2009年8月6日、RIAコンソーシアム 主催のセミナー「第13回RIAコンソーシアム・ビジネスセミナー~明日のWebデザインへのヒント!~」が開催された。RIAコンソーシアムは、Rich Internet/Interactive Applicationを対象に、システム開発、デザインといった開発・制作側、またそれを利用する企業側など、業種を超えた企業の参画により、RIAの基盤技術の標準化やさまざまなビジネスへのRIAの活用を推進することを目的とする団体。
今回は、ここ数年とくに注目が集まっているWebとリアルの連携、Webの外部領域まで含めたクリエイティブに着目し、実際にRIAの可能性が広がっていることを検証し、話し合うことを目的に開催された。
セミナー開催にあたって挨拶をするRIAコンソーシアム会長、大日本印刷株式会社C&I事業部事業部長 西島寛治氏
ワンパク :“リアル”と“ネット”の融合が生み出す相乗効果を目指す
最初のスピーカーは、gihyo.jpの連載 でもおなじみ、株式会社ワンパク代表取締役クリエイティブディレクター 阿部淳也氏と、テクニカルディレクター 野村政行氏。
まず、阿部氏からワンパクという企業について「ワンパクはただサイトを作ることを目的とした会社ではなく、ユーザとのコミュニケーションを実現する場を創り出すことを目的とした、コミュニケーションデザインの会社です」と紹介された。そして「つねに“ リアル” と“ ネット” の融合が生み出す相乗効果を目指している」と述べ、その事例の1つとして、2009年年初の新春企画「Are You Hot ?」が紹介された。
クリエイティブかつ消費されないものにする上で、ネットとリアルの融合の強さについて、事例とともに説明する阿部氏
Are You Hot ?は、フロントエンドにFlash、バックエンドにBlazeDSなどの技術を利用し、デバイスにGainerを利用して開発された運試しサイトで、ユーザはブラウザ越しに実際にガラガラくじを引くことができる(詳しくは、gihyo.jpの記事 を参照) 。
まず、開発にあたって工夫した点などについて、野村氏が解説し「フィジカルが持っている強み」について、Gainerの特徴とともに紹介した。また、開発の裏話として、ちょっとした角度の調整や、カメラで認識するときの光の加減など、開発者ならではの苦労についても話された。
野村氏はAre You Hot?のシステム概論や、そのカギの1つGainerに関する解説をした他、フィジカルコンピューティングを取り巻く技術について最新動向を紹介した
最後にワンパクのまとめとして、ネットとリアルの融合のメリットとして、
クリエイティブの幅が広がる
消費されないものをつくりたい
フィジカルを駆使した体験の強さ
を挙げた一方で、課題として、
の4点をクリアにすべきという押さえどころについて述べられた。とくに運用部分については、実際の経験に基づいて話され、説得力があった。
その他、今後のワンパクの展開として、Gainerとタッチパネルディスプレイ、Flickr、Eye-Fiを組み合わせた「PHOTOGAKI」による展開や、大日本印刷と共同で取り組むインスタレーション制作プロジェクト「DNPAC(ドンパク) 」 、Amadanaから独立したWyzartメンバー、大阪ロボットラボラトリーの2社とのコラボレーションしたクリスマス企画などが予定されていることが発表された。
BOW :BOW cARdに見るARの可能性
次に登場したのは、BOW吉川佳一氏。吉川氏のプレゼンテーションでは、これまでBOWが取り組んできた3D名刺「BOW cARd」について、AR(Augmented Reality)のメリットと合わせて紹介された。
なぜARに着目したのか、実例とともに紹介した吉川氏
吉川市は、まずなぜ名刺に着目したかについて説明した。
「何かをユーザに体験してもらいたいとき、たとえばWebコンテンツとしてただURLを提示するだけではユーザが積極的に体験しようとは思わないでしょう。しかし、それをCDに収録して配布することで実際に触ってもらえる確率が高まります。その理由の1つは、ものとして記憶に残るからです。
