Chrome、HTML5、Android、クラウドの最前線が見えた―Google Developer Day 2010 Tokyo開催

2010年9月28日、東京国際フォーラム(東京、有楽町)にて、東京で4回目となる「Google Developer Day 2010 Tokyo」が開催された。

今回で4回目となる東京開催

Google Developer Day(GDD)は、Googleが主催する世界各地で開催される開発者のためのカンファレンス。Googleの技術だけではなく、Web/インターネットに関連する標準的な技術、新しいトレンドについて包括的に取り上げている。

満席となった基調講演
満席となった基調講演

オープニング基調講演に登場したのはGoogle当協会初センターエンジニアリングディレクター Joseph Ternasky氏。Joseph氏は、今回のGDD基調講演について

  • Chrome & HTML5
  • Android
  • Cloud Platform

の3つのテーマを取り上げることを説明した上で、各テーマのプレゼンテーションがスタートした。

Joseph Ternasky氏
Joseph Ternasky氏

Chrome & HTML5

まずはじめに登場したのはGoogleシニアエンジニアリングマネージャの及川卓也氏。及川氏は「Chrome & HTML5」というテーマで、最新のWeb動向について語った。

及川卓也氏。HTML5というWeb標準技術の可能性について、Googleの取り組みと合わせて語った。
及川卓也氏。HTML5というWeb標準技術の可能性について、Googleの取り組みと合わせて語った。

及川氏は「いま、人々がWebの上で生活してきています。それを支えるのがWeb標準の技術であり、これから主流となるHTML5です」と、人間生活とWebの関係、それを支えるWeb標準技術の重要性を述べた。とくに、⁠スケールしやすい」⁠ベンダロックインにならない」といったWeb標準のメリットともに、HTML5が普及することで、Webそのものがアプリケーションとして機能していくことを示唆した。

ここで、慶応義塾大学大学院 政策メディア研究科教授の一色正男氏が登場した。一色氏は、2009年1月より、国際規格W3C(World Wide Web Consortium)のSite Managerに就任している。一色氏はW3Cの紹介をした後、⁠今のWebは見るだけのものではなくなってきています。HTML5により、Webはアプリケーションのプラットフォームになります。これによりビジネスの根底が変わっていくはず。その瞬間に皆さんはいるのです。このイノベーションの中で、新しいビジネスを生み出してください」というメッセージを伝えた。

慶応義塾大学大学院 政策メディア研究科教授の一色正男氏。W3C Site Managerを務める。
慶応義塾大学大学院 政策メディア研究科教授の一色正男氏。W3C Site Managerを務める。

再び及川氏にマイクが戻り、HTML5の現状に関して話が進んだ。及川氏は「ようやく主要ブラウザでのHTML5が進んできました」と説明してから、Microsoftが提供するHTMLデモサイト「FishIE Tank(http://ie.microsoft.com/testdrive/performance/fishIE%20tank/default.html⁠⁠」を紹介した。

主要ブラウザでのHTML5対応が進んでいる。
主要ブラウザでのHTML5対応が進んでいる。

ここでInternet Explorer 9とGoogle Chrome開発版での稼働比較を行い、Chromeのパフォーマンスの良さをアピールした。この理由として、GPUのアクセラレーションを活用し、処理速度をチューニングしている結果だそうだ。

Chrome上でのFishIE Tunkのデモ
Chrome上でのFishIE Tunkのデモ

続いて、Googleデベロッパー アドボケイトの北村英志氏も登場し、CSS3のtranlate、音声認識のデモが行われた。

CSS3のtranslateを使い、画面を横に回転して表示させている。左は北村氏。
CSS3のtranslateを使い、画面を横に回転して表示させている。左は北村氏。

これらのデモを終えた後、Chrome+HTML5のメリットとして、

  • ハードウェアとの連携
  • ローカル資源の活用

を挙げた。一方で、及川氏は「現状、メリット以外にもいくつか課題が見えてきました」と、今後のWebサイトに付随するであろう3つの課題を挙げた。

  • みつけやすさ
  • 再アクセスの容易さ
  • マネタイゼーション

そして、これらを解決するものとして現在開発中のChrome Web Storeを紹介し、プレゼンテーションを終えた。

Chrome Web Storeのデモ。クリック操作でアプリケーションの追加や削除、ファイルの移動などが行える。
Chrome Web Storeのデモ。クリック操作でアプリケーションの追加や削除、ファイルの移動などが行える。

