AWS Summit 2011 New York レポート

パブリック・クラウド大手AWSの快進撃は止まらない、Amazon.comはすべてAWSへ

2011年6月10日、米国ニューヨーク州ニューヨーク市のHilton Hotel New Yorkで行われたAmazon Web Services(以下AWS)が主催する「AWS Summit New York」が開催されました。

前日6月6日~9日はJavits CenterでCloud Computing Expo 2011 New York⁠以下Cloud Expo)が開催され、多くの参加者がCloud Expoに参加後、AWS Summitにも参加、というスケジュールを組んでいたようです。

Cloud Expoにも出展していたAWSですが、AWS Summitが控えているためか、Cloud ExpoブースもDellやRackspaceほどお金をかけておらず、そのかわり申し込み多数の為急遽場所を変更したHiltonホテルにてパートナー企業と、エンドユーザを集めて行うカンファレンスには並々ならぬ意気込みを感じました。

クラウドをナビゲートする
クラウドをナビゲートする

次にリリースする機能はユーザが要望したものを

基調講演を行ったAmazon Web Services社のCTOのWerner Vogels氏は、Amazon のビジネスモデル、ミッション、現在のサービスの利用状況、近年のリリース内容、ロードマップを説明しました。

AWSは、次のGoogleや次のAmazonが、大学の寮から出てくるのを手助けするように、サイズに関わらずビジネスに可能性を与え、開発者にスケール対応したより良いアプリを開発するのを手助けするのがミッションであると語り、パブリック・クラウド提供ならではのビジネスの幅の広さを示していました。

Vogels氏は、基調講演の中で、何度も強調していた点はAmazonは常に顧客の要望や声を聞き、リリースや改善を行っているということでした。東京にデータセンターを開設したのも、多くの顧客から要望が寄せられていた1つだったそうです。

Zyngaなどソーシャルゲーム提供をしている会社が、日本向けのサービスにレイテンシが発生することに頭を悩まされていたそうですが、東京リージョン開設とともに解消することができ、より良いサービスをAWSの上で行えるようになったそうです。

またサービスを開始してから、今までに15回も値下げを行い顧客がより利用しやすいように売り上げを還元してきたと強調しました。

「⁠⁠AWSがもっと高かったらいいのに!』と言う人はいないでしょう?」とVogels氏
「『AWSがもっと高かったらいいのに!』と言う人はいないでしょう?」とVogels氏

2,000人の登録があったAWS Summitですが、基調講演には1,500人近く集まり、Amazonの社風や、今まで行って来た顧客還元に基づいたリリースや改修に耳を傾けていました。

セキュリティ面から検討した結果、AWSに

AWSを使っている顧客の事例紹介では、4社(Alcatel-Lucent社、Medidata社、Vimeo社、NYTimes社)からどのようにAWSを業務に使っているのか、享受しているメリット、今後のクラウド利用についての説明がありました。

Alcatel-Lucent社Allon Gladstone氏がAWSを選んだ理由として、⁠クラウドを見渡した時に、信用できるクラウドの企業としてAWSがそこにいたのと、彼らはサポートが良いことで有名だったので、あまり迷わなかった」と語りクラウドの基盤としてAWSを選ぶのにはそんなに困難ではなかったと語りました。

Medidata社のGlenn Watt氏は、クリニックや病院へSaaSのソリューションを提供をしているため、セキュリティと可用性が重要だったと語り、セキュリティ面から複数のクラウド提供会社を検討した時に、AWSは要望しているセキュリティをすべて、とくにFISMA(連邦情報セキュリティマネジメント法)を取得していたのが決定した理由であると説明していました。

会場からの質問に「なぜ他のクラウド会社ではなくAWSクラウドに移すのか?」という質問に関しては、AWSを選んだ理由として、業界からの高い評価、自分のコントロール配下にある事、透明性、コスト面、多機能、AWSの姿勢、そして何より革新的であると口々に説明しました。

とくに新聞など旧メディアにとって現在のオンラインメディア競争を勝ち抜くためには、すべてのアクションを迅速に、スケールアップ・ダウンを望むときに望む形で行う必要があり、それができるには、革新的でないとできないと回答していました。

質疑応答のマイクには列ができていました
質疑応答のマイクには列ができていました

ランチのお供はAWS事例!

