2013年5月16日、ホテル日航東京(東京都港区)において、Dell Softwareパートナー・イベントが開催されました。
日本クエスト・ソフトウェアが「デル・ソフトウェア」に
このイベントを主催するデル・ソフトウェア( 株) は、2012年までは日本クエスト・ソフトウェア( 株) として、「 NetVault Backup」「 vRanger」などのデータ保護をはじめとする数々のソフトウェア製品を販売してきました。2012年9月に米国Dell社が米国Quest Software社を買収したため、日本クエスト・ソフトウェアも2013年2月1日に、社名をデル・ソフトウェアに変更しています。
またDellは、Quest Software以外にもKACE社、SonicWALL社といった企業を買収し、戦略的に製品ラインアップを拡大してきています。こうした背景のなか、イベントが行われた2013年5月16日、デル・ソフトウェアはソフトウェア事業のさらなる拡大のため、取り扱うソフトウェア製品のポートフォリオを拡充することを発表しました。新たなポートフォリオでは、クエスト・ソフトウェアの製品群に加えて、Dellが買収したKACE、SonicWALLなどのソフトウェア製品群が加わります。
これまで日本クエスト・ソフトウェアと協業し、同社のソフトウェア製品を販売してきたパートナー企業は、今後は、Dellが用意するパートナープログラム「PartnerDirect」に移行して、同社の製品を販売していくことになります。
今回のイベントは、パートナー企業向けに「PartnerDirect」プログラムと新たな製品ポートフォリオを発表、説明するとともに、デル・ソフトウェアとパートナー企業との関係をより一層深めることを目的にして開催されました。
「パートナー企業とともに」Dellのソリューション戦略
イベントの第1部では、まずデル( 株) の代表取締役社長、郡信一郎氏から、Dellの今後のソリューション戦略について発表が行われました。
Dellと言えば、コンシューマ向けのPC販売にあるように、直販でのビジネスモデルのイメージが強いです。しかし、郡氏は「ワールドワイドのDellの戦略においても、パートナー企業との協業によるチャネル販売は最重要の位置を占めている。日本においても日本のパートナー企業とともにビジネスを加速していきたい」と言います。
実際、Dellはグローバル市場では2007年から、日本国内では2008年からパートナープログラムを開始しています。案件登録システムを導入したり、契約形態を見直したりといった改善も次々に実施しています。
郡氏は「これまで築き上げてきた関係は今後も末永く継続させていきたい。また今までの関係で満足しているだけではなく、さらに発展させるべくDellは努力していかなければならない」と述べました。
この考えは、米国本社とも一致しており、そのことは郡氏が紹介した創業者マイケル・デル氏の次のメッセージからも読み取れます。
「今やパートナーとのビジネスはDell全体の成長戦略を描くうえで非常に重要な要素となっています。事実、Dellで急成長している法人ビジネスの1つがパートナー企業とのビジネスです。( 中略)エンドユーザが種々のITソリューションから、何を欲し、望んでいるのか、これに応えるパートナー企業の見識、洞察力に大きな価値を見いだしています。エンドユーザの成長、そして成功を実現するとき、パートナー企業の成長、成功が達成され、そうして初めて、私たちDellもその成長、成功を享受できるのです。」
写真1 郡信一郎氏
日本での成功のカギはチャネル販売
続いて、デル・ソフトウェアの代表取締役社長バスター・ブラウン氏が登壇し、日本における事業戦略について発表しました。
Dellは製品を販売していくうえで、非常にユニークな販売モデルを持っていると言います。すなわち、直販、dell.comによるeコマース、パートナー企業を介したチャネル販売の3つです。これによって幅広い顧客にアクセスできるというわけです。
直販モデルは、従来からDellが築いてきたモデルで、グローバルで2万2,000人が営業に携わっており、このうちの600人が日本での営業に携わっています。この直販により同社は顧客と深い関係を持つことができているとのことです。eコマースのdell.comでは、毎年5億人のユニークユーザがアクセスしており、新規の顧客を獲得する貴重な機会になっているようです。さらにパートナー企業によるチャネル販売が加わることで、より幅広い顧客にリーチできるようになっているとのことです。
デル・ソフトウェアのビジネスは、現在のところほぼ100%がパートナー企業経由のチャネル販売となっています。ブラウン氏はパートナー企業とのチャネル販売を重視しており、この関係を変える計画はない、と言います。これからもこのエコシステムに投資することでパートナーの成長とともに、さらにビジネスを加速していくとの考えです。
これまでのパートナー企業との関係について、ブラウン氏は「私たちの戦略は、新たなパートナーを開拓するよりも、まずは既存のパートナーに投資することで成長を加速していくこと。デル・ソフトウェアの基盤はまさにパートナー企業。パートナーなしでは日本における私たちの存在はありえない。これまでもパートナーの成功によって、SonicWALL、KACE、Quest Softwareの成功はもたらされたわけですから」と発表を締めくくりました。
