5月12日(水)から14日(金)の3日間、東京ビッグサイトにおいて「組込みシステム開発技術展」(ESEC)が開催中だ。第13回を数える今回は、組込みシステム開発に関わる最新トレンドがはっきりとわかる展示会となった。ESEC展示会場から、各社のイチ押し製品や今年狙い目の業界トレンドなどをレポートする。
Armadillo400シリーズ発表――アットマークテクノ
Androidの開発キットといえば「Armadillo」(アルマジロ)のCPUボードが有名だが、「組込みシステム開発技術展 2010」(ESEC 2010)の会場では、アトマークテクノのブースがArmadilloの新製品である「Armadillo-400」シリーズの展示やデモでにぎわっている。
5月10日に発表された新しいボードは、「Armadillo-420」と「Armadillo-440」の2種類だ。400シリーズはArmadillo-220の後継機として、クロック周波数が400MHz、フラッシュメモリも2倍となるなど機能アップが図られている。CPUはARM9搭載で、Linux対応も変わらないが、消費電力も1Wと省電力化が進んでいる。
420と440の大きな違いは、4.3インチタッチパネル液晶が付いているかいないかだ。420は基本的なCPUボードだが、440は液晶パネルとI/Fが搭載されており、スマートフォンや画面付きの業務端末の開発に便利な仕様となっている。会場では、これらの新製品を使ったさまざまな応用アプリケーションの展示が行われていたが、ブースの奥には、参考展示ながら、Flash Lite、Windows Embedded CE6.0 R3やユビキタスのQuickBootを実装したArmadilloボードもデモされていた。
Flash LiteやCEについてはライセンスの問題もあり、すぐに製品化できるか微妙なところらしいが、技術的には実装に問題はなく、アプリケーションなども動かすことができているそうだ。QuickBootについては、最終的な製品は先になるが、秋ごろを目指してリリースしたいとしている。QuickBootに対応すれば、BIOSを経由せず素早い起動が可能になる。専用OSやOSなしの組込み機器のような待機電力なしで電源オフから起動するような製品の設計に可能性が広がる。
- (株)アットマークテクノ
- URL:http://www.atmark-techno.com/
エクセルソフト、マルチコア時代の並列化ツール――Parallel Studio
12日より東京ビッグサイトではESECを始めとし、「クラウドコンピューティングEXPO」や「情報セキュリティEXPO」など、ITに関するイベントが集中して開催されている。そのひとつに「ソフトウェア開発環境展」もある。この展示会は、昨今の組込み開発にも関係の深い、UMLモデリングツールや静的解析ツールなどの展示が行われている。
この「ソフトウェア開発環境展」において、エクセルソフトはIntelの「Parallel Studio」を利用したマルチコアプロセッサ上での並列開発ソリューションのデモを行っていた。「Parallel Studio」はVisual Studioのアドオンとして提供される、ソフトウェアの並列化をサポートするツールだ。デモ展示を説明してくれた同社の安晃生氏によれば、Parallel Studioは、Amplifier、Composer、Inspectorの3つのコンポーネントから構成され、それぞれがマルチコアプロセッサー上での最適な並列プログラムの開発を支援してくれるものだそうだ。
たとえば、Parallel Amplifierは、コードを分析しCPU負荷の高いホットスポットを検出し、並列化をしたほうがよい部分を示してくれる。Amplifierは、コアの利用状況や並列化の度合いなどパフォーマンス分析の機能もサポートしており、開発したソフトウェアの性能評価やチューニングにも活用できる。
Parallel Composerは、検出されたホットスポットをマルチスレッド化することで、処理を分散させてくれる。単純なループなどは自動的にマルチスレッド化してくれるそうだ。さらにOpenMPを利用した並列化にも対応している。
Parallel Inspectorは、データやメモリの競合状態、メモリリークなどをランタイム生成時にチェックしてくれる。そして、静的解析ツールでは検知できないような問題も、動的なコード解析によって検知できるという。
マルチコアを活かした最適なプログラムを開発するには、このような開発環境はますます重要になってきそうだ。
- エクセルソフト(株)
- URL:http://www.xlsoft.com/jp/