埋もれるデータをクラウドに飛ばせ! HapyrusあらためFlyData Inc.が日本でも本格始動

「我々の使命はデータのインテグレートを安く速く大量に、かつ安全に行うこと。データの分析よりも、世界中の企業に眠れるデータを正しい形で統合することを目指していきたい⁠⁠ ─⁠─1月9日、シリコンバレーに本拠を置くビッグデータベンチャーHapyrus Inc.の創業者 藤川幸一氏は東京・渋谷で行われた同社の製品戦略発表会でこう発言しました。この日をもってHapyrusは「FlyData Inc.」に社名を変更、同時に日本法人の設立とリアルタイムデータ同期サービス「FlyData Sync」を発表し、日米二極体制で新たなスタートを切りました。

発表を行う藤川幸一氏
発表を行う藤川幸一氏

gihyo.jpではこれまで二度に渡って藤川氏にインタビューしてきました。

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また藤川氏らHapyrusスタッフによる連載Amazon Redshiftではじめるビッグデータ処理入門AWS・Amazon Redshift Monthly Updatesを掲載していることもあり、Hapyrusのビッグデータ技術、とりわけAmazon Redshiftに関する技術力やサービスレベルの高さをご存知の読者も多いかと思います。そのHapyrusがFlyDataと社名を変え、新サービスを携え日本市場に本格展開すると聞き、同社は何を目指そうとしているのか、発表会の内容をもとに紹介します。

RDBMSからRedshiftにリアルタイムデータ転送「FlyData Sync」

まずは、新サービス「FlyData Sync」について。このサービスは、既存のRDBMS上にあるデータをAmazon Redshiftにリアルタイムで送信することができるデータ結合サービスです。同社はもともと「FlyData for Redshift」という、ログファイルからRedshiftにデータローディングを行うサービスを提供していますが、FlyData SyncはFlyData for Redshiftの一機能として利用することができます。当面はMySQLのみのサポートとなりますが、今後はOracleやSQL Serverなどにも対応予定とのこと。ここ数ヵ月に渡って複数のユーザ企業にベータ提供しつつ検証が行われてきたサービスですが、満を持しての正式ローンチとなります。

「RDBMSから直接ログデータをRedshiftに送りたいという、ユーザの強いニーズに対応したサービス」と藤川氏は説明していますが、RDBMS上のマスターデータとクラウド上のログデータのリアルタイム統合というニーズは今後ますます高まると思われます。オンプレミスからクラウドへのログデータ転送を得意としていたHapyrusが、RDBMSデータとの統合に力を入れるのは自然な流れといえますが、既存RDBMSからクラウドへの継続的なリアルタイムデータ送信を可能にしたことで、より大量のデータをより速くクラウド上で統合することが可能になりました。

FlyData Syncはログ収集のバックエンドにTreasure Dataが開発するOSS「fluentd」を利用していますが、今後はAWSが昨年11月に発表したストリームデータ分析サービス「Amazon Kinesis」の採用も検討しているそうです。⁠fluendとKinesisを使ったサービスのAPIをそれぞれ公開し、ユーザに選んでもらうことも検討している」と藤川氏。現段階ではMySQLからRedshiftへ送るという限定的なソリューションに過ぎませんが、FlyDataはもともと、JSONを扱えたり(RedshiftはJSONを扱えない⁠⁠、オンプレミスのデータ収集にすぐれているなど、ユニークな強みを数多く備えているインタフェースですから、今後はより大きなビジネスへと発展していく可能性を十分に感じさせます。

ミッションをより明確に社名で表現「FlyData」

もうひとつの大きな発表であるFlyDataへの社名変更は、企業として非常に大きな決断だったと思われます。藤川氏はその理由について「日本でも米国でも、誰が聞いてもすぐに理解してもらえる名前にしたかった。社名と機能を一緒に覚えてもらうための変更」と語っています。以前のインタビューで藤川氏は「Hapyrusの"H"はHadoopから取った」と話してくれましたが、Hadoopベンチャーとしてスタートした3年前とは、世の中もHapyrusも大きく変わりました。もはやHadoopを事業の基盤にしていることを強くアピールしても、ビッグデータベンチャーとしての差別化要因にはなりえません。

それならば創業時からミッションとして掲げている「データを正しい場所(=クラウド)に導く」というフィロソフィーをより強く意識させる社名にしたい ─先のインタビューの最後で藤川氏は「Hapyrusが目指しているのはHadoopやRedshiftを使いこなすことではなく、正しいデータ分析の時代を切り拓くこと」とコメントしていますが、メインプロダクトの名前でもある"FlyData"はまさに同社のミッションとフィロソフィーを的確に表現しているといえるでしょう。

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"データ統合サービスを継続的にメンテしていく"

未踏プロジェクトで採択されたビッグデータ技術をもとに、2011年3月にシリコンバレーで起業したHapyrusは、3年を経てFlyDataとして新たにスタートを切りました。これと同時に日本法人(代表取締役は藤川氏)を立ち上げ、国内でのビジネスを本格的に展開すると発表しています。FlyDataはすでにソーシャルゲームやアドテクといった業界で国内ユーザを獲得していますが、日本法人を構えたことで、製造、通信、流通/小売といった国内エンタープライズ企業のニーズを掘り起こしていきたいとしています。今回発表された「FlyData Sync」も含め、FlyDataのサービスは、オンプレミスに大量のマスターデータを抱えながらクラウドへの移行に悩むエンタープライズにこそ適しているからです。

「大量のマスターデータ、ログデータを保有する企業に、現状の課題解決以上の満足を届けたい」と藤川氏は抱負を語っていますが、同社がこだわるのはあくまでも"データを飛ばす"こと、つまりデータ統合の領域です。データ分析については「TableauなどのBIベンダや分析を得意とする企業とパートナーシップを結ぶことで提供したい」⁠藤川氏)としており、現状では「データインテグレーションサービスを継続的にメンテナンスする」ことに最大限注力していくと明言しています。

FlyDataは現在、毎月40%増というペースで成長を遂げており、藤川氏は「ベンチャーだからこそ成長し続けなければいけない。この40%という数字は維持していきたい」と語っていますが、成長し続けなければならないからこそ、現状では手を出さない分野を明確にしているのかもしれません。


筆者はこれまで何度か藤川氏にお話を伺う機会がありましたが、今回の新サービスの発表を聞いてあらためて"Think Big, Start Small"というフレーズが頭に浮かびました。たとえ社名が変わっても、藤川氏とHapyrusあらためFlyDataの創業時のフィロソフィーは変わっていないように思えます。新社名にあるように、ぜひとも日本に、そして世界に埋もれるオンプレミスのデータをクラウドに解き放つサービスをこれからもアグレッシブに提供してくれることを期待します。

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