3月16日、明星大学(東京都日野市)にて行われた「オープンソースカンファレンス2012 Tokyo/Spring」内において、「日本OSS貢献者賞・日本OSS奨励賞」の授賞式が開催された。
日本OSS貢献者賞(以下、貢献者賞)はOSS開発の振興を図ることを目的に、影響力のある開発プロジェクトを創造・運営した開発者や、グローバルプロジェクトにおいて活躍する卓越した開発者、OSS普及への貢献者を表彰するもの(2005年度に創設、今年で7回目)。
また日本OSS奨励賞(以下、奨励賞)は、過去1年間にOSSの開発や普及に顕著な活躍をした個人ないしグループを表彰するもの(2009年に創設、今年で3回目)。日本OSS推進フォーラムが主催している。今年度の各賞の受賞者は次のとおり(敬称略)。
貢献者賞 | 川口耕介 |
平松雅巳 |
法林浩之 |
森啓介 |
奨励賞 | 井上敬浩 |
木下靖文 |
福森匠大 |
矢倉大夢 |
山本祐介 |
下北沢オープンソースCafe |
Sinsai.info開発者、ボランティア一同 |
日本Rubyの会 |
授賞式では、貢献者賞受賞者によるこれまでの活動を紹介するプレゼンテーションも行われた。
Linuxのカーネルの動作を記録する機能「カーネルトレーサ」の開発に取り組んだ平松氏は、構想からカーネルに採用されるまでの5年間の活動を紹介。同じようにアップストリーム活動(OSSなどに自ら考えた機能を標準機能として組み込むよう働きかける活動)を行う人たちに向けて、「あきらめず続けること」「ほかの技術者と一緒に考えること」「必要なら今の実装にこだわらず一から考え直すこと」「夢中になること」が大事だとアドバイスを送った。
続く法林氏は発表の冒頭で、自身のことを「口でOSSに貢献した男」と自虐的に評価し会場の笑いを誘った。自らが受賞した理由として、「OSSの活動には開発以外にも多くの仕事があり、ソースを書く以外にも貢献できることはある。自分の場合はそれがしゃべることだった」と述べ、「コードが書けなくても卑屈になることはない。自分ができることを考え実践してほしい」と呼びかけた。また、みんなが苦手とするイベントのまとめ役などを引き受けてプロジェクトを推し進めたことや、自分の取り組みを積極的に発信したことを挙げ、本当は自分のことを「口ではなく、行動でOSSに貢献した男」と思っていると結んだ。
最後は森氏の発表。HAクラスタソフト「Pacemaker」におけるパッチ投稿や安定版メンテナとしての活動を紹介した。海外コミュニティでの活動では、議論は英語で行うといってもコミュニケーションの基本は日本語と同じだという。日本特有の要求などは受け入れられないこともあるが、理解を得るために理由や根拠を説明することが重要だと説いた。また、技術者同士なら技術で語り合い相手に「わかっているな」と思わせたり、メーリングリストの相手を理解するために一度は顔を合わせたりすることも海外コミュニティ活動では大切だと述べた。
式の最後に受賞者と関係者全員で記念撮影を行い、授賞式は幕を閉じた。