写真2 バスター・ブラウン氏
イベントではその後、アジア・パシフィックチャネル&アライアンスディレクターのゲーリー・キングスレー氏より、新しいパートナープログラム「PartnerDirect」についての説明が行われました。PartnerDirectには、「 Dell Registeredパートナー」「 Dell Preferredパートナー」「 Dell Premierパートナー」の3つの認定レベルがあり、特別割引やサポートサービス、受注案件の割り当てなど、レベルごとにさまざまな特典が提供されるとのことです。
写真3 ゲーリー・キングスレー氏
データ保護製品「NetVault Backup」「vRanger」の最新動向
イベントの第2部では、デル・ソフトウェアのエンジニアからデータ保護、データベース管理、Microsoft移行/管理、パフォーマンス監視などの各種製品の最新動向についての発表が行われました。その中から、データ保護製品の発表についてレポートします。
データ保護については、同社のテクニカルサービスマネージャの下館英之氏より「NetVault Backup」と「vRanger」について発表が行われました。
写真4 下館英之氏
NetVault Backupは、小規模から大規模環境まで幅広く使えるバックアップソフトウェアで、Linux市場では10年連続で50%以上のシェアを持つ製品です。さまざまなOSが混在した環境でも利用できる、簡単にインストール/操作が行える、といった特徴を持っています。
最新のNetVault Backup 9.0.1(以下、NVBU)では、Windows Server 2012とNovell OESを新たにサポートしました(Windows Server 2012は一部制限事項あり) 。また、EMC Data Domain Boostのサポート、NetVault SmartDiskのレプリケーション機能拡張、Dell DR4000(Dell重複排除アプライアンス)のサポートなども行われています。
下館氏がとくに詳細に説明したのが、Data Domain Boost(DD Boost)のサポートです。これはData Domeinにデータを送る際にデータの送信元で重複排除を行えるという機能です。NVBUの特徴的なところは、NVBUクライアントにもDD Boostと通信する機能が組み込まれているところと言います。バックアップサーバからData Damainにデータを送信するときにサーバで重複排除して送信するだけでなく、クライアントのバックアップについてもクライアント側で重複排除したうえで送信できます。これにより、ネットワーク帯域幅とバックアップ時間を大幅に削減した効率の良いバックアップが行えるというわけです。
現在、NVBUのWindows Server 2012のサポートについては、Windows Server 2012をNVBUサーバとして利用できない(クライアントとしてのみ利用可能) 、ReFSファイルシステムには対応していないといった制限付きのサポートですが、2013年の第2四半期中にはフルサポートされる予定とのことです。
続いて説明されたのがvRangerです。これはVMware社のvSphere環境に特化したバックアップソリューションです。仮想マシンのレプリケーションができるのがおもな特徴です。最新のvRanger 6.0では、Windowsの物理マシンにも対応しました。これは、実際の現場ではすべてのマシンを仮想化することは難しく、どうしても数台程度の物理マシンが残るといった状況を想定して追加された機能です。その他、Windows Server 2012の仮想マシンにも対応しました。
今後のロードマップとしては、Data Domain Boostに取ったバックアップデータをレプリケーションする機能「EMC Data Domain Boost Managed Replication」への対応、バックアップサーバとしてのWindows Server 2012への対応などが、2013年中に予定されています。
最後に、デル・ソフトウェアになったことで、新たなデータ保護製品として「AppAssure」が加わったことが紹介されました。物理サーバも仮想サーバも保護が可能で、継続的なバックアップを目的としたソリューションと言います。システムバックアップが取れること、Live Recoveryによるすばやいリストアがきることなどが特徴です。具体的には来期以降の対応になるとのことです。
同社がDell傘下になったことで、AppAssureの例にあるように、今後も新たな製品やソリューションが追加されていくでしょう。事実、第2部の後半では、ファイアウォール「SonicWALL」 、システム管理「KACE」といったアプライアンス製品についても紹介が行われました。これらもDell傘下になったことで新たに加わった製品です。このように新たな製品が増えれば、ますますエンドユーザのソリューション選択の幅が広がることが期待できそうです。