かを書いて公開するというゴールを達成するために、より良いソフトにしていきたいんです。でも今後どうなるのかは僕の考えをもとに決断するというよりは、実際にWordPressがどんなふうに使われているかという例やトレンドを追いながら、その流れにそった方向性を選んでいきたいと思っています。
Q:WordPress のエンタープライズ版の可能性についてはどう思いますか?
A:世界一大規模なWordPressの運営例であるWordPress.comも、誰もが手に入れることができるWordPress(MU)を使っています。例えばデータベースのクラスタリングなど、必要なノウハウがあれば他の人にもこういったサイトを運営することは可能ですので、わざわざソフトウェアとして違うパッケージのものを配布する必要性は感じていません。この拡張性を活かしたサイトも、だんだん現れてきています。
Q:GPL テーマやプラグインの有料配布、付加サービスの有料提供についてはどう思いますか?
A:WordPress.org 上で、ファイルやサービスの売買を助けるためのマーケットプレース的な場所を提供する予定はありませんが、ソースコードがGPLライセンスに基づいて公開されている限り、プラグインなどに付随したビジネスを行うことについては歓迎しています。
Q:日本の WordPress ユーザーへのメッセージはありますか?
A:WordPressはユーザーからのフィードバックや貢献をもとに成長していきます。ぜひどんどん参加していってほしいです。また今後、GlotPress という新しいプロジェクトを含めた、プラグインやテーマを翻訳しやすくする仕組みの確立にも取り組んでいますので、期待してほしいと思います。
まとめ
イベント中、ロビーには、アップルストアのやり方を真似た「ジーニアスバー」が設置され、WordPressの質問に無料で直接答えてもらうこともできるようになっていました。また、同日夜には、WordPressの6周年アニバーサリー記念も兼ねたパーティが開かれました。
さらに次の日には「デベロッパーズデイ」として、参加者が自由に発表者としてサインアップできるセッションが行われました。より小規模でリラックスした雰囲気ではありましたが、非常に興味深い内容が目白押しで、本編のイベントに勝るとも劣らない満足度の高い一日となりました。
写真10 デベロッパーズデイにて質疑応答の司会を務める WordPress.com サーバー管理者のバリー・エイブラムソン氏。Twitterライクな P2テーマのサイトに書き込んでもらうことによりリアルタイムで質問を受け付け、返信コメントとして回答を記入していた
コア開発者がWordPressの仕組みに対する質問に答えたり、今後のバージョンで拡張予定の機能についてのブレインストーミングを行ったりといったWordPressに深く関わる内容の他にも、Google担当者によるGoogle Waveとの連携アイディアの紹介や、音声認識のJavaScriptライブラリを使ったサイト Quizlet のデモなど、幅広いトピックが扱われていました。新しいアイディアや技術を取り入れることに前向きなWordPressの面白さは、こういった好奇心が高い開発者たちが支えているのだと実感することができたと思います。
ブログツールという枠に留まらず、拡張性の高いフレームワークとして成長を遂げようとしているWordPress。多くのファンと貢献者に支えられてここまできたことを常に忘れず、それらの人々に喜んでもらいたいという気持ちが感じられた、楽しいイベントでした。
※写真の一部はKenneth Yeung氏 撮影によるものです。