2013年7月28日に大岡山・東工大蔵前会館で開催された「第一回 納涼もんご祭り」の模様をレポートします。
納涼もんご祭りとは
このイベントは、MongoDBやNoSQLのことを広く知ってもらおうと、日本MongoDBユーザ会(MongoDB JP)が開催したものです。MongoDBに興味がある技術者からそうではない一般の方まで、広くさまざまな人たちが集まり交流することを目的としています。
会場には、小さなお子様からプロレスラー、MongoDBの開発元である10genの中の人まで、延べ170名を超えるさまざまな方々に足を運んでいただきました。
ここからはイベントで行われたMongoDBに関するセッションと、展示ブースの様子をお届けします。
開会式
イベント開幕の挨拶では、MongoDB JPの代表・窪田さんが「今後ともMongoDBの普及に貢献するべく、翻訳、出版等をしていきたいと思っています。MongoDB JPのメンバーは現在絶賛募集中です」と述べ、共催の鈴木さんの「MongoDBは、本当にエンタープライズ領域で使えるのかという、"渡り"の時期にある。ここからがまさに重要な時期だ」という言葉を皮切りに、第一回 納涼もんご祭りは開幕となりました。
セッションの内容
セッションは2つの会場で行われました。その中から、私の参加できたセッションの内容をお伝えします。
MongoDBの魅力を北米に住む人の視点から解説
1994年に北米に渡り、北米企業の日本への進出をサポートする仕事をしている鈴木逸平さんから、「 米国におけるMongoDBビジネスモデル」のタイトルでお話をいただきました。鈴木さんはMongoDB JPの副代表(アドバイザー)でもあり、MongoDB開発元の10genとの交渉や協力関係の構築を行っています。
鈴木さんによると、現在北米でMongoDBの良さが大きく評価され、さまざまな北米企業で採用されているとのことです。その理由として、性能と高可用性の確保が容易であるのもさることながら、どこに行っても必ず耳にするのが、「 使いやすい」というフレーズで、コミュニティが活発な理由の原点もそこにあるとのことです。セッションの後半では、北米企業でのMongoDBの採用事例を紹介していただきました。
MongoDBの障害復旧の実演セッション
MongoDB JP代表の窪田さんより「実演!MongoDB障害運用」と題して、MongoDBの障害時の動きを解説していただきました。
セッションの前半でMongoDBの哲学やレプリカセットに関する基礎知識について解説し、後半では実際にMongoDB JPの公式Webサイトの裏で動いているMongoDBを1台、2台と落としていき、復旧させる様子を紹介しました。
また、完全にデータを削除してしまった場合に、バックアップから簡単にリストアする様子も実演しました。
MongoDBに対する会場の率直な声を引き出すセッション
「日本のMongoDBビジネス事情」と題し、今回のイベントのディレクター・福崎さんと、小笠原さんの取り仕切りで、MongoDBに対してどう考えているか、率直な声を会場から聞き出そうというセッションが行われました。
「MongoDB のどこが良いか?」という質問に対しては、「 やはり何よりもスキーマレスであることが使いやすい」という声が上がりました。
逆に「MongoDB を実際に仕事に使おうとしたとき、何が問題になるか?」という問いには、「 トラブルがあったとき、サポートはどうするのか、と内部で必ず聞かれます」と、ありそうなシチュエーションが出てきていました。
他にも、MongoDB開発元の10genのサポートが受けられる「MongoDBの商用サポート」に関して、「 どういうものか知らない」「 存在を知らなかった」「 知ってはいるが1番低いサポートレベルでもそれなりに高い値段だった記憶がある」等の声が上がり、更に「日本でのMongoDBのビジネス展開に足りないものを1つあげるとすると?」との質問に対しては「知名度がないこと」という鋭い意見が飛び出し、MongoDB普及にあたっての課題が見えたセッションでした。
その他のセッション
この他にも、別の会場でさくらインターネットの社長・田中さんによる基調講演、野村総合研究所の渡部さんによる「MongoDB の位置づけとユースケース」 、キッチハイクの藤崎さんら3名による来場者参加型の「MongoDB チューニンガソン on AWS」 、「 丸の内MongoDB勉強会 in 納涼もんご祭り」等のセッションが行われました。
さくらインターネットの社長・田中さんによる基調講演では、進撃の巨人ロゴジェネレータ に代表される、田中さんがこれまで趣味で作ってきたロゴジェネレータシリーズの裏のDBをMongoDBに移行した事例が紹介されました。生成された画像数はすでに700万近くになっており、MySQLではレンジサーチが遅くなっていたためMongoDBに移行したところ、スループットが2~3倍向上したとのことです。また、移行についても1日で完了したとのことでした。
チューニンガソンでは、Amazonの好意で提供されたEC2インスタンスが参加者全員に割り振られ、MongoDBのチューニングを競いました。
