ユーザ数2,100万人を超え、アクティブユーザ率約70%を誇る、日本最大のSNS「mixi」。2010年9月10日に開催された「mixi meetup 2010」にて、次なるプラットフォーム戦略について発表した。
mixiアプリのこれまで
最初のプログラム、オープニングプレゼンテーション「mixiアプリプラットフォームの次の展開」では、株式会社ミクシィ代表取締役社笠原健治氏が登壇し、これまでのmixi&mixiアプリを振り返りつつ、これからのmixiアプリプラットフォームの戦略について発表した。
2010年に入り新展開を見せるmixiアプリ
2009年8月のリリース以降、着実にユーザ数を増やし、そして進化を続けてきたmixiアプリ。当初から、
- ソーシャルネットワーキングサービスの1つという位置付け
- 友人・知人とのコミュニケーションを媒介するもの
というコンセプトが定められていた。2010年に入り、そのコンセプトをさらに強化する動きが見られ、同6月にはmixiボイスとの連携が、そして7月にはmixiフォトとの連携が発表された。
さらに本日、笠原氏は「9月末からソーシャルギフトを可能にした“Request API”をリリースします。これにより、相手がmixiアプリをインストールしていない場合でも、相手に対してアクション(コミュニケーション)を取ることが可能になります」と、新たなコミュニケーションを生み出す技術として展開することを発表した。さらに「このAPIにより既存のSAP(ソーシャルアプリプロバイダー)はもちろん、これから参入を目指す後発のSAPにも新たなバイラルを生み出すチャンスが提供できます。私たちは今後も、コミュニケーションを促す技術を提供し続けていきます」と、mixiアプリだけではなく、mixiの基本コンセプトでもある「コミュニケーションインフラ」に則った戦略を述べた。
2010年10月にmixiアプリをリニューアル
さらに、mixiアプリ内でのソーシャルグラフの形成についても触れ、「これまでmixiアプリでは、マイミク同士の“ソーシャルグラフ”を意識したソーシャル性の高いコミュニケーションを目指していました。最近はユーザのソーシャルに対する理解度が高まってきているので、今の導線「0」の状況から導線の数を増やせるように考えています」とコメントした。それを実現するのが、後述のmixiプラットフォームのオープン化だ。
なお、ミクシィとしてはこれからもソーシャル性の高いソーシャルグラフを意識しながら、SAPをはじめ関係各社を含めた広くて新しいソーシャルグラフの形成を狙っているそうだ。
また、マイミク同士でのコミュニケーション促進の一環として、マイページの顔写真下に、各種アラートを表示させるUIを実装し、mixi内でのコミュニケーションエコシステムの構築強化についても発表した。
mixiアプリについては、2010年10月にリニューアルが予定されているそうだ。
世界初!PC/ケータイ/スマートフォン対応のソーシャルアプリ
mixiアプリと言えば、世界で初めてPCと携帯電話(いわゆるガラケー)に対応したソーシャルアプリとして注目されてきた。そして本日、iPhoneをはじめとしたスマートフォン向けのmixiアプリが発表された。これにより、mixiは、3デバイスに対応する世界初のソーシャルアプリプラットフォームとなった。
マネタイズ支援やインフラ支援も
この他、これまでPVが多いアプリのほうがマネタイズしやすかった点を考慮し、これからはUU創出型アプリの支援強化を行うこと、また、アプリの売上10%のレベニューシェアによるインフラ支援(10月中旬開始予定)などが発表された。
最後に笠原氏は「No.1ソーシャルプラットフォームへ。そして、世界へつながるプラットフォームへ」とコメントし、午前のセッションを終了した。
インターネットからソーシャルネットへ
午後は、メインセッションと題して「mixi新プラットフォームの発表」が行われた。メインセッションのMCを務めたのは株式会社ミクシィ代表取締役副社長兼COO原田明典氏。
mixi.jpの外を対象としたオープン化
まず発表されたのが、mixi.jp外部までを対象としたオープン化。昨年から進めてきたmixi Platform戦略では、mixiアプリを軸にmixi.jp内でのオープン化を行ってきた。今回、その対象をmixi.jp外部までを対象に「ソーシャルネット」のつながりを目指していくとのこと。「これからのmixiは“Social Graph Provider”を目指します」(原田氏)と力強く述べられたように、mixiが持つソーシャルグラフの価値を、世の中に提供していくプロバイダーになるべく、今回の発表が行われた。
その第一弾として、mixi Connectとして提供されてきた機能を、「mixi Plugin」「mixi Graph API」の2つに分け、より明確なものとして提供することが発表された(後述)。
Social Graph Providerとしてできること
Social Graph Providerとしてできることが何か?という点について、原田氏は、
- ウェブのソーシャル化(SGO)
- サービス/デバイスとの連携
- ソーシャル関連ビジネス
の3点を挙げ、これに合わせてプレゼンテーションを進めていった。
1.ウェブのソーシャル化(SGO)
SGOとは、Social Graph Optimizationの略で、「これまで情報の経路として検索エンジンが占める割合が多い状況でした。しかし、ソーシャルネットの世界が広がることにより、これからはソーシャルグラフを利用した情報伝達が行われます。それを最適化していくことが、次のフェーズの重要な課題となるでしょう」と、Webのソーシャル化、そしてそこから生まれるソーシャルグラフの最適化の重要性について原田氏は説明した。
