プライベート、パブリックのクラウドを管理するmyCloudの可能性とは
2011年6月8日、米国ニューヨーク州ニューヨーク市のJavits Centerで行われた「Cloud Computing Expo 2011 New York」(以下Cloud Expo)の一角を貸し切ってマルチクラウド管理ツールを提供しているRightScale社の「RightScale User Conference」(以下RS Conf)が開催されました。
RS Confは参加無料のRightScaleに関わっている人たちのための情報交換の場として毎年開催されており、今年で第4回目になります。
「Real Cloud Experience. Shared.」と題して、RightScale社からはプロダクトマネージャー、開発者やマーケティング、RightScaleと提携をしているクラウドベンダー、RightScaleを実際に利用しているエンドユーザの3者が交わり、より良いクラウド構築について学び、議論する場になっていました。
Cloud Expoとは違い、ラフな格好をしている参加者が多く、各セッションとも多くのユーザが発表者の説明に耳を傾けていました。
RS Confのスポンサー企業には、IaaSサービスを提供しているパブリック・クラウドのAWSや、プライベートクラウドを構築提供しているCloud.com、Eucalyptus、NoSQLを提供しているCouchBaseなど多くのクラウド業界のトッププレイヤーが協賛していました。
本イベントには事前登録者が700人以上登録があったそうで、CEOのMichael Crandell氏のイントロダクションには250人以上が参加がありRightScaleに熱い関心と注目が行っている事を実感しました。
エンタープライズでのクラウド利用のモチベーションは?
調査会社のフォレスター社のクラウド業界状況分析に関する発表は、驚きと発見が多く、米国企業は日本よりもダイナミックに、より意欲的にクラウドに移行しているのかと思いきや、ITレガシーを抱えている企業にとってはクラウドの移行にすら戸惑っている、という発表もありました。
現在の米国IT業界では、「クラウドとは何か?」という定義付けは終わり、「どのベンダーを使えばクラウド化できるのか?」というクラウド業者の選択に頭を悩ませているようです。
企業がクラウド化するときに大事な点として、なぜクラウド化したいのか?と自分のモチベーションを理解する事が大事であると説明していました。クラウドを使うことで、外注のようにコストを下げたいのか、それともビジネスの柔軟性を達成したいのか、達成したい事が違うとクラウドの使い方も変わってくると指摘していました。
またクラウド提供者のクラウドそのものをよく理解することも必要であると付け加えていました。クラウドをよく理解することで、クラウドをどのように自社の中に取り込む事ができるか、イメージができ、より良くフィットした形で利用することができると強調していました。
そして最後にクラウドをエンタープライズとして利用する際は、外部企業やクラウド提供者の協力を得る事が大事であると締めくくっていました。
クラウドへのシルクロード
RightScale利用企業による事例紹介では、実際にRightScaleを使って案件を行っている4社(アメリカ3社、イギリス1社)から、会社でのクラウドの位置づけ、どのようにしてRightScaleを使ってより業務の効率化を行っているか、の発表がありました。
Amdocs社のGali Reznik氏の発表では、エンタープライズをクラウドに持っていくのはそう単純ではなかったと語り、エンタープライズのクラウド化する道筋に関しての紹介もありました。
エンタープライズのアプリをクラウド化する為に超えなければ行けない壁には、セキュリティ、コンプライアンス、アプリの柔軟性、SLAの問題があり、そして何よりミドルウェアがクラウド・フレンドリーではない事も、移行の妨げになっていたと言っていました。
しかし、4社の各発表者が口を揃えて、一見クラウドには不利のように見えるエンタープライズ環境も、それらの課題を乗り越えてでもクラウド化する価値があると強調していました。
質疑応答ではAWSの東海岸で起こった障害についての質問がされ、Pearson社のAndy West氏からはRightScaleを使ってイーストリージョンとウエストリージョンに同じサーバの準備をしていたため、顧客がDNSを切り替える30分ぐらいしか影響がなかった、など障害時の可用性について具体的な対策について紹介がありました。
Free Lunch!
カンファレンス開場では、4種類のランチが振る舞われ、各テーブルでは多くのユーザや、サービルプロバイダーがRightScaleを使ったクラウド化や、課題点などの相談をしていました。
具体的なクラウドの使い方
午後のセッションでは、4つのコースに分かれてトピック毎の講演に行われていました。
コースは基礎、マルチクラウド、事例、ホット・トピックとなっておりユーザは自分のレベルにあったセッションに参加していました。
基礎では
- クラウドへのパラダイムシフト~なぜ今までのやり方は上手く行かなくなるのか~
- クラウドへのイニシアティブ獲得と、普及への敷居を下げるには
- なぜクラウド管理なのか
- アマゾンウェブサービスのセキュリティとコンプライアンスについて(AWS)
と、ITレガシーのオンプレミスをいかにクラウド化すべきかの内容について説明がなされました。
マルチクラウドセッションでは、
- ITランドスケープのクラウドの衝撃
- エンタープライズ対応のハイブリットクラウド技術的戦略(Eucalyptus)
- HAとマルチクラウド環境の構築方法
- マルチクラウドロードマップ: 最大限の利益を出すためのハイブリット環境(Cloud.com)
と、すでにクラウドを使っているユーザ向けに、複数クラウドを使う方法や、プライベート、パブリック・クラウドをいかに効率的に構築する方法についての説明が行われ、とくにCloud Expo中に発表されたCloudStackとEucalyptusを使い簡単にプライベートクラウドを構築、管理出来るmyCloudに関しては多くのユーザから、いつから検証することができるか、といった質問がなされていました。
事例セッションに関しては、
- クラウドでのPHP: 本当に高い可用性を実現するには(Zend)
- 自分のサーバーテンプレートを運用する方法
- クラウドでスケールするSQLとNoSQLデータベースについて(CodeFutures)
- 60分以内でゼロからクラウドへ
と実際の業務事例紹介や、Tipsが紹介され、クラウドでは弱いとされているスケール化するデータベースに関してのCodeFuturesの発表では、立ち見が出るほど多くのユーザが聞き入っていました。
ホット・トピックセッションでは、
- RightScaleでクラウドアプリを最適化する
- エンタープライズ版のSaaSと、アプリケーション管理をクラウドで提供する―事例紹介(Virtual Ark)
- .Netのアプリをクラウドにロンチする
- クラウドでのロードバランサ(Zeus)
サービスをクラウドで運用していった際に突き当たる最適化や個々の言語や構築詳細などの説明が行われました。
世界中から集まったクラウドの仲間
朝9時から始まったRS Confでは、夕方5時半まで行われ、その後はGansevoortホテルに場所を移し、カクテルパーティーが行われました。多くの人がクラウドの今後や、各企業のクラウド化の現状について語り合い、中には商談をしている人たちもいました。
開催日は天気にも恵まれ、夜遅くまで笑いが絶えないクラウド日和になった1日でした。
マルチでハイブリットなクラウドを管理するRightScale
RS Confで発表された資料はSlideShareにアップロードされており、また発表内容は録画されており後日ウェブに公開するそうです。
日本より4年先を進んでいると言われている北米クラウドですが、現在クラウド利用はマルチ(企業、場所)でハイブリット(パブリック、プライベート)クラウドへ進んでいるようです。
日本でも今後クラウド利用が増え複数クラウドを一元化管理したくなる企業が増えると思われます。そのときにはRightScaleなどのクラウド管理ツールが活用されるでしょう。
次回のカリフォルニア州で開催されるCloud ExpoでもRS Confを行う事が予想されます。日本からも近いので、是非参加してみるのはいかがでしょうか。