このカンファレンスは伝説になる-「勉強会カンファレンス2009」開催

6月6日(土⁠⁠、東京の日本オラクル本社にて、最近各地で大きな盛り上がりを見せているさまざまな勉強会の主催者によるコミュニティ「勉強会勉強会」のカンファレンス「勉強会カンファレンス2009」が開催されました。この模様をお届けします。

AM:目覚まし勉強会

勉強会カンファレンスの開催に先立ち、午前中は参加自由の「目覚まし勉強会」が開催されました。勉強会を盛り上げていく技術や、開催、運営、進行に役立つツールの紹介などを中心に、一人10分~20分のLT(ライトニングトーク)形式で、5つのミニセッションが行われました。

午前、午後の部とも「前説」を担当されたお二人。場の盛り上げはお任せ。
午前、午後の部とも「前説」を担当されたお二人。場の盛り上げはお任せ。

PHP懇親会の居酒屋プレゼン

「勉強会カンファレンス」の参加ページの管理もされていた鈴木達文(みちやす:lind)さんによるPHP懇親会についての紹介。一見ただの飲み会のように聞こえますが、居酒屋にプロジェクターを持ち込んでプレゼンする本格的なものです。会場は居酒屋である必要はありませんが、飲食できるというのがポイント。それほど大規模に行うのは無理ですが、参加者全員が一人5分の持ち時間で必ずプレゼンを行います。これが懇親を深めるのに効果的で、初めての人でもプレゼンを行うことで参加した皆さんに自分を知ってもらえ、他の人のプレゼンを元に自分のネタを考えることで、その相手との距離感を近づける効果があるそうです。

PHPといっても、ソースコードが1行も出てこないプレゼンもあるとか。何かを表現するフックとなるのがPHPというわけです。
PHPといっても、ソースコードが1行も出てこないプレゼンもあるとか。何かを表現するフックとなるのがPHPというわけです。

あなたのメッセージで世界をつなぐTimer

igaiga(五十嵐邦明)さんによる、カウントダウンタイマー+IRCメッセージツールTwYM(Timer with Your Msessages)の紹介。igaigaさんは高専カンファレンスのスタッフとしての経験から、Ustream中継のチャットが会場にいる参加者やスピーカとコラボできないかと考え、TwYMを作りました。MacOS XのQuartzComposer上で動きます。

高専カンファレンスもよろしく
高専カンファレンスもよろしく

今ではさまざまな勉強会などのイベントで使われているそうで、Ustreamやニコニコ大放送は、空間の制限を外しました。YouTubeやニコニコ動画は時間の制限を外したと言えます。そして、TwYMは時間と想いを共有するものだそうです。

今回のLTでも使われたTwYM
今回のLTでも使われたTwYM

まっちゃだいふくメソッド

セキュリティ関係の勉強会を主催するまっちゃだいふくさんによるプレゼン。⁠まっちゃだいふくメソッド」とは、まっちゃさん主催の勉強会に付きものといえる「お菓子」を出すことによる効果についての発表です。休憩時に甘いお菓子を出すのですが、案外男性の食いつきが良いそうで、これをきっかけに会話が弾むのだそうです。

参加した人がブログに「美味しい勉強会」と書いてもらえるのも励みになるとのこと。
参加した人がブログに「美味しい勉強会」と書いてもらえるのも励みになるとのこと。

勉強会で使える笑いのテクニック

「お笑い勉強会」を主催する芸人社長さんのLTです。IT系の勉強会ではあまり聞くことのできない「受ける、笑いをとる」ためのノウハウが披露されました。キーワードは⁠Fail Safe⁠⁠。場が引いたときにどうするか、話に詰まったときにどうするか、に備えて先に手を考えておくのです。具体的にはその発表者の話をしたり、見えているものに即突っ込む、来場者アンケートを開く、今の心境をそのまま話すというテクニックが使えるそうです。そのほか、笑いの場を作るため、ある人にだけ向けて話をするなど、参考になるワザがいろいろ披露されました。

今回の勉強会の進行役としても、テクニックは遺憾なく発揮されました。
今回の勉強会の進行役としても、テクニックは遺憾なく発揮されました。

IT勉強会カレンダーと募集ツール

今や勉強会に参加しようと思う人の誰もが利用する「IT勉強会カレンダー」を運営するはなずきんさんのLT。現在の「勉強会ブーム」とも言える状況を作り出した立役者の一人といえます。カレンダーに掲載する勉強会情報はどうやって集めているのか、そして勉強会参加者を集めるのに便利なツールを紹介するプレゼンでした。

