2013年11月30日、HTML5コミュニティ「html5j」が主催するWeb技術者のためのイベント「HTML5
Conference 2013」が開催されれた。オープニングセッションでは、慶應義塾大学 環境情報学部 村井純教授、
グーグルの及川卓也氏、html5jコミュニティを率いる白石俊平氏がそれぞれ登壇し、この1年で起こった技術やコミュニティの変化を振り返った。その中から、今回は村井純教授が語ったインターネットの歴史から見た日本のIT戦略の話をレポートする。
2013年6月14日、日本のIT戦略に1つの変化が起こった。それは、「世界最先端IT国家創造宣言」の閣議決定だ。これまで、日本のIT戦略は、総理大臣と各関係大臣、村井氏らが参加する「IT戦略本部」によって決められていた。村井氏はこの変化について、「日本のIT戦略が閣議決定されたということは、インターネットはすべての分野に貢献するという意味の裏付けでもある」と話す。
「インターネットはすべての分野に貢献する」とは、具体的にどのような意味か。例えば、医療。次の写真は、3Dプリンタで作られたギブスである。
患者の腕を3Dスキャンし、スキャンデータを基に3Dプリンタで印刷する。この方法を使えば、プロの医療従事者が作成するギブスと同等、あるいはそれ以上のものができるという。また、足をけがしてしまったアヒルに、3Dプリンタで作った足を付けるというようなことも行われている。こういったことが、安価で、いとも簡単にできるような世の中になってきている。「今、医療業界は大変な盛り上がりをみせている。しかし、この流れは医療に留まらないだろう。近い将来、3Dプリンタのインクの中にRFIDを入れ、シリアル番号を管理するなんてこともできるようになる。すると、物流のコントロールが可能になる」(村井氏)。
インターネットの歴史を振り返ると、90年代は技術やビジネスを作る時代だった。しかし、今では、インターネットがつながることは当たり前、速くて当たり前の時代になった。そして、個人がスマートフォンを持ち、多くの人がそのスーパーコンピュータを毎日使う。
村井氏は言う ──「インターネットを作った当初は、グローバルスペースしかなかった。だが、今のインターネットにはローカルスペースがある。『近所のラーメン屋』などの情報も、今では当たり前の情報だ。他にも、昔はなかったものがある。ソーシャル、パーソナル、モバイル、双方向、ビッグデータと、インターネットの姿は確実に変化している。次は、どんなインターネットを作るのか。その夢を、私は『世界最先端IT国家創造宣言』で語っている。
私はまだ、このインターネットの世界に参加する。世界最先端IT国家創造宣言にある夢を、7年先の2020年に向けて実現する。今日、このイベントに来て、これだけの若いエネルギーがあることがとても心強いと感じた。ここにいる皆さんは、7年後に向けてどのような目標を立てるだろうか」(村井氏)。