5月12日(水)から14日(金)の3日間、東京ビッグサイトにおいて「組込みシステム開発技術展」( ESEC)が開催中だ。PART1 、PART2 に続き、ESEC展示会場から各社のイチ押し製品や今年狙い目の業界トレンドなどをレポートする。
VoIP開発モジュールとタッチパネルUIをブラウザで開発するソリューション――グレープシステム
グレープシステムのブースで見ることができる2つの展示を紹介しよう。1つは、IP電話やテレビ会議システムなどを簡単に製作できるオールインワンボード、もう1つは組込み機器のLCDやタッチパネルなどのUIプログラムをブラウザを実装してHTML(JavaScript)で行えるようにするソリューションだ。
まずIP電話のモジュールは「InstaVoIP」といい、プロセッサにBF516を搭載した7cm×4.6cmの小さいボードだ。これに、音声コーデックやTCP/IPやSIP/SDPなどのプロトコルスタックも内蔵し、電源、ネットワークインターフェース、マイク、スピーカなどを接続すれば、ソフトフォンやVoIP機器がすぐに構成できるという。プログラムもIPレベルでコーディングでき、オプション機能としてIPv6やSIPS、SSL/TLSなどのセキュリティ機能も実装可能だ。
InstaVoIPで構築したIP電話
InstaVoIP本体はこの小さい基板
VoIP機器のパラメータ設定の画面
UIソリューションは「Fusion Webpilot」を利用したもので、ターゲットシステムにブラウザコアやWebサーバなどを実装し、HTMLで記述された画像コンテンツやJavaScriptを処理できるようにする。画面の描画についてもLCDの表示部が詳細を担当するためグラフィックライブラリは必要ない。
デモでは、カラ―液晶を搭載したCPUボードでコピー機を想定した操作パネルを実現したモジュールを動かしていた。タッチパネル操作や入力データは、HTML、JavaScriptによるUIプログラムで、エラーチェックなども行えるので、本体のアプリケーションプログラムは結果を引数で受け取るだけで、パネル操作やデータのレンジチェックなどのロジックを気にする必要がない。さらに、UI部分はポップアップやウィンドウの遷移、エラーチェックなどWebプログラミングのスキルやノウハウが生かせ、ロジックとUIの分離がより明確にできるというわけだ。
Webpilotを応用したコピー機の操作パネルの例
Webpilotのシステム構成
業務端末画面の設計例
このソリューションではブラウザの表示コンテンツを作るので、ホームページビルダーによって開発ができる。
( 株) グレープシステム
URL:http://www.grape.co.jp/
日本でも10MbpsのFlexRay採用は拡大していくだろう――Advanced Data Controls
Advanced Data Controls(ADaC)では自動車向けの制御機器や組込みシステムのための開発ツールやデバッガなどを手掛けているが、車載ネットワークの規格であるFlexRayのソリューションを展示していた。日本では自動車内の車載ネットワークの規格としてCANが一般的に普及しているが、CANの帯域幅は1Mbpsであるのに対してFlexRayは10Mbpsの帯域幅を持っている。
エンジン制御やトランスミッション、ブレーキなどで、モーターやアクチュエータ系の信号を制御するなら帯域はそれほど必要ないかもしれないが、自動車にも情報端末が搭載されたりトラフィックが増えてくれば、帯域幅の違いは大きいものとなるだろう。また、CANはイベントドリブンであるのに対してFlexRayはタイムトリガーなので、FlexRayのほうがデータのコリジョンが発生しにくく、応答の最低遅延の保証がしやすい。
以上のような特徴から、ADaCでは自動車の電子制御やセンサ類が増えてくると日本でもFlexRayの採用が進むものと見ている。そして、そのための開発、解析ソリューションとして、FlexRay用のトラフィックアナライザを展示していた。特徴は、競合製品より小型で価格面で競争力があることだという。
FlexRayの設計・開発ソリューション
FlexRay AnalystPro
FlexRay AnalystProのパラメータ設定画面
Advanced Data Controls
URL:http://www.adac.co.jp/
スマートグリッドのラストワンマイルにも対応するマイクロコントローラ――IBS Japan
産業用のマイクロコントローラやセンサ・監視ネットワーク関連の機器を扱うIBS Japanのブースでは、スマートグリッドに関する展示が行われていた。
スマートグリッドの中でも送電系、配電系の保安ネットワーク、監視ネットワーク、そしてこれらを統合したスマートネットワークやシステムは、既存の広域ネットワークやIP網と既存のマイクロコントローラなどで対応できる。しかしスマートグリッドでは各家庭の電力メータをスマートメータ化し、双方向でデータをやりとりしなければならない。
そのため、スマートグリッドでも「ラストワンマイル」の接続をどうするかが、実は課題のひとつになっている。IBS Japanでは、そのためにワイヤレス接続に対応したアクティブマイクロコントローラなどを用意しているが、新製品として、Linuxがインストールされた汎用組込みコンピュータを使ったゲートウェイ製品が参考出品されていた。ワイヤレス接続として3GのHSDPAに対応している。
IBS Japanのスマートグリッドソリューション
従来型のHSDPA対応のゲートウェイとIOモジュール
新製品はSMG-1100-LXといい、外観はこれまでのアクティブゲートウェイ製品とあまり変わらないが、中身はLinuxコンピュータであり、汎用的なプログラムやアプリケーションを搭載することもできるそうだ。スマートメータ用のソフトウェアやUI機能などをサポートするため、ソフトウェアのカスタマイズが重要になってくると、このような組込み製品が必要になってくるかもしれない。
SMG-1100-LXをスマートグリッドのラストワンマイルのソリューションとして展開する場合、本体を各家庭のスマートメータ網のゲートウェイとして電柱などに設置する。そこからEthertnetによって周辺の住宅へLANケーブルでIOユニットに接続し、スマートメータは個々のIOユニットに接続される。SMG-1100-LXにも3Gの通信モジュールが内蔵されており、各家庭のスマートメータの情報は携帯電話のキャリア網を利用して電力会社などに集約され、送電、配電の制御を行うというわけだ。
SMG-1100-LX(参考出品)
IBS Japan
URL:http://www.ibsjapan.com/