地元中国企業の台頭と市場の広がりが感じられたGMIC

昨年に続いて、中国北京で5月10日と11日に開催されたモバイルインターネットのイベント、GMICに参加してきました。

昨年のレポート:
アジア最大のモバイルインターネットのイベントGMICレポート
GMIC会場内の様子
GMIC会場内の様子

昨年から様変わりしたGMIC。地元中国企業の台頭

昨年のGMICでは、日本からはDeNAとグリーがメインステージでキーノートを行い、海外からの登壇者も多く見られました。今年のGMICではノキアがブースを出展していたものの登壇者やノキア主催のセッションはなくなり、昨年登壇していた米モトローラや、ソニーエリクソンは不在、地元中国の低価格スマートフォン端末メーカーとして知られるXiaomi社のCEO雷軍(Lei Jun)氏がキーノートを行っていました。

Xiaomi社CEO雷軍氏のキーノート
Xiaomi社CEO雷軍氏のキーノート

DeNAとグリーは今年もブースを出展し、イベントの後援もしていましたが、登壇者はいませんでした。もっともDeNAは当初、代表取締役の守安氏が登壇予定となっていましたがコンプガチャ問題への対応のため直前でのキャンセルとなったようです。

DeNA:中国での提携先の91.comとの共同ブース
DeNA:中国での提携先の91.comとの共同ブース
グリーのブース
グリーのブース

こうした海外企業に変わって会場で存在感を示していたのが、携帯用ブラウザアプリを手がけているUC Webやアプリストア事業を手がけるSkymobi、そして前述したXiaomiなどの地元の中国企業。

変わったのは登壇者の顔ぶれだけではなく、昨年であればパネルディスカッションで中国人と海外の人が一緒に登壇していた場面で英語で話していた中国人エグゼクティブも今年は中国語で話すようになり(昨年、今年とどちらも同時通訳が用意されていましたが⁠⁠、イベントにブースを出展している企業で配布されるパンフレットも昨年は英語でも用意しているところがかなり多かったものの、今年はほとんど中国語のみとなり、参加しているスタッフも英語が話せる人が少なくなり中国語しか話せない人が多くなっているという印象を受けました。

これはイベントの運営が中国企業よりになったということかもしれませんが、そうした影響を省いて考えてみても地元中国企業の勢いが感じられました。またモバイルインターネット市場が中国市場全体で成長し、国内市場での動きやビジネスが活発していることで相対的に海外プレイヤーの存在感が減少しているのでしょう。

爆発的に増加を始めた中国のスマホ市場

実際、中国でのモバイルインターネット市場の成長が、イベント登壇者が発表していた数値の中でも顕著に現れていました。

とくに加熱しているのが日本同様、スマートフォン市場の急拡大です。日本でもPocket Wi-fiのメーカとして知られるHuaweiは昨年2千万台のスマートフォンを出荷。今年は6千万台のスマートフォンが出荷されると考えており、来年には1億台に達すると見込んでいるとの発表が行われていました。

Huawei社の発表資料
Huawei社の発表資料

またモバイルブラウザを手がけるUC Webによると、2011年に中国のAndroidユーザ数が前年の10倍に増加。そして今年は2億人を超すとみているとのことです。

また同じく地元企業であるXiaomiは低価格なAndroid端末を販売することで、この中国でのスマートフォン普及を後押ししています。中国で販売されているスマートフォン端末は一般的に4,000元以上、日本円で50,000円以上するのですが、Xiaomiが今年5月に販売した端末はその半額の1,999元。それでいて4インチの液晶と800万画素のカメラがついており、機能的には申し分なくバッテリの色まで拘っているお洒落な端末です。

この端末は5月に限定15万台が先行販売されたのですが、販売開始から13分で売り切れ。次の出荷が3週間待ちという状態となっています。

インド市場を視野に入れている中国企業

冒頭で中国の地元企業が躍進しているとお伝えしましたが、ここでその中でもとくに会場で目立っていたUC Web社とSkymobi社について簡単に紹介してみたいと思います。

