drikinが見たGoogle I/O 2010[2]Androidの

「drikinが見たGoogle I/O 2010」第2弾は、初日より30分早い8時30分からスタートした2日目の基調講演についてレポートしよう。

2日目の基調講演開催直前の様子。初日のサーキットを基調とした背景と変わって、Androidをイメージしたデザイン。
2日目の基調講演開催直前の様子。初日のサーキットを基調とした背景と変わって、Androidをイメージしたデザイン。

初日の基調講演がHTML5に終始し、比較的派手さのない堅実なプレゼンだっただけに、より注目が集まる中、前日同様、技術担当副社長Vic Gundotra氏の登場から2日目の基調講演は始まった。まずは、初日の基調講演のYouTubeのライブストリーミング配信について説明があり、24,000アクセスがあったと発表。

実際、初日の基調講演を聴きながらライブストリーミングを閲覧してみたが、遅延の少ない(1、2秒程度の遅れ)配信で画質のクオリティも高く、このような大規模ライブストリーミングを軽々と行ってしまうあたり、YouTubeの性能の高さをさりげなくアピールしている(やる気になれば、Ustreamのようなサービスも容易に実現できるのでは? と思えてしまった⁠⁠。

2日目の基調講演も技術担当副社長Vic Gundotra氏の登場からはじまる。
2日目の基調講演も技術担当副社長Vic Gundotra氏の登場からはじまる。

Froyo登場!

2日目の基調講演最初のテーマはAndroidについての発表だ。Androidで重要なことは2つある。

  • フリーなOSであること
  • オープンであること

「1社が未来を作るものではない」とストレートにApple(iPhone)を牽制しつつ、Androidの現状について語った。現在では1日に10万台ペースのアクティベーションが行われる勢いでAndroidデバイスが増え続けている。USではついにAndroidデバイスのシェアが1位になったことなどが発表された。AndroidのGoogle Mapアプリケーションのナビゲージョン機能では10億マイルのナビゲーションを行い、モバイルデバイスによるGoogleの検索数は5倍に膨れあがったことなどを例に挙げ、利用率と実用性の高さもアピールした。

Android2.2(Froyo)と2.1(Eclair)のパフォーマンス比較を行うデモ
Android2.2(Froyo)と2.1(Eclair)のパフォーマンス比較を行うデモ

そんな絶好調のAndroid状況の中、満を持して登場する次期メジャーバージョンアップAndroid2.2(Froyo)の発表へと話は続く。以下に発表された主要なFroyoの特徴を挙げておこう。

[スピード]
  • Dalvik VMにJIT技術を導入しJavaアプリケーションの動作が2~5倍に高速化
[エンタープライズ]
  • 20のエンタープライズ関係の新機能の追加
  • Exchange Serverへの対応
  • アプリケーションデータバックアップ用のAPIの追加
[クラウドからデバイスへのメッセージAPI]
  • 単なるメッセージのPushではなくIntentを通知することが可能
[テザリングとポータブルホットスポット]
  • Androidデバイスを経由してPCからネットワークを利用できるテザリング機能
  • Androidデバイス自体をPocket WiFiのようなプライベートホットスポットとして稼働させる機能
[ブラウザ]
  • JavaScriptが2~3倍の高速化
  • HTML5の対応強化として
[音声認識機能の向上]
  • 単なる検索だけではなく、電話をかけたりより多くの操作が可能
[Flash 10.1対応]
  • Flash 10.1のPublic Beta版とAIR Developer Pre-Releaseの発表
[Android Marketの強化]
  • ついにアプリケーションをSDカードにインストール可能に
  • Update All機能とアプリケーション単位での自動アップデート設定
  • PC上のMarket提供とデバイス連携
[広告機能の強化]
  • 使いやすい広告ツールを提供
  • 伸縮する新しいタイプの広告フォーマットの追加
  • 動画や、マップ表示、電話機能などを広告内に表示可能
  • 広告の内容は、オープンでGoogle以外の広告も表示可能

