オープンソースが開くIT新時代 ─LinuxCon Japan 2013初日キーノートから

5月29日~31日の3日間、日本では4年めの開催となるLinux開発者のカンファレンス、⁠LinuxCon Japan 2013」が開幕しました(主催:The Linux Foundation⁠⁠。一昨年、昨年は横浜で行われましたが、今年は東京、文京区の椿山荘に場所を移しての開催です。ここでは初日の基調講演の模様をダイジェストでお送りします。

真に創造的なプロジェクトに“ボス”は要らない

初日最初の壇上に立ったのは、例年と同じくThe Linux Foundationの顔、エグゼクティブ ディレクターのJim Zemlin氏です。いつもはさまざまな数字を挙げてLinux、オープンソースの成長ぶりを紹介するZenlin氏ですが、今年は少し趣向が変わっていました。

Jim Zemlin氏
Jim Zemlin氏

“How can you better take advantage of Open Source?⁠⁠どうすればオープンソースの利点をより活かすことができるか?」というテーマが現れたあと、いきなり大きな写真が登場しました。ご存じLinux生みの親、Linus Torvalds氏の写真です。Zemlin氏「皆さんご存じですよね。私もよーく知ってます。この人のボスは、私だからです。⁠笑⁠⁠」

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次に女の子の写真を出して「私の娘です(笑⁠⁠。私は彼女のボスでもあります」と続けます。⁠この2人に共通する点は何でしょうか? それは2人とも愛らしいこと、天才であること(笑⁠⁠、そして私の言うことをまったく聞かないところです(笑⁠⁠」

Jimの言うことを聞かない2人
Jimの言うことを聞かない2人

Zemlin氏は「でも創造性を発揮するには、それはいいことです」と続けます。そしてLinus氏が2001年に書いた自伝『それがぼくには楽しかったから』⁠Just for Fun)のタイトルを指して「これこそがまさにオープンソース開発の原動力になる」と説きます。

少し前に米国でベストセラーとなったビジネス書『Drive』⁠Daniel H. Pink著:邦訳『モチベーション3.0⁠⁠)によると、クリエイティブな成果を挙げるためには、通常の仕事のように金銭的に成果に報いる方法はむしろ逆効果になるという実験結果が出ているそうです。⁠誰かに指図されたりせず、自分のやりたいことができる環境に置かれて、人は最大限の創造性を発揮する。Linuxのようなオープンソースプロジェクトはそのようにできている」⁠Zemlin氏)

Zemlin氏はこのほか、成功するクリエイティブなプロジェクトに必要な点として「夢を大きくしないこと」⁠すべてを人に与えること」⁠計画を持たないこと」⁠いい人でいようとしないこと」⁠自分たちのプロジェクト外から情報や成果を積極的に取り入れること」などを挙げました。どれも一見、通常の企業でやっていることとは真逆です。⁠いい人~」については、たしかにLKML(Linuxカーネル開発者のメーリングリスト)にときに罵声が飛び交うのはよく知られています。自分を取り繕うことなくディベートすることが、Linux発展の原動力のひとつである点はうなずけますね。

Zemlin氏は「OSSプロジェクトに最も重要なのは、メンバーの自発的なクリエイティビティを最大限に発揮させること。そのためには⁠ボス⁠は不要なのです」と話を結びました。

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