開発チームから業務チームまで、コラボレーションでハッピーに~企業にあるチームを「JIRA」ひとつに

9月26日、アトラシアンの主催による「JIRA+JIRA Service Deskセミナー」が開催されました。アトラシアンでは、プロジェクト管理ツールJIRAとプロジェクト管理情報ツールConfluenceを中心に、さまざまな連携ツールを提供しています。セミナーでは、⁠JIRA」およびJIRA Service Deskの機能紹介や導入事例、今後の展開などが紹介されました。今回はその模様をお伝えします。

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本社はマリノスタウン

9月26日、アトラシアンの主催による「JIRA+JIRA Service Deskセミナー」が開催されました。アトラシアンは、ALM業界においてマイクロソフト、IBMとともに3大ベンダーのひとつとして知られています。ALMは「Application Lifecycle Management」の略で、業務管理とソフトウェア開発の融合によって、案件管理、設計、実装、検証、バグトラッキング、リリース管理をツールにより促進、統一化を実現することをいいます。

アトラシアンでは、プロジェクト管理ツール「JIRA」とプロジェクト管理情報ツール「Confluence」を中心に、さまざまな連携ツールを提供しています。セミナーではまず、アトラシアンの代表取締役社長であるStuart Harrington氏が挨拶を行いました。Harrington氏は、見た目は外国人そのものなのに日本語が堪能。その秘密は幼少の頃から日本にいたためだといいます。

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2002年にオーストラリアで起業したアトラシアンは、2名のスタッフで初年度18000ドル(約195万円)を売り上げました。それから成長を続け、2014年にはスタッフが1000名になり、売上は約2億1576万ドル(約234億円)に拡大しました。顧客企業は業種や分野に関係なく、4万社を超えています。2013年には日本にも拠点を設立しており、日本国内でのこの1年の伸び率は昨年の倍近くになったといいます。アトラシアンはチームを大事にする会社で、最終的には企業にあるすべてのチームをひとつにし、全員をハッピーにしたいとHarrington氏は述べました。

現在、アトラシアンの日本法人は横浜のマリノスタウンにあり、イタリア料理店のあったスペースに入居しています。看板もそのままなのでイタリア料理店と思ってくる方もいるそうですが、アトラシアンは常にウェルカムなので、遊びに来て欲しいとアピールしました。

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続いて、アトラシアンのセールスを担当しているリックソフトの代表取締役、Atlassianコンサルタントである大貫浩氏が登壇、挨拶を行いました。大貫氏は、⁠アトラシアンはソフトウェア会社ながらセールスを持っていません。説明しに行く人がいないので、私たちが代わりにお客様先へ出向いています」と説明。アトラシアンの製品は、ソフトウェア開発から業務管理に至るすべてのフェーズで全般的にサポートをすると、メリットを強調しました。

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セミナーのセッションは、アトラシアンのテクニカルエバンジェリストである長沢智治氏による「JIRA collaboration without walls~JIRAが引き出す現場力~」で始まりました。長沢氏は、JIRAは131の国の28000社、1千万人が使用しており、最新バージョンは6.3.6になると紹介し、JIRAが引き出す現場力として「これからのチームの課題と取り組み」⁠ソフトウェア開発チームのためのJIRA」⁠JIRA@SCALE」⁠すべてのチームのためのJIRAへ」の4つをテーマにセッションを進めました。

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「これからのチームの課題と取り組み」について、長沢氏は「現場には壁があるものですが、JIRAはコラボレーション機能によって、イシューと呼ばれるアクティビティをマージすることで壁を壊します」と述べました。たとえばデザイナーとデベロッパー、ビジネスの間にも壁ができがちですが、JIRAはそれを壊してコラボレーションを広げていくことができます。そのポイントとして「Faster」⁠Connected」⁠Single source of truth」の3つを挙げました。

「ソフトウェア開発チームのためのJIRA」では、今まではビジネスモデルが決まっていましたが、今ではそれが固まる前にITで加速することができるとしました。これまでのソフトウェア開発は、アイデアに対して企画担当者が企画を行い、開発チームに要求を伝え、開発された機能をソフトウェアに実装するという流れでした。要求に対してソースコードを作成し、ビルドを行い機能化するという開発チームとは壁があったと長沢氏は指摘します。

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ここにアトラシアン製品を導入することで、ひとつのコンテキストに対してそれぞれの部署のビューで管理することが可能になると長沢氏はいいます。これにより、最初のアイデアの部分であるエンドユーザーからのニーズがちゃんと反映されているかを把握して作業を進めていくことができます。長沢氏はソフトウェア開発の一連の流れの図に、⁠JIRA」⁠Confluence」Stash⁠Bitbucket」Bambooをそれぞれ当てはめ、⁠Faster」⁠Connected」⁠Single source of truth」の3つのポイントを実現できるとしました。

