2010年は「オープンソースと政府・自治体」テーマ~オープンソースカンファレンス(OSC)活動報告2010

オープンソースカンファレンス実行委員会が運営するオープンソースコミュニティ/イベント「オープンソースカンファレンス(OSC⁠⁠」が、2010年秋、50回目の開催を迎える。これに先立ち、2009年までの活動報告および2010年の展望について記者会見が開催されたので、その模様をお届けする。

図1 2010年、50回という節目の回を開催することになったオープンソースカンファレンス。それに先立ち、今後の展開と狙いについて、記者会見が行われた。
図1 2010年、50回という節目の回を開催することになったオープンソースカンファレンス。それに先立ち、今後の展開と狙いについて、記者会見が行われた。

2009年のOSCは全国12会場で開催、約6,400名が参加

まずはじめに、株式会社びぎねっと代表取締役社長兼CEOでもあり、オープンソースカンファレンス実行委員会の中心人物でもある宮原徹氏より、2009年までのOSCの実績および振り返りが行われた。

図2 オープンソースカンファレンス実行委員会 宮原徹氏。OSCについて「名実ともに全国すべての地域におけるネットワークを整備できた」と述べた。
図2 オープンソースカンファレンス実行委員会 宮原徹氏。OSCについて「名実ともに全国すべての地域におけるネットワークを整備できた」と述べた。

OSCは、

  • オープンソースコミュニティの「活動成果」の発表の場の提供
  • 開発者とユーザの「出会いの場」の提供
  • ビジネスチャンスの創出
  • 企業・コミュニティ・その他グループの緩やかな連動
  • OSSの今後をより良くしていくための試みの検討

という目的に基づいて開催されており、2004年9月に第1回目が開催されて以降、昨年2009年には、全国12会場で述べ6,400名以上の参加者を集めるほどの大規模イベントにまで成長した。

宮原氏は「この10年間、オープンソースそのものの認知が高まったことに加えて、オープンソースを中心に、業界内でビジネスとボランティアの融合が図られてきました。その中で、OSCが果たしてきた役割は大きいと感じています」と述べ、これまでのOSCについて振り返った。

また、⁠オープンソースの特性の1つがコミュニティであり、それを活かすために開催2年目から日本全国を意識し始めました。そして、2007年全国8ヵ所で開催したことが1つの転機となり、2009年は北から南まで全12会場での開催が実現できました」と、OSCを軸としたコミュニティと地域間交流の実現について紹介した。

2010年は「オープンソースと政府・自治体」

OSCは、2009年から「その年のテーマ」を設定するになっており、昨年は「チャレンジ」というテーマのもと、

  • 地域間交流の活性化へのチャレンジ
  • 各地域の自立した開催へのチャレンジ
  • 新しい人材発掘へのチャレンジ

が行われてきた。

そして、2010年のテーマとして「オープンソースと政府・自治体」が掲げられた。このテーマについて宮原氏は「海外ではGOSCONのように、オープンソースと政府というテーマで、参加者が積極的に交流し議論できるイベントがありますが、ここ日本ではまだそのレベルのイベントが存在しません。しかし、現在の市況を鑑みて、政府・自治体のオープンソースへ意識が高まっていることを感じます。また、IT育成という観点では、松江など、すでにコミュニティベースで自治体と交流が図れている地域が増えてきました。あと足りていないのは、調達側のノウハウであったり、調達における議論です」と述べた。

このように、日本のオープンソースおよびIT、それに対する政府・自治体の現状と課題を指摘した上で「潜在的なニーズに対して情報を提供できる場を作りたいという意識から、今回のテーマを設定しました」と、政府・自治体へ積極的にアプローチすることを発表した。

具体的には「OSC.Government」と題したイベントを開催するとのこと。今回は、政府・自治体におけるシステム調達に関わる人やソリューションベンダの政府・自治体担当者を対象に、講演・事例紹介・パネルディスカッションのプログラムが予定されている。今後、実行委員会を編成し、詳細が詰められていく。