会場では、他のカンファレンスと同様4種類のランチが振る舞われ、各テーブルでは多くのユーザが、自己紹介と共に、クラウドにどのように関わっているのか、またどのようにAWSを使っているのか話し合われ、北米でのAWS利用についてのユーザの生の声を知ることができました。

ホギーとポテトチップ、リンゴ、クッキーでした
ホギーとポテトチップ、リンゴ、クッキーでした

ブースエリアにはAWSのパートナー企業22企業がブースを並べ、エンドユーザに商品やサービスの紹介を行っていました。

AWSとRightScaleを使いサービスのクラウド化を手助けするDatapipeや、モバイルメディアを配信するJuly Systemsなど、すでにAWSを使ってサービスを提供している方々と、サービス詳細や、実際にどのようにAWSを使っているかという詳細を得ることが出来ました。

朝と午後にはコーヒーとクッキーが振る舞われました
朝と午後にはコーヒーとクッキーが振る舞われました

いかにしてAWSを使ってDRやHA、セキュリティを行うか

午後には「Navigate the Cloud」の題に沿って、トラックを3つに分け、Trailhead、Base Camp、Guidedとユーザのスキル、AWS利用別、また興味別にセッションが用意されていました。

Trailheadでは、クラウドをどのようにして業務内に引き込むか、クラウド流アプリの設計の仕方、クラウドで一番懸念点として挙がるセキュリティについて説明がありました。Base Campでは、AWSをある程度使って来たユーザに対して、より良くAWSを使う方法や、高い可用性を保つ構成についての発表がありました。Guidedでは、AWSのソリューションプロバイダーによるAWSをより良く使うサービスや商品の紹介が行われました。

EC2で乗っている3大データベース
EC2で乗っている3大データベース

AWSのMatt Tavis氏のアプリケーションセキュリティのセッションでは、IaaSの部分でのセキュリティはAWSが行い、その上のアプリケーションやミドルウェアのセキュリティ担保はユーザがやる、Shared Securityという考えのもとやっている、何もかもすべてクラウド提供者に依存するのではなく、ともにセキュリティを高めたより良いサービスを一緒に構築しよう、と説明をしていました。

また、クラウドのセキュリティに関するセッションでは、AWSで取得したセキュリティなどに関する認定書や、第三者による証明書などについての説明を行い、クラウド、特にAWSは、高いセキュリティとコンプライアンスを保っていることと説明していました。

AWSが取得したセキュリティ
AWSが取得したセキュリティ

ECサイトのAmazonはすべてAWSに

最終基調講演では、Amazon.comディレクターの Jon Jenkins氏が、Amazon.comが辿ってきたシステム的な道のりとAWSの関係性を語り、少しずつ移行してきたAmazon.comのAWS化がついに完了したことを発表しました。

2010年11月10日に移行完了し、Amazon.comに来たすべてのリクエストはすべてAWSのEC2から返されているそうです。

Amazon.comは世界最大ECサイトであり、そのECサイトがパブリック・クラウドに乗っているということは衝撃的な事実であり、この発表によって日本でも個人情報を抱えるECサイトなどがクラウド化する後押ししてくれるのではないでしょうか。

6億以上の過去の購入履歴をS3に
6億以上の過去の購入履歴をS3に
JJことJon Jenkins氏
JJことJon Jenkins氏

北米のパブリック・クラウドの6割を占めるAWS

当日参加者にはAWS Summitで発表された資料が全部入っているUSB形式のカードが配られました。20USドルのクレジットも入っており、PCに挿し込むと、資料とAWS Summitのフィードバックを送るフォームが表示されます。

残念ながらMacのUSBには少し大きく、手持ちのMac Book Airには挿さりませんでした。

USBの資料以外にも、動画とスライドが一緒になったデータがアップロードされており、基調講演、Base Camp、最終講演を見ることができます。

北米ではパブリック・クラウドの約6割を占めていると言われているAWSですが、現状に甘んじることなく、顧客のフィードバックを大事にし顧客が求めているもの、AWSとして返還できる物は資料でもコストでも可能な限りやろう、という姿勢を感じ取ることができました。この姿勢が好きでAWSを使っている業者も多いのかもしれません。

日本では2011年3月に東京リージョンができたばかりですが、クラウド業界の盛り上がりや、日本でのAWSのエコシステムが徐々に成形されつつあり、また雇用も積極的に行っているようです。

北米と同じように、そして北米6割シェアという看板に気負うことなく、AWSの日本市場での快進撃はこれからも続くでしょう!

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