Marissa Mayer(マリッサ・メイヤー)氏はGoogleの創設メンバーで、現在は検索プロダクツとユーザエクスペリエンス担当の副社長を務めています。Googleの基幹部門を統括するキーパーソンと言える人物です。毎年のように来日して今回のようなプレス向けの説明会を行っていますが、今年も報道陣を前にGoogle検索の今、そしてこれからについて語りました。
Webは巨大化しているだけではなく、よりリッチになっている
まずGoogleがページランク方式の検索エンジンによるサービスを開始してから、Webのコンテンツが多様になり、リンクも複雑化してきたと述べ、たとえばここ3年をとってみても、YouTubeなどのビデオコンテンツや写真、ブログコンテンツといった一般ユーザによりアップロードされたデータが15倍に増えたと指摘。このことはGoogleの検索データからも見て取ることができ、最近の検索結果の約20%は過去3ヵ月に現れたことのないデータであるとのこと。またWebサイトのクロール結果を見ても、15~20%のコンテンツは新しくなっているというデータも示しました。
これら新しいデータを検索し、ユーザに結果を見せる際には見せ方も重要です。それについてのGoogleのひとつが「Universal Search」です。4年ほど前からアプローチを始め、現在では9~15%の検索クエリについて、ビデオ、画像、地図データなどを複合した検索結果を表示できるようになったとのこと。
そしてこれからの課題の一つとして「オフラインコンテンツ」を挙げます。ネット上にアップされていないデータをどのようにサーチするか、これに対するGoogleのアプローチに「ブック検索」と「Scholar Search」があります。図書館にあるものをスキャンしてGoogleのScholarサイトに登録することで、これまでたどり着けなかった学術情報がオンライン化、デジタル化され、これにより時間、空間を超えた情報へのアクセスが可能になったと言います。
また先週リリースされた「fusion tables」と呼ばれる実験的なプロジェクトは、世界中の科学者が研究データを集め、相関させて、これを誰でも利用できるようにしたものです。
ユーザ参加で作り上げていくコンテンツ
これからのWeb、そして検索システムの進化については「ユーザの貢献」が重要な鍵となると言います。たとえば、YouTubeでは今1分間に20時間ぶんのビデオがユーザによりアップロードされており、また画像シェアサイトPicasaでは毎分4800枚の写真がアップされています。このようにコンテンツはものすごいスピードでシェアされつつあります。さらに、最近はじめた「Google Map Maker」では、これまでどの地図製作会社も作っていなかった土地の地図を、ユーザがどんどん描いているそうです。現在では1日6000件もの編集投稿が入るようになったとのこと。
今後の検索システム
こうしたユーザの動きに合わせて、検索システムも変わっていかなければなりません。そのためのキーワードとして「COMPREHENSIVE」(統括的に検索結果をまとめる)、「RELEVAN」(関連づけの強化)、「INNOVATE」(新たな検索のモデルを創造する)の3つが必要であると言います。
これらを実現する例として、さらにいくつかの試みが紹介されました。
Google Suggest 2.0
現在のGoogle Suggest(入力クエリの補完機能)を一歩進め、クエリを入れると検索結果の表示はせず、ダイレクトに目的のページに飛ぶ。現在英語版のみで提供中・
Voice Search
スペルを知らなくても声でクエリを入力できる機能。英語でのみ提供中。サービス提供前に、ある地域でフリーダイヤルで音声による質問事項を募集したそうで、そのときに訛りや発音についての多くのサンプリングができたとのこと。ただ、現在のところ「アメリカ英語」に限るそうです。
地域を考慮した検索結果表示
検索者のIPなどから地域を判断し、検索結果に反映させる機能。たとえばレストランの名前を検索した場合などに有効とのことです。
翻訳検索の進化
同社の翻訳部門では、現在40もの異なる言語をそれぞれ組み合わせて相互に翻訳可能な状態にしているそうです。これは、検索内容によってある言語に多くの情報が偏っている場合に対応するため、そうした「言語の壁」をユーザに意識させないことを目指すとのこと。
画像検索の強化
画像を検索する際、目的のイメージを言葉で表しきれないことがよくあります。たとえば月の満ち欠けを表す「月齢」といった単語を知らなくても、単に「月」と入れるだけで、さまざまなイメージを表示することができるよう手助けします。
ツールの進化をネットの進化につなげたい!
最後に、こうした検索システムやツールが進化していくことで、ユーザ一人一人がネットに働きかける可能性が増え、さらにネットが新しい方向に進化していく、変えていく、この循環を作るための手助けをしていきたい、と話を結びました。