Android

Androidの話題に登場したのは、さまざまなWeb標準技術の策定にも関わり、今年までOracle、そしてSunで活躍していたTim Bray氏。

Googleデベロッパー アドボケイト、Tim Bray氏
Googleデベロッパー アドボケイト、Tim Bray氏

現在、PCだけではなくモバイルからのインターネットアクセスが増えている状況や、iOS(iPhone)の普及に見るスマートフォンの伸びを数字とともに紹介し、⁠Androidの端末はまだまだ登場してきてからあまり時間が経っていないが、これから爆発的に増えていくだろう」とコメントした。

さらに、Androidの新機能として、

  • Market search suggestions
  • New "similar" tab in Market display
  • Comments visible in Market publiser site
  • Error reports in Market publisher site
  • Android Market licensing server
  • Unbundled apps.(Gmailなど)
  • Cloud to Device messaging.(Chrome to phoneなど)
  • Tethering and portable hot spot

の8つの機能の他、エンタープライズ向け機能の強化について説明をし、さらにOMRONやモトヤフォントとのコラボレーションなどを紹介した。

最後に「Androidは急速に成長しており、日本でも受け入れられています。これからもさらに進化していくでしょう」と述べ、発表を終えた。

Cloud Platform

最後のCloud Platformに関しては、GoogleディベロッパーアドボケートのFred Sauer氏が登壇し、Google App EngineおよびGoogle App Engine for Businessに関する事例と取り組みを紹介した。

Googleデベロッパー アドボケイト、Fred Sauer氏
Googleデベロッパー アドボケイト、Fred Sauer氏

まず最初に、日本におけるGoogle App Engineの成功事例として、

  • エコポイントのサイト
  • mixiアプリ(mixiFESアプリ)

の2つを紹介した。どちらも、予測できないトラフィックに対して柔軟かつ安定した稼働を実現するプラットフォームとして、Google App Engineが活躍とのこと。

さらにこれからの展開として、エンタープライズでのクラウド利用の軸となる、Google App Engine for Businessを紹介した。Fred氏は「現在IT投資における60%がメンテナンスに使われている。これからはその部分をイノベーションに回すべきであり、そのためにGoogle App Engine for Businessが役立ちます」と、Google App Engine for Businessの利用想定シーンと狙いについて、デモなどを交えながら説明を行った。

Google日本語入力Cloud API

以上、3テーマの説明を終えた後、再び及川氏が登場し、同日発表となった、

  • Mozc(Google日本語入力のオープンソース版)のMac OS版
  • Google日本語入力Cloud API

の2つを紹介した。とくに、Google日本語入力Cloud APIは、これから外部サイトでGoogle日本語入力を利用できるようになるというもので、さまざまなシーンでの利用が期待できる。

コミュニティドリブンのイベント

以上、技術的内容のプレゼンテーションが終わった後、最後に、Googleシニアデベロッパー プログラムエンジニア 石原直樹氏が登場した。石原氏は日本で開催されたGDDすべてに関わっている人物で、GDDを支えている。8月に米国本社へ移ったのだが、このイベントのために帰国したそうだ。

Googleシニアデベロッパー プログラムエンジニア 石原直樹氏。今回を含め、日本で開催されたGDDすべてを見てきた人物だ。
Googleシニアデベロッパー プログラムエンジニア 石原直樹氏。今回を含め、日本で開催されたGDDすべてを見てきた人物だ。

石原氏は冒頭で、⁠GDDの特徴の1つはデベロッパのためのイベントであるということです。そのため、参加にもDevQuiz(プログラミングに関するクイズ)という、GDDならではの応募方法を採用しており、非常に良い形でのレジストリが行えていると思います。そして、今回はそれをさらに良くするべく、top-favorites、nextgenerationという2つのカテゴリを設けました」と述べた。

これは、Googleではコードを書くことだけではなく、そのコードをレビューしてもらう(見てもらう)ことを重要視していることに起因するもので、いかに多くの人に見てもらえるコードが書けるかを意識してもらいたく、設定したそうだ。また、これからを担う若手エンジニアの育成という観点から、nextgenerationというカテゴリは設置されている。

最後に、⁠参加した皆さまには、自分のコーディングスキルを上げるだけではなく、そのコード良くするにはどうするか?次世代を育てるにはどうするか?を考えながらGDDをたのしんでいただきたいです」とコメントし、基調講演を締め括った。

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