5月12日(水)から14日(金)の3日間、東京ビッグサイトにおいて「組込みシステム開発技術展」( ESEC)が開催中だ。PART1 に続き、ESEC展示会場から各社のイチ押し製品や今年狙い目の業界トレンドなどをレポートする。
BIOS回避でATOMを高速ブートと「Android始めました」――アックス/イーフロー
「組込みシステム開発技術展」ではお馴染みとなっているアックスのブースでは、ATOM用の高速ブートローダーが展示されていた。
ATOMチップを搭載した開発ボードにはBIOSが搭載されていることが多く、組込み機器の場合、BIOSが必須なシステムにとっては起動が遅くなる、ライセンスコストがかさむといった問題があった。アックスのブートソリューションであるAxe Boot Code Distribution(ABCD)は、ATOM用のaxLinux、絹(POSIX対応RTOS) 、AXE-AUTOSAR、FreeDOSなどをBIOSを経由しないでブートさせるためのブートローダー開発パックだ。このほか、QNXやWindows CE、μITRONなどにも対応しているとのこと。
Axe Boot Code Distribution(ABCD)の解説パネル。バイナリのブートプログラムが提供される。
ABCDを実装したボードの例
また、アックスではAndroid OSもサポートするようになり、今回の展示ではイーフローと共同でAndroid関連製品のデモも行っていた。イーフローはAndroidの開発プラットフォームやソリューションに定評のあるベンダである。
イーフローの製品では、仮想化ハイパーバイザである「蛍」( アックス製)の上で、リアルタイム系のコアサービス(電話、通信など)とAndroidを同時に動かす「Hyperdroid」が注目だ。Hyperdroidはネットワーク機能などコアサービスのOSとリッチアプリケーションを仮想化技術で組込み機器に実装するためのソリューションだが、イーフローが提供するAndroidはVMを高速化したDalvik Turboと、家電端末などをリンクさせるOSGiが組み込まれている。
「蛍」の上でRTOSとAndroidを実行。AndroidのVMもチューンされ実用的に。
Hyperdroidを応用した情報端末のデモ。後方には「組込みプレス」の最新号も。
処理速度が最適化されたDalvik TurboとOSGiによる宅内デバイス連携によって、遅さがネックとなっていた情報家電やホームコンピューティング端末などに対してAndroidの応用が広がることが期待される。
アックスといえば巫女さん
( 株) アックス
URL:http://www.axe-inc.co.jp/
( 株) イーフロー
URL:http://www.eflow.jp/
Simulink用モデル診断ツール――エクスモーション/東陽テクニカ
エクスモーションのブースでは、東陽テクニカと共同でさまざまな組込みソフトウェア開発を支援するツールやソリューションが展示されていた。東陽テクニカは測定器などが有名だが、開発ソリューションという意味では、ハードウェアだけでなくソフトウェアでも多数のソリューション製品の販売を行ったり、市場に投入しているとのことで、今回の展示はエクスモーションと共同で行うことになったそうだ。
エクスモーションと東陽テクニカのブース
注目はSimulink対応のeXquteだろう。この製品は夏ごろリリースを目指しているとのことで、現段階では参考出品となっている。eXquteはソースコードの品質診断ツールであるQA C/C++によって解析されたさまざまなデータを使ってソースコードの品質を診断、可視化するツールだ。「 eXqute for MBD」はソフトウェアモデルの品質を評価、可視化するもの。「 MBD」はModel Base Developmentの略だそうだ。
eXqute for MBDがサポートするソフトウェアモデルはSimulink。モデルの中のクローンの有無や状態、各種分析メトリクスなどを評価、可視化し、ソフトウェアの品質向上やリファクタリングに活用できるという。
eXqute for MBDの説明パネル。Simulinkモデルを解析・診断してくれる。2010年夏ごろリリース予定。
クローンモデルの検出画面。変更した場合の影響箇所の判定やリファクタリングに活用する。
品質評価のメトリクス
メトリクスをドリルダウン
品質の評価結果もグラフによって可視化される。
会場でもうひとつ推している製品は「Structure 101」だ。Structure 101はQA C/C++のアドオン製品で、QA C、QA C++にソースコードの解析だけでなく、プログラムの構造、アーキテクチャの解析、不整合の検出などを行う開発支援ツールである。
Structure 101の実行画面。関数やモジュールの依存関係や構造がチャート化される。
( 株) エクスモーション
URL:http://www.exmotion.co.jp/
( 株) 東陽テクニカ
URL:http://www.toyo.co.jp/
UMLツールをアドインでIDEと連携させ、要求管理で品質向上――スパークスシステムズ
会場は「ソフトウェア開発環境展」だが、ここでも組込みエンジニアが使えそうなツールの展示を発見した。スパークスシステムズという会社のUMLモデリングツール「ENTERPRISE ARCHITECT」だ。
ENTERPRISE ARCHITECTは、一般的なUMLモデリングツールとして、UML2.1の13のダイアグラムの生成ができ、データベースの解析やスキーマの生成など基本的な機能に対応するだけでなく、拡張性が高い仕様となっているそうだ。UML以外のBPMN1.1、状態遷移図、DFDに加え、戦略マップや組織図、バランススコアカードなど戦略やマネジメントに関するチャートも作成できる。
そして、作成したモデリングをシステム設計やコーディングに生かすため、Visual StudioやEclipseといった開発環境(IDE)と連携させ、クラス図、シーケンス図からコードを生成させることができる。SysMLを記述するためのアドインも用意されている。SysMLは、動作モデルの記述やハードウェア構成などの表現も可能なモデリング方法の規格だが、スパークスシステムズはSysMLの仕様作成にも関わっているそうだ。
そして、もうひとつ興味深い展示は要求管理を行う「RaQuest」というツールだ。要求管理とは、設計開発対象のシステムに対するさまざまな要求を管理するもので、要求事項に関するさまざまな情報を登録して統一的に管理することができる。変更の履歴の自動記録も可能だ。さらに、他の要求事項との関連や依存関係をトレースしてくれる。要求変更時の影響範囲の解析や要求の抜け漏れがないかどうか、という視点で把握するために使えそうなツールだ。
RaQuestは先に紹介したENTERPRISE ARCHITECTとも連携可能で、要求項目とユースケースなどのUML要素との関連付けも可能だそうだ。これにより、要求と設計とのトレースが可能になる。
スパークスシステムズのブース
スパークスシステムズ ジャパン( 株)
URL:http://www.sparxsystems.jp/