また、丸の内MongoDB勉強会からは、MongoDBのホスティングサービスを本番環境で使ってみた報告が発表され、シャーディングができなかったり、誤請求が生じたりといろいろとあったものの、ホスティングサービスの提供側がMongoDBに精通していたので困った時に相談できたり、細かな監視ができたり、すぐに利用開始できたりと、メリットも多くあることが発表されました。
盛り上がりを見せた展示ブース
今回のイベントでは、MongoDBに関連する企業ブース、一般人ブース、お子様向け開発体験ブース等、さまざまなジャンルのブースが出展しました。
イベントを応援するためにプロレスラーが駆け付けたブースまであり、多くの個性的なブースが展開されました。その様子を写真でご紹介します。
OpenStandia ブース
野村総合研究所OpenStandiaのブース(写真左) 。日本で唯一MongoDBの有償サポートサービスを提供しているとあって、盛況な様子でした。MongoDBの開発元である10genのマーケティング担当の方もブースを訪れ、真剣に商談をしている場面がありました。
一般人ブース
企業ブースがほとんどを占める中、「 一般人」という括りで出展していた唯一のブースです。ブースの主は写真右側に写る松江さんで、NASAハッカソンで開発した「ソーラーパネルを設置すべき地域をレコメンドする」Webアプリを展示していました。
NASAが提供する1TB、1億レコードの天気統計情報をすべてMongoDBに入れ、晴れる確率の高い地域をヒートマップで表示し、ソーラーパネルを設置すべき地域をレコメンドしてくれます。MongoDBの地理空間インデックス機能を最大限利用し、高速にデータ検索・抽出を行っているとのことです。
なお、写真左の方は今回のイベントで司会を務めた私市(きさいち)さんです。
eZ Systems Japanブース
ノルウェーのeZ Systems ASの日本法人eZ Systems Japanのブースです。今回のイベントで、どこよりも強く、華やかな印象を残したブースです。
eZ Systems Japanの社長・服部さんからのつながりで、大日本プロレスのプロレスラー、アブドーラ小林さんと腕相撲対決が出来る異色のブースとなっていました。実況・解説もそれぞれ本職の方で、山口雅史さん、柴田惣一さん、イラストレーターのメソポ田宮さんらが来ておられました。
腕相撲対決にはお子様からお年寄りまでさまざまな方が参戦し、ある時は腕に覚えのあるSEさんと本気の勝負を繰り広げる一幕もあり、一緒に記念撮影をするなど、納涼もんご祭りを大いに盛り上げていました。
お子様向け開発体験ブース
サイバーエージェントグループのCA Tech Kids社のブースです。普段、小学生向けのプログラミング入門キャンプを開催している同社が、納涼もんご祭りに来たお子様向けにゲーム開発を体験してもらおうと出展していました。
イベントの後半になるにつれ子供たちの姿が増え、2歳の男の子が実際にゲームアプリを完成させる場面等が見られました。
技術者だけに閉じたイベントではなく、家族も一緒に楽しめて、「 お父さんが仕事で何やってるかわからない」という状態から、もの作りの楽しさを体験しプログラミングに興味を持つまでになる、何とも素晴らしい企画だと思います。
こもれびブース
有限会社KPDのブースです。プリント基板を葉っぱの形に仕立てたアクセサリー「こもれび」が話題となっている同社が、MongoDBのトレードマーク、葉っぱのロゴに関連して出展していました。
プリント基板素材に金属のプリントが美しく施されたアクセサリーで、ものによっては仕込まれた発光ダイオードが光ります。
その他のブース
この他にも、MongoDBクイズを解いてイカ娘せんべいをゲットできるCodeIQブース、10gen社のMongoDBトレーニングコースに日本語音声をあてた「10gen Education日本語化」ブースが出展していました。
また、バックエンドにMongoDBを使った事例を紹介するブースとして、ミライト情報システム、co-meeting、Windows 女子部が出展していました。
また、さくらインターネットブース、NTTコミュニケーションズブースでは、MongoDB をホスティングするクラウドサービスの紹介をしていました。
フィナーレ、閉会
すべてのセッションが終わった後、会場は照明を落とし、本格的なお祭りのムードへ。
最後に閉会の挨拶として、今回のイベントのディレクター福崎さんが「OSSの世界は、技術的に詳しい人たちだけの内側に閉じた会になりがち。そうじゃなくて、大丈夫、面白いらしいよと、家族を誘って一緒に参加できるイベントをやりたかった。周りから開催は無理だ無理だと何度も言われましたが、やりました」と清々しい笑顔で語りました。
また、MongoDBについて、「 私は、現在は"素人の時代"だと思っています。私個人の意見ですが、MongoDBは素人が使えるものだと思うんです。スキーマレスとか、やっぱり使いやすい。では"素人"って何でしょうか。ある分野ではプロフェッショナルでも、他の分野では素人ってことありますよね。そうした素人でも使える下地を提供するものとして、クラウドサービス等があると思っているんです。NoSQLならMongoDBかなと思っています」と述べ、最後に「今日はまったく違う分野の方と話せたと思います。貴重な経験だと思うので、ぜひそれをご自身のビジネスに役立てていただければと思います」と語り、イベントを締め括りました。