7月16日、東京ミッドタウンホールにてMicrosoft ReMIX Tokyo 09 が開催された。
同イベントは、ソフトウェアやWebサービスにおけるUX(ユーザエクスペリエンス)の向上を目的としたもので、7月11日に発表されたばかりのSilverlight 3の話題をはじめ、今後のMicrosoftおよび関連企業の展望を見ることができた。
ホストを務めたMicrosoft Developer Platform Corprate VPのScott Guthrie氏
オープニングは川崎和男氏による「コンピュータが消える日」
Guthrie氏の開幕スピーチの後、オープニングトークを務めたのは国立大学法人大阪大学大学院工学研究科教授でデザインディレクターの川崎和男氏。「 コンピュータが消える日―The invisible day of the computer」と題し、これからのコンピュータ、インターネットの世界について考察した。
川崎氏は大学の講義さながらに、デザインとユーザエクスペリエンス、それに関連したコンピュータの未来について語った。
講演では、大きく以下の3つのテーマが取り上げられた。
OS競合という経済呪縛の終演による解放
OSとWi-Fiが融合するとき・Web-Social Infrastructure
Not Contents, Context Procedure Design
さらに3人のキーマンとして、Gordon More、Paul Vixie、William J. Mitchellの名前を挙げ「これら3人はソフトウェアやWebに関わるプロフェッショナルであればぜひ知ってもらいたい」と紹介した。そして、技術進化のスピードだったり、過去のキーマンのプレゼン資料から現在のインターネットの状況が示唆されていた点などを説明する様子は、あたかも大学の講義のようだった。
最後に、
雲の上には、見えないWebがストラクチャーとなり、私たちの目の前から、コンピュータはやがて消えるだろう
On the cloud, invisible Web becomes the social structure. And, from our sight, the computer will fade away before long.
という一文を紹介し、現在のクラウドコンピューティングの世界、そして講演のテーマである「コンピュータが消える日」へ紐付ける形で、講演を終了した。
Silverlight 3の可能性、採用事例
川崎氏のアカデミックな講演に続いて、「 ソフトウェアエクスペリエンス」というキーワードとともに現在のMicrosoftとしてのUXに関する取り組みが紹介され、その中で鍵を握る技術としてSilverlightを取り上げた。
「Silverlightは22ヵ月前に最初のバージョンがリリースされてから、現在、世界中のインターネットデバイスの1/3にインストールされ、40万人を超える開発者・デザイナーが存在し、最も急速な広がりを見せるプラグインです。そして、先日7月11日に最新バージョンSilverlight 3を発表しました」とGuthrie氏は、Silverlightのリリース後から最新バージョンまでの経過を説明し、次のスピーカーへバトンタッチをしました。
次のスピーカーには、マイクロソフト株式会社デベロッパー&プラットフォーム統括本部UXテクノロジー推進部 春日井良隆氏が登場し、「 What's NEW Silverlight 3 ?」というテーマにて、Silverlight 3の機能紹介などを行った。
Silverlight 3の魅力、新機能を語る春日井氏
MediaとRIAC、2つの側面を持つSilverlight 3
春日井氏は最初に「最新のSilverlight 3は、MediaとRIA、2つの側面を持ちます」と紹介し、Mediaの側面として
H.264、AAC、MPEG-4のサポート
RawビットストリームAPIの提供
GPUアクセラレーション
メディア解析に対するロギングの改善
といった改善、機能追加が行われたため、とくにスムーズなストリーミングが行えるようになったことを強調した。
Silverlight 3が実現するスムーズなストリーミングの概念
そして同時に発表されたIIS 7.0 Media Service, Smooth Streamingの例として、会場風景をストリーミングするデモンストレーションが行われた。このデモでは、同時配信以外に、キャッシュを取りながら任意の時間から動画中継を始めるなど、柔軟かつスムーズなストリーミングが可能である点が特長として紹介された。
次に、RIAの側面として、
グラフィックス
アプリケーション開発
データ連携、通信
ブラウザ外の稼働
という4つのポイントに分け、それぞれに関連する機能を紹介。中でも、アプリケーション開発におけるSEO施策やアクセシビリティ対応、.NET RIA Servicesによるデータ連携、通信の強化など、これまでのSilverlightからさらに進化したものが印象的だった。
その中で、最もインパクトがあったのがブラウザ外の稼働に関するもの。従来、Silverlightは、.NET Frameworkを活用するためのWebブラウザのプラグインとして設計されてきたが、バージョン3ではWebブラウザ外のデスクトップアプリケーションとして、その機能が使えるようになった。
採用事例―Yahoo! JAPANとSBIリクイディティ・マーケット
新機能の紹介の後に、実際にバージョン3の技術を採用している事例の紹介が行われ、BtoCの例としてYahoo! JAPANのサイトが、Enterprise RIAの例としてSBIリクイディティ・マーケットのサイトが紹介された。
Yahoo!オークションのAuction Toolsに使われているSilverlight 3。デスクトップアプリケーション機能として「マイ・オークション」のデモが行われた。
SBIリクイディティ・マーケットは、FX情報を提供するサービスにSilverlightを採用している。
見えてきたExpression Studio 3―注目はSketchFlow
最後に、Microsoftが提供するエクスペリエンスデザインツール群「Microsoft Expression Studio」の最新動向として、Expression Blend 3+SketchFlowのRC版(英語)が発表され、実際のデモが紹介された。
Microsoft Expressio Blend 3+SketchFlow(RC版)
Expression Blendは、インタラクティブデザインツールとしてワークフローの向上とともにUIデザインを実現するもの。今回、その新しい機能としてSketchFlowが発表された。
Expression Blend 3RC版にて、先に紹介のあったYahoo! JAPANのSilverlight 3アプリケーションを作成している様子。要素ごとにデータを作り、それをビジュアライズしている。さらに、これをさまざまなファイル形式に落とし込むことが可能。
SketchFlowによるプロトタイピング。細かな指示なども画面上で行える。
SketchFlowはプロトタイピングに特化した機能で、サンプルデータを利用したデザインを実現することにより、プロトタイピングを効率化できる。SketchFlowで作成したプロトタイプは、そのままExpression Blendで扱えるだけではなく、そのデータをMicrosoft Wordに、要件定義書の形でエクスポートできるといった機能が実装されている。
その他、これらを含めた総合デザインスィートMicrosoft Expression 3日本語版が2009年秋に提供開始されることがアナウンスされた。