ざっと上げても、単なるコンマ1のマイナーバージョンアップとは思えない充実したバージョンアップとなることが発表された。

待望のFlash10.1対応だけでなくAIR環境の提供までアナウンスされた。
待望のFlash10.1対応だけでなくAIR環境の提供までアナウンスされた。

Dalvic VM JITによる高速化については、一部のゲームなど、すでにネイティブコードで実装されている場合には高速化の恩恵は受けられないが、通常のJavaベースのAndroidアプリケーションにおいては劇的な高速化が期待できる。実際いくつかのデモが行われたが、同じアプリケーションが2.2では見違えるように高速に動いていた。iPhoneと違い、Androidではさまざまなメーカが次々にデバイスを登場させている状況で、すでにCPUのクロックスピードは1GHz程度が当たり前、今後さらにパフォーマンスは向上していくことが期待できる。まさに、オープンなプラットフォームであることのメリットの1つと言える。

テザリングやポータブルホットスポット化については目新しい技術ではなく、すでにiPhoneやAndroidのサードパーティアプリケーションなどでも実現されていたが、どちらかというとキャリアとの兼ね合いがあり、あまり公に実現できなかった。Androidがテザリングを標準機能として組み込むことで、この状況がどう変わっていくか注目したい。

実際問題、Androidの進化と普及がモバイルデバイスの増加をますます促進させて行く中で、ユーザが端末ごとに回線契約を行い月額の回線費用を増やしていくことは現実的ではない。メインとなるAndroidの携帯デバイスが通信のハブとなって、他のモバイルデバイスでインターネット利用が行えれば、モバイルデバイス市場の活性化にもつながるので、ユーザとしてはありがたいことこの上ない機能である。

ブラウザとHTML5の機能強化については、初日の基調講演でもGoogle ChromeによるPC上のWebアプリケーション実現のための機能強化やChrome Web Storeによる配信プラットフォームの提供がアナウンスされた。そしてもちろんAndroidのブラウザにおいても、通常のAndroidアプリケーションと遜色がない機能を実現するための機能強化が行われている。JavaScriptからコンパス情報にアクセスして、ブラウザ内で表示しているGoogle Mapの地図を回転させるデモや、Google Buzzサイトでブラウザから直接カメラ機能にアクセスして写真を投稿できるデモなど、従来のWebアプリケーションでは越えられない壁を、HTML5というオープンなスペックとして越えられるよう技術を牽引していくあたり、冒頭でアピールしていた「オープンであること」の活動の一環としても捉えることができる。

基調講演の開始を待つ会場の風景
基調講演の開始を待つ会場の風景

表面だけじゃわからないAndroidの進化

個人的に今回のAndroid2.2の発表で最も重要な機能だと感じたのが、IntentのPush機能だ。AndroidをiPhoneなどと比較するときに、一般的にAndroidの優位性として語られるのは、自由な開発環境やマルチプロセス対応などだが、Intentこそ他のプラットフォームと比較した際にAndroid OSの持つ最も大きな優位性のひとつだと思っている。

Intnetについてここでは詳細には解説しないが、日本語で直訳すれば、⁠意図」⁠目的」という意味で、アプリケーション間でメッセージをやり取りするときなどに、単なるメッセージではなくその先の動作や目的なども伝えることができる機能だ。 概念的にもちょっとわかりづらいため、以前はAndroidの優位性としてあまり一般的にIntentについて語られることはなかったが、ここに来てついにIntentが本領発揮される。

具体的な例として紹介されていたのは、PC上のGoogle MapとAndroidデバイスの連携。今までPC上で調べたGoogle Mapの地図情報を携帯デバイスに送るときには、Google Mapのページから位置情報のURLを携帯デバイスにメールしてデバイスでそのメールを受信し、そこからGoogle Mapを開くという面倒な手順で行っていた。2.2でIntentのPushが可能になると、直接PC上のGoogle MapからAndroidデバイスに位置情報(Intent)を送り込むことができる。デバイスはPCからIntentを受信すると自動的にGoogle Mapアプリケーションが起動し、位置情報が表示される。同様にPC上から電話番号情報をPushして、ダイレクトにデバイスの電話機能を呼び出すこともできる。

Flash 10.1対応については、iPhone/iPad OSではFlashサポートが行われる予定がないことがCEOのSteve Jobsによって発表されて以来、連日話題に事欠かないが、既存のWebコンテンツとの互換性を考えれば、Flashの必要性の高さは言うまでもなく、今回の対応は新しいAndroidの優位性として今後の大きなウリのひとつとなると思われる。ただしAppleが指摘するように、モバイルデバイスにおけるFlashのパフォーマンスやバッテリー消費量の大きさなど、どのくらい実用性があるのかは、実際に使ってみないと評価できないというのが正直な感想だ。iPhoneにおける一連のFlash騒動でGoogleがAndroid OSでのFlashのサポートを表明して以降、Google開発チームが強力にAdobeをサポートして開発を行っているという噂話も耳にするので、最終的にFlashがどのくらい快適に動くか非常に興味深い。

