「drikinが見たGoogle I/O 2010」第3弾は、今年のGoogle I/Oの目玉となった2日目の基調講演の後半。Google TVについてレポートしよう。 初日の基調講演冒頭から技術担当副社長Vic Gundotra氏が予告していたサプライズこそが、このGoogle TVの発表だった。
朝一番、Google I/O開場直後の受付の様子
2日目の基調講演前半パートで発表されたAndroid 2.2(Froyo)だけでも、事前に流れていた噂以上に盛りだくさんな内容で開場のテンションも高まる中、GoogleのシニアプロダクトマネージャRishi Chandra氏が登場し、Google TVについて語り始めた。
シニアプロダクトマネージャRishi Chandra氏によるGoogle TVの発表の模様
なぜ今、Google TVなのか?
最初に「なぜ今、Google TVなのか」という話から始まった。まずテレビの現状を次のように説明。
テレビは、1日平均5時間見られている
テレビは、年間700億の売り上げがある
いまだにテレビは強力なメディアである
そこで、GoogleはTVとWeb、WebとTVを融合したいと考えた。検索時間を減らしコンテンツの閲覧時間を増やし、よりパーソナライズすることで、テレビコンテンツを魅力的に、ただのTV以上のTVにしたいとChandra氏は語り、Google TVのデモに移行した。
しかしデモはトラブルが続く。Bluetoothリモコンが上手く動かない。単にBluetoothの通信状態が悪かったのかGoogle TVのシステム側も不安定なのかはわからなかったが、なかなか思うようにデモが行えず苦戦するChandra氏。さらにタイミング悪くGoogle TV上で放映されていたテレビ番組がインターネットに批判的なニュースを報道。これが逆に聴衆の笑いを呼び、何とか間を持たせつつデモを立て直す。Google TVがまだ開発のかなり初期の段階であることを印象づけるスタートとなった。
デモを見る限り、Google TVは基本的に画面上部に呼び出される検索バーが操作の起点になりそうだ。検索対象となるのはネット上のコンテンツだけでなく、テレビ番組やGoogle TVで扱えるコンテンツ、機能全般。通常のテレビ番組だけでなくHuluやFox、Amazonストリーミングなど、オンライン上の動画サービスも検索対象になっていて、通常のテレビ番組と同等に扱うことが出来る。もちろん高速に動作するテレビ番組表プログラムが内蔵されているが、Googleとしては大量の番組情報を番組表から探し出すより検索から見つけた方が簡単に早く目的の操作ができると考えているのだろう。
あくまでも現状のデモから受けた個人的な感想としては、スペシャルなリモコンで新しいエクスペリエンスを提供するとうたった割に、フルキーボードでの文字入力による検索ベースの操作方法やマウスカーソルによる操作は、目新しさを感じるどころかテレビにパソコンをつなげて操作しているだけに近い感覚を得た。
実際Google自身、Google TVに重要なハードウェア要素として
ブロードバンドに対応したネットワーク接続
簡単接続のためのHDMI
強力な処理能力のためのIntel Atomプロセッサ
を挙げており、スペック的にも少なくとも今時のネットブック相当の処理能力はありそうだ。
またGoogle TVの主要なソフトウェアコンポーネントは
Android 2.1ベース
Google Chrome搭載
Adobe Flash 10.1搭載
となっていて、Google TV上でのChromeのブラウザ動作はPCと遜色ないほど高速に動いていたし、Flashコンテンツについても同様に高速動作していた。携帯デバイスと違いGoogle TVではディスプレイもPC並の解像度が得られるので、Flashコンテンツが閲覧できる意義は携帯デバイス以上に高まる。GoogleによるAdobe Flashサポート強化は、実はAndroid携帯デバイスよりGoogle TVのために必須だったのではないかと思えるほどだった。
Google TVとAndroidが開く新たな世界
また、Android 2.1ベースであるということは、AndroidアプリもGoogle TV上で稼働することを意味する。Android Mobile MarketやPandraのAndroidアプリケーションがGoogle TV上でもそのまま動いているデモでは、iPadにおけるiPhoneアプリケーションのように、拡大表示されたiPhoneアプリケーションが動くのではなく、きちんとGoogle TVの解像度で動作していた。ここにも、デバイスがオープンで最初から多解像度のデバイスをサポートすることを前提として設計されたAndroidのメリットが活かされていた。もちろん先日公開されたAndroid版公式TwitterアプリケーションもGoogle TV上でばっちり動作していた。
さらにGoogle TVがAndroidベースで動作していることは、Androidデバイスとの相性の良さも示している。実際、今回のデモではNexus OneをBluetooth経由でリモコンとして使っていた。Nexus Oneのタッチパネルでマウスカーソルを操作したり文字入力を行うだけでなく、音声検索なども可能となっている。Nexus One上で検索したYouTubeのコンテンツをGoogle TVにPushして大画面で閲覧できる機能などは、ここでもIntent機能が活きていて、このためだけにでも「Google TV欲しい!」と思ってしまった。