また、OSC.Government開催に先立って、政府・自治体におけるOSS活用の情報交換用メーリングリスト「oss-gov」が開設された。

oss-gov
URLhttp://list.ospn.jp/mailman/listinfo/oss-gov

2010年のOSCは新たに神戸、香川での開催が決定、全12都市13会場で開催

以上、2010年のテーマ説明の後、2010年のOSCの全体プログラムが発表された。すでに1月に開催済みのOSC2010 Oita(大分)を加え、全13会場での開催が予定されている。このうち、新しい開催地域として、神戸と香川が加わった。前述のOSC.Governmentは、9月上旬開催のOSC Tokyo/Fallとの併催で、OSC初となる全3日間の日程で予定されている。

OSCの詳細については、以下サイトを参照のこと。

オープンソースカンファレンス開催情報
URLhttp://www.ospn.jp/

最後に、OSCへのエンドーストメントという形で、協賛企業・団体を代表し、4名の方からのコメントを受け、説明会が終了した。

図3 ⁠日本HPでは、FOSSガバナンス・プラットフォーム対応・Linux印刷&イメージングという3つのポイントからOSSに取り組んでおり、今後も積極的に交流を図っていく」と説明した日本ヒューレットパッカード株式会社インフラストラクチャーソフトウェア・ブレード事業本部担当部長 赤井誠氏。
図3 「日本HPでは、FOSSガバナンス・プラットフォーム対応・Linux印刷&イメージングという3つのポイントからOSSに取り組んでおり、今後も積極的に交流を図っていく」と説明した日本ヒューレットパッカード株式会社インフラストラクチャーソフトウェア・ブレード事業本部担当部長 赤井誠氏。
図4 ⁠マイクロソフトのオープンソースへの取り組み⁠という、数年前では考えられなかったことが、今実現できている。今後も、オープンコミュニティとの相互理解を積極的に進めたい」とコメントしたマイクロソフト株式会社プラットフォーム戦略本部 吉川顕太郎氏。
図4 「“マイクロソフトのオープンソースへの取り組み”という、数年前では考えられなかったことが、今実現できている。今後も、オープンコミュニティとの相互理解を積極的に進めたい」とコメントしたマイクロソフト株式会社プラットフォーム戦略本部 吉川顕太郎氏。
図5 ⁠SRA OSS, Inc.のようなオープンソースを扱うビジネスを行う企業にとって、OSCはとても貴重な場。ぜひ世界版のOSCにも期待したい」と述べたSRA OSS, Inc.日本支社取締役支社長 石井達夫氏。同氏からは、今年リリースが予定されている最新のPostgreSQL 9.0についても紹介された。
図5 「SRA OSS, Inc.のようなオープンソースを扱うビジネスを行う企業にとって、OSCはとても貴重な場。ぜひ世界版のOSCにも期待したい」と述べたSRA OSS, Inc.日本支社取締役支社長 石井達夫氏。同氏からは、今年リリースが予定されている最新のPostgreSQL 9.0についても紹介された。
図6 ⁠OSCの原型を作ったのはjus。そして、そのjusが実現できなかった継続的開催・全国展開を実現したのがOSC。こういった関わりから唯一コミュニティの立場で、今回の発表会に参加させてもらった」とコメントし、⁠OSCに参加して、ぜひそこでしか得られない⁠熱⁠を体感して欲しい」と熱く語った、日本UNIXユーザ会幹事 法林浩之氏。
図6 「OSCの原型を作ったのはjus。そして、そのjusが実現できなかった継続的開催・全国展開を実現したのがOSC。こういった関わりから唯一コミュニティの立場で、今回の発表会に参加させてもらった」とコメントし、「OSCに参加して、ぜひそこでしか得られない“熱”を体感して欲しい」と熱く語った、日本UNIXユーザ会幹事 法林浩之氏。

2010年のOSCがどのように展開されていくのか、ぜひ読者の皆さんも会場に足を運び、実際に参加してもらいたい。そして、法林氏が述べたように、オープンソースが持つ可能性を肌で感じ、リアルイベントから生まれる熱を体感してもらいたい。

直近では、2010年2月26、27日の2日間、明星大学(東京)にて「オープンソースカンファレンス2010 Tokyo/Spring」が開催される。

オープンソースカンファレンス2010 Tokyo/Spring
URLhttp://www.ospn.jp/osc2010-spring/

gihyo.jpでは、これからも積極的にOSCやオープンソース関連のイベントやセミナーに注目し、情報をお届けしていく。

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