カレンダーを始めてみて、さまざまな勉強会があることがわかり、新たな発見の毎日が非常に楽しいとのこと。
カレンダーを始めてみて、さまざまな勉強会があることがわかり、新たな発見の毎日が非常に楽しいとのこと。

「IT勉強会カレンダー」はそもそも、参加者ではなく主催者が勉強会の日程がかぶらないよう情報共有できないかという動機で始まったそうです。更新は、現在はなずきんさん、まっちゃだいふくさんなど6名が「趣味」で行っています。今ではカレンダーから目的の勉強会を探すのが難しいほど大きくなり、LT後の質問コーナーではタグ等を使って分類することはできないか、といった意見が出されました。

休憩時には皆さんから持ち寄られた景品やお菓子が振る舞われました。
休憩時には皆さんから持ち寄られた景品やお菓子が振る舞われました。

勉強会カンファレンス

午後になり、いよいよ勉強会カンファレンスのメインセッションが始まりました。最初に、このカンファレンスの元となった「勉強会勉強会」を主催するIPAのよしおかひろたかさんによる挨拶と、このカンファレンスの主旨についての説明がありました。

勉強会は劇的に増えてきたが、主催者どうしの情報交換はそれほど進んでいない。勉強会の価値を高め、広めるための方法論について議論する場がほしい、そのための勉強会主催者のネットワークを作りたいとの思いで、勉強会カンファレンスは企画されたそうです。

熱く語るよしおかさん。⁠どうすれば荒れずに長く続く勉強会ができるのか、知識を共有したい」
休熱く語るよしおかさん。「どうすれば荒れずに長く続く勉強会ができるのか、知識を共有したい」

最後に「⁠⁠未来のいつか⁠今日のカンファレンスはきっと伝説として誰かに発見される。伝説のカンファレンスにしたい」という言葉で結びました。

セッション1:社内勉強会

セッション1は、さとうようぞうさんのモデレートによる社内勉強会についての発表です。社内勉強会を開くにあたっては、とかく上司などから結果を求められたり、参加者が限られるため内容やモチベーションの維持に苦労するケースが多く見られます。こうした障害を乗り越え、社内勉強会を成功させた4名の皆さんが、その成功の秘密を明かしました。

「人が集まらない勉強会」の果てにたどり着いた「新しい社内勉強会」

SIerにお勤めのpapandaさん。ご自身以外に社内に勉強会をやろうという空気が無なく「寒い」状態だったのを何とかしたいと「社内デブサミ」をいうアイデアを考えつきます。これはDevLOVEというイベントにまで発展します

papandaさんのセッション。DevLoveが社外にまで広がってしまったため、結局社内的には勉強会がなくなって「振り出しに戻った」とのこと(笑⁠⁠。
papandaさんのセッション。DevLoveが社外にまで広がってしまったため、結局社内的には勉強会がなくなって「振り出しに戻った」とのこと(笑)。

社内勉強会を行うメリットは、一緒に仕事をする可能性がある人と経験を共有したり、知恵を集めることで、良い仕事ができるし、良い仕事をしたいというモチベーションが生まれる点にあり、参加した誰かが勉強会を開くことで世界が広がっていく波及効果が期待できるとのこと。最初は周りの数人で来てくれる人に声をかけ、知り合いの話の中で広げていったそうです。また社内SNSがあり、これが有効に働いたとのこと。上司の抵抗については、直上の上司がダメならその上というふうに辿っていけば、どこかにわかってくれる上司がいるとのことです。

社内外のエンジニアを参加対象者とした勉強会

講師などに社外の人を呼ぶことで、社内勉強会を活性化させようという話です。スピーカのebackyさんが勉強会を企画した動機は、仕事の立場上有利になるのではないかと思ったからだそうです。最初は情熱で周りを説得して始めらることができますが、上司は情熱だけでは動いてくれません。リスクをリストアップして、わかりやすく見せることが重要だと説きます。

社外の人を呼ぶための方便として、社外からの参加者を全員「講師」という扱いにして切り抜けたそうです。
社外の人を呼ぶための方便として、社外からの参加者を全員「講師」という扱いにして切り抜けたそうです。

外部の人を呼ぶ際のリスクとしてよく指摘されるのが機密漏洩です。そして外部からの参加者は社内のメリットにならないという意見もあります。こうしたリスクを回避するための上司への説明は「時間がもったいない」などといって疎かにしがちですが、こうした努力を一度やっておくと、次に何かを企画する際にも上司は「こいつはリスク回避の方法を何かもっている」と期待してくれるようになるそうです。