それでも、まだ体験してもらうためには物足りないと感じて、さらにもう一工夫が必要だと思ったときに、ちょうどARが流行っているというのを聞きました。ARというのはあたかも実際にあるように見せる、拡張現実と呼ばれる技術で、先ほどのCDで配布するようなリアルさを持たせることが可能です。そこでARを詳しく調べたところ、実現するために(撮影用)カメラに対してマーカーを付けることが必要ということがわかりました。そこで、Webコンテンツを提供するURLの部分にそのマーカーを入れることで、何かできるのではということから、名刺にAR用のマーカーを掲載するという発想に至ったのです」 。
ARを利用した3D名刺BOW cARd.画面に映っているキャラクター2つが、ARによって生成されている
こうして、ARを利用した拡張現実3D名刺「BOW cARd」の制作が始まった経緯が話された。実装段階では「すごい3Dレンダリングを目指す」よりも、「 ( ユーザにとっての)名刺交換という体験をもう一段深くする」ことを目的にしたそうで、それを実現する手段として、アバターを乗せ、代わりに挨拶をさせるようなコミュニケーション、また、ユーザ自身が自分の名刺を作れる仕組みというのを用意したそうだ。
その結果として、現在のBOW cARdには「向き合い判定」「 Twitter連動」「 カラーコード」といった機能が実装されている。
また、プレゼンテーションでは、BOW cARd以外に、Virtual Sushi Barという、専用のお皿に寿司のARを表示させるデモンストレーションが行われ、実際の制作プロトタイプなども紹介された。
かなりリアルに寿司を表現している「Virtual Sushi Bar」
最後の個別プレゼンテーションを行ったのは、SEMI TRANSPARENT DESIGN 菅井俊之氏、田中良治氏。SEMI TRANSPARENT DESIGNでは、大手企業と取り組んだインスタレーション事例を多数手掛けており、今回のプレゼンテーションでは、
の2つの事例を中心に紹介された.
akarium call projcetは、2006年に実施された、表参道駅から明治神宮までの表参道に立てられた巨大灯籠(総数60本)を、携帯電話から自分の声に反応させることができるというインタラクティブ イルミネーションで、開発の経緯や実際に使用した機材の制作などについて紹介された。
akarium call projcetoのポイントは「インタラクションが渋谷のハチ公のようなシンボルになること」 、インターフェースとして携帯電話を使うことで「年齢性別を越えられること」と説明する、菅井氏
もう1つの、LIVE COLOR WALL PROJECT:call tokyoはSONYの液晶テレビBRAVIAのCMと連動したインスタレーションで、BRAVIAの「Color is Magic」というCMをカラーパレットにして自分の好きな色をスポイトで吸い取り、銀座ソニービル上へポタッと落とすとビルがその色に変わるというものを表現する作品となっている。こちらについても、どのように制作したか、また、実際にソニービルに写すときにどの角度が良いかを調べるのかが大変だったなど、裏話を聞くことができた。
まとめでは、こうした大規模な事例を手掛けた経験から、SEMI TRANSPARENT DESIGNとして考えるインタラクションやインスタレーションのついて興味深いコメントが述べられた。
まず、コンテンツデザインのポイントとして「町のシンボルになるインタラクション」にすることで効果が大きくなること、一方で、Webサイトとして見た場合、あまり複雑にするのではなく、ときにはユーザに解釈をゆだねるぐらいシンプルに、問いかけを持つWebサイトであること、いわゆる「サイレントWebサイト」であるほうが、自然発生的に強力なBuzzが発生しやすいという見解を述べた。
エンジニアの視点から専門用語の難しさについて話す菅井氏(右)と、デザイナーの視点からクリエイティブの大事さとそれを裏付ける技術のバランスについて話す田中氏(左)
そして、それらを含めて二次的利用が可能なメディアを意識し、継続して行うことで行為自体をシンボル化することが大切であると述べ、プレゼンテーションを終えた。
RIAコンソーシアム・ビジネスセミナーXIII~明日のWebデザインへのヒント!~
https://www.ria-jp.org/information/20090806.html