話はWebコンテンツの話題に移る。GoogleはGoogle TV用にWebサイトの最適化ガイドラインを提供することを発表。TVに最適化されたYouTubeとNBAの配信デモを行った。ここでもFlashはビデオ再生で活躍していた。Flashによるビデオ再生は非常にスムーズで、GPUへの最適化も行われている感じだった。さらに、Androidで人気のGoogleが開発したPodCast用アプリケーション「Google Listen」のGoogle TV最適化版も紹介された。
最後に紹介されたアプリケーションは、最近、海外からGoogle TVチームに参加したエンジニアが個人で開発したアプリケーションで、テレビ番組のClosed Caption(字幕放送)をGoogle Translateでリアルタイムに他言語に翻訳して字幕として表示するというアプリケーション。まさにTVとWebを融合したGoogle TVならではのアプリケーションという感じで、このようなアプリケーションをどれだけ充実させることができるかが、Google TV成功の鍵になるのではないかと思った。
Eric Schmidt氏登場
Google CEO、Eric Schmidt氏によるGoogle TV紹介の様子
Google TVのまとめとして、Google TVは新しいカテゴリのデバイスであること、オープンなプラットフォームであることが繰り返し強調された。そして「スマートフォンが携帯市場にもたらした驚きをGoogle TVでテレビにもたらしたい」と語り、3つのカンパニーがGoogle TVに協力しているとして、次の3社の名前を挙げた。
SonyはGoogle TV機能を搭載したテレビとBlu-rayプレーヤーを、LogitechはGoogle TV機能を搭載したセットトップボックスを、IntelがこれらすべてのデバイスのためのCPUを提供するということのようだ。また衛星放送の会社であるDISH Networkや販売流通として世界最大の家電量販店であるBEST BUYとの提携なども発表された。
Eric Schmidt氏に迎えられるSony CEOのHoward Stringer氏
デモのトラブルなどもあり、Google CEOのEric Schmidt氏が登場したのは、すでに基調講演の予定時間を終えたあたりだった。Eric氏からも改めてGoogle TVの方向性と重要性が語られると共に、Google I/O 2010基調講演の最後を飾る目玉として(?)Google TVに賛同する各社から6名のCEOが登場し座談会形式でGoogle TVについて語るというイベントで2010年の基調講演は締めくくられた。
登場した各社CEOメンバーは以下の通り。
Paul Otellini氏 (Intel CEO)
Brian Dunn氏 (Best Buy CEO)
Charles Ergen氏 (Dish Network CEO)
Gerald Quindlen氏 (Logitech CEO)
Howard Stringer氏 (Sony CEO)
Shantanu Narayen氏 (Adobe CEO)
Google TVに賛同する各社CEOが登場し座談会形式で話し合う様子
Googleとしては、基調講演の最後に錚々たる各社CEOを集めてGoogle TVの本気度をアピールしたかったのかもしれないが、時間が超過していることもあり、各CEOが登場する前には次のセッションに参加するため開場を去る人も現れ始めていてた。また実際に座談会が始まってもGoolge I/Oに参加するデベロッパにとっては技術的に目新しい内容が話されることも無かったためか、席を去る人が目立った。
2日目後半まとめ
2日目の基調講演は、Android2.2とGoogle TVという二つの大きなトピックで2時間を超過するネタ満載の発表となった。Google TVの機能自体はこれからますます改善されていくと思われるので、最終的な製品がどうなるかはまだまだ判断が付かないという感じだが、テレビがGoogle TV(Android)という頭脳を得ることで、AndroidデバイスやPCで見つけたコンテンツをIntentとしてGoogle TVに投げるとそのコンテンツを大画面で再生してくれる世界が実現される予感だけでも夢が広がった。ただ、現状は結果的にキーボードとマウスに依存した操作から抜け出ていない感じで、操作方法については更なる改善を期待したい。
Android2.2の発表だけでも、従来のiPhone後追い体制から、ついにAndroid独自の差別化を打ち出し始めたターニングポイントとなる大きな内容だっただけに、後半のGoogle TVの発表で話題性が薄まってしまったのと、Google TV自体の完成度もまだあまり高くなかったため、全体的に最後はダラっとした終わり方になってしまった感じがもったいないと思った。これが単にGoogleの段取りの下手さなのか、あえて話題を作りすぎないGoogleの控え目戦略だったのか……。
どちらにしても、2010年後半以降ますますAndroidプラットフォームの盛り上がりは加速しそうだ。