社内勉強会開催の成果とTips

kwappaさんによるRuby on Railsについての社内勉強会を行った際の、社内アンケートなどを元にした効果測定報告です。毎週水曜日の「ノー残業デー」の夜に1時間程度で16回ほど行い、講師は社内持ち回りで、勉強会自体は上司の抵抗もなくスムーズに進んだとのこと。

wkappaさん。⁠勉強会に勉強だけをしにくる奴は素人」だそうです。
wkappaさん。「勉強会に勉強だけをしにくる奴は素人」だそうです。

参加者の内熱心なのは4割、6割は講師をお願いしたい人で、一度講師になると、勉強会へのリピータとなることが多いそうです。また参加者の意識としては、今すぐ役に立つからというより、将来役に立つことを期待してといった動機が多いとのこと。そして直接的な効果以外にも、勉強会に出席することで勉強の習慣がついた、とくに講師になるとそのための勉強をすることになるので、結果的にスキルアップに結びついたという予想外の成果もあったそうです。さらにコミュニケーションツールとしての側面も重要とのこと。勉強会で参加者の日頃見せない一面、意外な能力や時には弱点もわかり、仕事を進めるうえでもこれが非常に役立ったそうです。

Tech Meeting宣言

最後はメーカにお勤めの吉田 茂さんによる発表。昨年とある事情で休職した吉田さんは、その間さまざまな勉強会に参加し、復帰後、一年発起して社内勉強会を始めたとのこと。内容は「Linuxカーネル」をテキストとした読書会で、とりあえずはお一人で講師を務め、隔週で勉強会を開いているそうです。上司の許可はあっさり下り(しかも上司に好評)だそうですが、なかなか講師のなり手が集まらず苦労されているとのこと。とはいえ、⁠続けることに意義がある」という精神で続けておられるそうです。

お約束? のネタ。シルクハット姿も目を引きました。
お約束? のネタ。シルクハット姿も目を引きました。
最後にさとうさんとともに一同ご挨拶
最後にさとうさんとともに一同ご挨拶

セッション2:IT勉強会と行政

後半のセッションは、IT系の勉強会を行政機関と関係づけて発展させられないかというお話。スピーカーはWikiばななどでご活躍のshinoさんです。

いきなり「日本国憲法」⁠教育基本法」⁠社会教育法」といった法律で登場する教育の権利についてのお話。実はお役所は法律で動くので、これらを押さえるのが非常に重要なのです。勉強会開催にあたっての実際の窓口となるのは「生涯学習課」といった名前の機関で、自治体によっては施設や機関の一覧表がもらえるところもあるとのこと。とはいえ、実情は「パソコン講習会」レベルのものがほとんどで、まだ今回のテーマとなるような勉強会はほとんど実績がないそうです。

一方「地域コミュニティの振興」⁠産業の活性化」というアプローチで一定の成功を収めているコミュニティもあります。LOCAL(北海道)しまねOSS協議会などが、まっちゃだいふくさんから紹介されました。

この後、行政サービスの利用について、会場の参加者を巻き込んで、さまざまな意見が出されました。参加者のうち、公共施設を使って勉強会を開催したことのある人は約半数。営利を目的にしなければ(利用料の折半などをのぞいて⁠⁠、比較的許可は得やすいものの、やはりネット環境や電源、プレゼン設備などインフラ面での不備をどう補っていくかが問題とのことです。この点についてよしおかさんから、インフラが立ち後れているのは、そういう声が届いていないからではないか、住民から声を上げる必要がある。そしてこうした「行政Hack」のポイントは、世の中にどう貢献できるかをアピールする必要がある。非IT系でうまくやっている事例がたくさんあるので参考にして欲しい、と提言がありました。

一方、ある意味公共機関とも言える大学などの教育機関が、こうした社会人の学習活動にあまりコミットできていないのではないかという問題提起もなされました。これについては、学生への教育で手一杯であり、外に目が向かない、一部では積極的に行っている、社会人に向けた活動を行っていても、その情報が出て行かないのではないか、という意見も出ました。

そしてよしおかさんが今回の反省として、学校関係にリーチできなかった点をあげ、次回以降で積極的にアピールしたいと述べました。その際大事なのは、相手にとって利益があることを提案できるかという点。⁠メリットを説明できるかどうかは我々の責任、そのためにもこの勉強会カンファレンスのような試みが必要だ」と結び、ひとまずこのセッションは幕となりました。

セッション3: 懇親会大会議

セッション2終了後、隣の会場にて懇親会と題したセッション? が行われました。セッション2で語りきれなかった話題や、会場に設けられた「何でも質問コーナー」に寄せられた質問への回答セッションなど、情報交換に花が咲きました。

よしおかさんの「最も重要な話題は懇親会で語られる」という法則の披露の後、乾杯!
よしおかさんの「最も重要な話題は懇親会で語られる」という法則の披露の後、乾杯!

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