今回のソーシャル化を実現する機能の1つに、mixi plugin機能を利用した「mixi checkボタン」がある。これは、世の中にあるWebサイトすべてにmixiチェック機能を実装できるボタンで、mixi Developer Centerで登録およびAPI申請後、簡単なHTMLを数行を該当サイトに記述するだけで、mixiチェックと同じ機能が使えるようになる。これにより、午前の笠原氏のセッション、冒頭の原田氏が述べているような、mixi.jp外でのオープン化が実現できるだけではなく、mixi.jpとインターネットをつなぐ新たなソーシャルグラフの形成、その先にあるソーシャルネットが生み出されることになる。
この他、これからの展望として、mixi check Pluginの発展形などについても紹介された。
続いて、さっそくmixiの新プラットフォームに賛同し、自社サービスとの連携を図った企業が3社登場した。
ゲスト1:楽天
最初のゲストは楽天株式会社。楽天では、まず、楽天市場、楽天トラベル、楽天GORA、楽天デリバリー、楽天ブックスの5つのサービスにて、mixiチェックおよびmixi Graph APIの実装が行われた。
楽天では、mixi Graph APIを楽天共通プラットフォームから利用することで、楽天仕様にカスタマイズされた統一インターフェースで投稿が可能になる。
ゲスト2:はてな
2番目のゲストは株式会社はてな。代表取締役近藤淳也氏が、mixiチェックとはてなの3サービス(はてなココ、はてなブックマーク、はてなダイアリー)の連携について説明を行った。近藤氏は「はてなが得意とする情報共有とコミュニケーションを実現するT型コミュニケーションを、mixiユーザにも体験してもらいたいです」と述べた。
なお、はてなココとmixiチェックインの連携について、原田氏が「mixi上で両方のユーザが交わり、交流を深めることで、これからの日本のチェックイン(ジオロケーションメディア)文化が盛り上がっていくことを期待します。そして、今後はリアルスポットの“ソーシャル化”が活性化すれば嬉しいですね」と、最近流行りのジオメディアへの展開についても補足した。
ゲスト3:DeNA
3番目のゲストは、モバイル連携というカテゴリから、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)が登壇した。今回の発表で、モバオク!やbidders、モバゲータウンでの連携が行われ、同社取締役ソーシャルメディア事業本部長兼COO守安功氏は「私たちが持っている多様なデジタルコンテンツ、人気ソーシャルゲーム、充実したコミュニティと、mixiにあるソーシャルグラフが掛け合わさることで、今後さらに大きな市場を創設したいです」と、2大ソーシャルプラットフォームのタッグが今後さらに強化されることが期待できるコメントを残し、発表を終えた。
2.サービス/デバイスとの連携
3社のゲストが登場したあと、新プラットフォームで実現できることの2つ目として、サービス/デバイスとの連携が説明された。今回発表されたAPIやプラグインを利用すれば、たとえばmixi以外のポータルサイト内に、mixiボイスを丸ごと掲載したり、また、新しいmixiボイスクライアントを開発することが可能になっている。
ゲスト4:Yahoo! JAPAN
今回、それを実践している企業ゲストとしてYahoo! JAPANが登場した。
Yahoo!JAPANが目指す「LIFE ENGINE」のコンセプトを広げる意味でも、今回のmixiとの連携が大きな意味を持っているとのこと。今後のYahoo! JAPANの各サービスでmixiチェックへの対応が進められていくそうだ。
技術的観点から見たmixi新プラットフォーム
ここで、mixiにおけるプラットフォーム化戦略を技術面でリードする、株式会社ミクシィサービス本部パートナーサービス部開発グループマネージャ 田中洋一郎氏が登壇し、技術的観点から見たmixi新プラットフォームについて解説した。
田中氏は「これまでのmixi Connectはいわば練習的なものでした」という前置きのあと、今回発表された「mixi plugin」「mixi Graph API」の2つの位置付け・目的について解説した。
従来のmixi Connectは、mixiプラットフォームでのつながりを最優先に提供されていたのだが、今回、mixi.jp外へのオープン化を行うべく、この2つのプラグイン、APIが提供されることになった。
とくにmixi Graph APIに関しては「mixiの魅力はソーシャルグラフであり、その魅力を最大限に活かすにはmixi Graph APIの利用が欠かせません。mixi pluginに比べて技術スキルは要求されますが、たくさんのデベロッパーの皆さんに使っていただきたいです」と、田中氏は、聴講しているデベロッパーたちに強く推した。
3.ソーシャル関連ビジネス
最後に、株式会社ミクシィサービス本部グローバル推進室室長が登場し、ソーシャル関連ビジネスの展開として、「課金支援プログラム」「アドプログラム」「mixiファンド」のさらなる拡充と強化について説明した。
アジア2大SNSとのパートナーシップ
この発表のあと、「Renren.com」「Cyworld」という、それぞれ中国、韓国において最大規模となるSNSとのアライアンス締結の発表が行われた。これにより、3つのSNSの共通プラットフォーム仕様が整備され、合計2億人のユーザによるコミュニケーションやソーシャルグラフの形成、そして、各国のデベロッパーが世界進出しやすくなる環境の整備が行われていくと説明された。
コミュニケーションとしてのインフラ
以上、新プラットフォームの発表のあと、再び代表の笠原氏が登場し、改めてSocial Graph Providerとしてのmixiについて話した。笠原氏は「サービス立ち上げ当初からのコンセプトである“コミュニケーションとしてのインフラ”を変えることなく、ソーシャルグラフをどんどん広げていきたいです。そして、私たちがすべてを抱え込むのではなく、提供するのはソーシャルグラフ、コミュニケーションであり、デバイスやインフラといった部分、アプリケーションなどは外部のパートナー、そしてユーザの皆さまと作り上げていきます」というメッセージを残し、新プラットフォームの発表を終えた。