Android Marketも確実な進化を遂げている。もともとAndroid Marketアプリは、あまり派手さがなく地味に実用的な機能を充実させてきた。24時間以内の返品やアップデートの手軽さなど、iPhoneのAppStoreに比べてもユーザの観点で利便性の高い機能を備えていたが、さらに一括アップデートや自動アップデート設定などが追加され、一層ユーザの利便性が向上される。

また、従来のAndroidアプリケーションは、標準ではSDカードへのインストールがサポートされていなかった。このためiPhoneと比べると、ゲームやマガジンなど大量のデータを必要とするアプリケーションの配布が難しかったが、ついにこの制約から解放された。

また、PC上のMarketも発表され、PCのブラウザ上でAndroidのアプリケーションを検索、管理することが可能になる。ここでも前述のIntent機能が活きてくる。PC上のWeb Marketでは、個々のAndroidデバイスを認識していて、Web Marketから直接端末にアプリケーションをインストールすることができるようになる。さらにPC上のMarketのデバイス管理機能を利用すれば、Non-DRMの楽曲であれば、iTunes管理の楽曲であろうとAndroidデバイスにストリーミングすることが可能になる。

モバイルデバイスの進化とデジタルコンテンツの充実により、より手軽で柔軟なコンテンツの同期技術が求められる中で、iPhone/iPadにおいてはiTunesによる同期だけではコンテンツの扱いが難しくなってきている。iPhoneでは今後MobileMeによるクラウド連携などの求められているが、現状Appleはこの分野ではクライアント技術並みの利便性や安定度、使い勝手が実現できてない。Googleにとっては最も得意とするクラウド分野でこの手の技術が充実してくると、Android OSの優位性がさらに強まっていくだろう。

最後に広告系の強化。ここでもiPhone OSとの直接対決が行われている。先日AppleからもiPhone OS 4.0が標準でアプリケーション内広告をサポートすることが発表された。Android OSでもより使いやすい広告ツールの提供や、広告をクリックするとその場で広告表示エリアが拡大してよりリッチな情報を表示できる新しい広告フォーマットの追加などがアナウンスされた。

今年は参加者にサプライズ

このように、バージョン3.0と言っても良いくらいたくさんの新機能が発表されたが、最後に参加者に対してさらなる発表が!

なんと、今年のGoogle I/O参加者全員に、来月Sprintが発売する最新のAndroidデバイスSprint HTC EVO 4Gを無料配布すると発表した。ここ数年、Google I/Oでは毎年デバイスを無料配布して参加者を喜ばせているが、今年はすでに開催1ヵ月前にMotorolaのDroid(US外ではHTC Nexus One)が参加者全員に無料で配られていたので、まさか同時に2つのデバイスを無料配布するとは、流石のGoogleの太っ腹ぶりに会場は拍手喝采だった。

2日目まとめ

2日目の基調講演の前半は、Androidに関して最新版Android 2.2(Froyo)の新機能を中心にかなり盛りだくさんの発表があった。Android 2.2はコンマ0.1のアップデートとは思えない新機能の充実っぷりで、デバイスの充実と併せていよいよモバイルプラットフォームおける本格的なAndroid台頭時代の幕開けを感じさせる内容だった。

特に、Intentというなかなか一般的には理解されづらかったAndroidの特徴が、2.2ではクラウドからのPushと連携してより実用的に活用され始める。これは他のプラットフォームと比べたAndroidの大きな差別化のひとつにつながっていくだろう。また、プラットフォームを支えるMarketの機能も充実し、クラウド連携が上手く機能すれば、Androidプラットフォームの優位性はますます強調されていく。

Androidの進化のスピードに目が離せなくなってきたが、ここはまさに冒頭でVic氏が強調した、フリーでオープンなプラットフォームであることが上手く機能していると言える。Appleも来月にはiPhone OS 4.0を発表し、マルチタスクだけでなく多くの新機能の追加が期待されているし、年内にも登場すると噂されている次期メジャーアップデートAndroid 3.0(Gingerbread)ではどんな新機能が追加されるのだろうかと考えると、今後のモバイルプラットフォームの進化に目が離せない。

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