“Pull Commerce”を目指して
LINE株式会社は2014年8月27日、LINE Showcase 2014 Aug.を開催し、同社のECサービス「LINEモール」の新機軸について、新サービスとともに発表を行った。コンセプトは“つながりによる消費”だ。
今年2回目となるLINE Showcase 2014 Aug.のメイントピックは同社のECサービス「LINE MALL」。「2014年3月にリリースして以降着実にユーザ数を伸ばしている」と述べたのは、同社上級執行役員 島村武志氏。
この5ヵ月間の取り組みや実績をもとにしたEC全般に対する考察を述べ、「これまでのECは検索ショッピング、すなわち“Pull Commerce”」であり、(ECという市場を考えたときの)余白はまだまだ余っているとしたうえで、「LINEが目指すのは、新しいEC、“Push Commerce”」と、次に向けた戦略を述べた。
そして、このあと一気に5つの新サービス・新展開の発表を行っていった。
LINE グループ購入
まず最初に発表されたのは、明日8月28日サービスインとなる「LINE グループ購入」。その名のとおり、LINE上でのグループを通じて、複数名による商品購入が可能となるもの。これにより、1ユーザが特定の商品を買うよりも低価格で購入できる。
さらに、複数の購入者はそれぞれが個別に決済でき、さらに、受取先も個別に指定できるのが特徴だ。
使用するには、誰か1名を通じたLINEのつながりが必要で、仮に同時購入者内にLINEフレンドになっていないユーザ同士が含まれていても利用できる。この点について、島村氏は「もしそこで新しいLINEのつながりが生まれれば、まさに私たちが目指す、つながりによる消費の波及効果だと考えています」と述べた。
LINE ギフト
続いて発表されたのが、「LINE ギフト」。
これは、LINEでつながっている友人にギフトが贈れるというもの。最大の特徴は、贈る相手の住所がわからなくとも、LINE経由で相手を指定でき、受け取る側も住所非公開の状態でも受け取れる点。
また、LINE グループ購入と同じく、複数名で購入し、特定のユーザにギフトを贈る機能が用意されているため、たとえば、会社内、学内などの友人・知人に向けた複数名によるプレゼントも可能となる。
リリースは2014年秋以降の予定。
LINE マルシェ
次は、すでにテストが実施された「LINE マルシェ」が発表された。
これは、LINE MALLと産地直送を掛け合わせたサービスで、生産者と購入者を、LINE MALLを通じてつなげるというもの。たとえば、収穫したての農作物や水揚げされたばかりの水産物を、産地からのベストタイミングで発送し、消費者は購入できるようになる。
リリースは2014年内の予定とのことだ。
LINE セレクト
4番目に発表されたのはリアル店舗とLINE MALLのコラボレーションとなる「LINE セレクト」。この名前は、セレクトショップとのパートナーシップから付けられたもの。現存するセレクトショップの商品を、LINEモール上で購入できるようになる。
今回のShowcaseでは具体的なセレクトショップ名は発表されなかったが、すでに数店舗との交渉が進んでいるそうで、2014年内にはスタートされる予定。
LINE クリエイターズモール
今回最後に発表されたのは、クリエイターたちを支援するためのプラットフォーム「LINE クリエイターズモール」だ。
これは、クリエイターと工場をつなぐもので、クリエイターがてがけたハンドメイド商品を、LINE クリエイターズモールが大量製造できるようサポートするもの。
公開時期は未定となっているが、発表の際に島村氏が述べた「LINE発のブランド」が誕生すれば、新しいEC、製造業の姿が見えてくるのではないだろうか。
改めて“つながり”にフォーカスを当て、新しいECの世界へ
最後に、質疑応答が行われ、同社上級執行役員/CSMOの舛田淳氏も登壇も登壇した。
舛田氏は、これまで開催された「LINEカンファレンス Hello, Friends in Tokyo 2013」や「LINE Showcase 2014 Feb.」で、LINEユーザの拡大を伝える際に必ず“LINEを介したつながり”を何度も強調してきた。
奇しくも今年2014年は日本でソーシャルネットワークが登場してからちょうど10年目の節目の年。mixiやFacebook、Twitterなどのさまざまなサービスが登場し、ユーザを増やしてきた中で、今、後発のLINEはそれらを凌駕する勢いで大きな成長を遂げている。とくに注目したいのは、10年前はまだ子どもでソーシャルネットワークの存在を知らなかったユーザたちが、今はLINEを通じてソーシャルネットワークや、インターネット上のつながりを、自身の成長と合わせて自然に体験していること。まさに、今回の発表のコンセプトとなっている“つながりによる消費”の基礎が整備されてきていると言える。
今回発表された、LINE MALL上のさまざまなサービスや機能は、すでにECを活用している世代はもちろんのこと、これから成長し、ECを一層活用していくであろう若い世代のユーザに響く、大きな可能性を秘めているのではないだろうか。
質疑応答では「今はさまざまな類似サービスがある中、後発として発表したことでどのように差別していくのか」という質問が挙がった際、舛田氏は力強く「LINEであることが最大の差別化要因であり、強み」とコメントした。これからの展開に期待したい。