UC Webはモバイルブラウザを手がける企業で、Operaなどが競合となる企業です。日本ではまだほとんど知名度がありませんが、すでにスマートフォンでも月間ユーザー1億人を超えるブラウザアプリに成長しています。Androidであれば、デフォルトでブラウザが使えますのでわざわざブラウザアプリをダウンロードする必要性を実感することができないかもしれませんが、UC Webでは様々なカスタマイズがユーザーの手によって可能となっており、ブラウザの表示速度など地元中国でサービスを展開しているが故の強みがユーザに受けているようです。中国ではAndroidのブラウザPVのうち40%超のシェアを占める程になっています(Baidu社による2011年第3四半期のモバイルインターネット市場動向調査レポート調べ:Androidに元から用意されているネイティブブラウザによるシェアはUC Web同様の約40%、そして約10%がTencent社のQQ Browserとなっています⁠⁠。

国内だけでなくインドでもUC Webは成長を続けており、すでに総ユーザの25%がインドとなっておりまた元々インド市場でも強かったOperaブラウザと肩を並べるシェアを占めるようになってきています。⁠新興国では全般的に回線速度が遅いことから、Operaなど低スペックのデバイスでも高速表示を可能とするブラウザが広く使われています。)会場では、Vodafoneインド社との提携が発表され、さらにCEO自らインド市場の開拓を進めていくことを発表していました。

UC Web CEOの?永福(Yu Yongfu)
UC Web CEOの永福(Yu Yongfu)氏

また、UC Webの広告事業を手がけるパートナーとしてはインドのinmobi社の名前が挙っていました。政治的な理由によりGoogleが中国マーケットに入れない状況が続いていますし、インド市場でも存在感をあげていきたいUC Web、逆に中国への展開を進めていきたいinmobiの思惑が一致した結果だといえます。

もう一社、Skymobi社はフィーチャーフォンを中心にアプリマーケットを展開してきた会社です。中国ではGoogleがアプリマーケットを展開できないため、各社がアプリマーケットを展開し数十のアプリマーケットが入り乱れている状況となっています。会場ではSkymobi社がこうしたAndroidのアプリマーケット市場に進出するためのアプリストアの立ち上げが告知され、また全国に1万店舗のアプリ販売のための実店舗を展開していくという野心的なプロジェクトも発表されていました。

Skymobi社CEO、宋涛(Michael Song)氏によるAndroid向けアプリストアの発表
Skymobi社CEO、宋涛(Michael Song)氏によるAndroid向けアプリストアの発表
Skymobi社によるアプリ販売のリアル店舗のイメージ
Skymobi社によるアプリ販売のリアル店舗のイメージ

オンラインではなく、オフラインのストアというのは奇妙に感じますが、中国での携帯のデータ通信料というのは一般消費者にとってはかなり高額なため、通信費をかけずにアプリを購入できる実店舗での販売というサービスが成り立っています。こうした動きは中国だけではなく、他の新興国でも見られるようになるかもしれません。

Skymobi社のブース
Skymobi社のブース

GMICの会場ではこのように中国を抜き世界最大の人口となり、先進国よりも中国に近い市場と捉えることもできるインドという国に中国の各社が注目し、既にビジネスの展開が始まっているのを実感することができました。政情的には対立がないとはいえない両国ですが、ビジネスにおいては中国、インド双方にお互いの市場を機会と捉え、動き出しています。

来年のGMICでは中国でのスマートフォン市場の拡大や、ローカルプレイヤーの成長、そして中国市場から新興国中心に海外展開を進めていく各社がどのような様相を見せているのかを知ることができそうです。

GMIC会場を巡りながらサービスの告知を行うキャンペーンガール
GMIC会場を巡りながらサービスの告知を行うキャンペーンガール

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