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続いて長沢氏は、これらのデモを行いました。⁠JIRA」は基本的に、イシューと呼ばれる要件からブレイクダウンした、バグなどのタスクを登録し、条件抽出などを行うことでうまく利用できるようにする製品であると表現します。⁠JIRA」では、要件や新機能、バグ、タスクなどにワークフローを定義することが可能です。

長沢氏は、JIRA Agileというアドオンを使った形で、カンバン方式のタスクボードで状況を表示しました。見方は基本的に列で見ていきます。列には「提案済み」⁠準備完了」⁠開発中」⁠レビュー中」⁠検証中」⁠完了」が表示されており、たとえば「保留」にあるものを「提案済み」に戻すなど、要件の状況を遷移させていくことができます。

タスクはどんどん増えていきますから、それを可視化して条件抽出し、自分に関係のあるタスクのみをこなしれいくことで、気持ち よく仕事ができます。また、進捗状況によって、利害関係者が開発者、テスト関係者、マネージャーなどと変化していきますが、それもすべて可視化できます。

長沢氏は要件の登録も行いました。通常、企画担当者は「JIRA」を見ていられません。それよりも文書で書きます。しかし、⁠JIRA」「Confluence」が連携することで、目的、戦略、仮説、要求を記入していくことで、ドキュメントを編集することなく一括で「JIRA」から作成することができます。 作成すると「Confluence」で管理している企画文書の中にタグがつきます。⁠JIRA」で管理しているユニークなIDなどの情報とともに「提案済み」として全部入ります。企画担当者は企画書から離れることなく開発チームにやりたいことを伝えることができるのです。

タスクボードに戻ると、作成した要件が「提案済み」に表示されます。担当者は、タスクボード上で「保留」に変更するなど意思決定を行っていくことができます。すると開発チーム側は、⁠Confluence」の情報をアップデートすることで、企画書が保留にされたことを確認できます。無駄なコミュニケーションを行うことなく、正しい情報がすべて蓄積されていくのです。

一方で、実施が決まったものは「準備完了」に状況が変わります。この時点でも「JIRA」と開発ツールの連携が優れている点は、タスクや新機能、バグ改修といったレベルで開発エンジニアリングの操作を行うことができることです。長沢氏はgitのブランチの作成を行いましたが、その際にコマンドラインを書いたり、GitHubやStashなどのツールに飛ぶ必要はありませんでした。要件の詳細から「ブランチを作成」をクリックすることで、⁠Stash」による「ブランチを作成」画面に遷移します。ここでブランチごとのビルドが健全かどうかを全部チェックしてくれるのです。

長沢氏はここで「JIRA」の画面に戻りました。するとブランチの状況も更新されています。このようにタスクやバグなどの最新情報を1件1件俯瞰してみることができるのです。同様にテストで失敗したという状況も細かくチェックすることができます。こういった仕組みがない開発現場では、トレースができないので全体の把握が非常に大変になってしまい、⁠とにかく頑張るしかない」といった根性論になってしまうと長沢氏は指摘しました。

また、進捗状況もあやふやなパーセンテージでなく詳細に把握でき、しかも必ず成果物と結びつきます。これはコードレビューや検証、デプロイでも同様です。⁠JIRA」と開発ツールが連携することで、成果物と完全につながった形ですべての情報をトラックすることが可能になる、と長沢氏はまとめました。たとえばロールバックした場合も状況がすべて反映されます。これにより、スケジュールより進行が遅れているワークフローを把握し、スタッフを増員するなどの対応を素早く、しかも「JIRA」上から行うことができるというわけです。

さらに長沢氏は、新たにリリースされた「JIRA Portfolio」を紹介した。これは「JIRA」で複数のチームやプロジェクト全体での取り組みを管理するためのもので、トップダウン計画やスケジュールとキャパシティ管理、遂行中の計画の調整、全体を俯瞰した進捗の可視化などに適しています。統一タイムラインの表示や戦略的投資の把握も可能です。

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そして「JIRA@SCALE」として、⁠JIRA」の3つのプランを紹介しました。⁠JIRA」には、オンプレミスの「JIRA Server⁠⁠、クラウド環境に「JIRA Cloud⁠⁠、さらにデータセンター「JIRA Data Center」も登場しました。これにより、自由にスケールが可能になっているほか、データセンターを使用して会社全体でひとつの「JIRA」を利用することも可能になっています。

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「すべてのチームのためのJIRAへ」については、⁠JIRA」の導入によって「ソフトウェアチームを加速」⁠チームスケーリングとJIRA」⁠あらゆるチームで」の3点を挙げました。特に「あらゆるチームで」では、⁠JIRA」の活用事例としてヘルプデスク、組織改善(めやす箱⁠⁠、有給管理システム、承認システム、調達システム、マーケティングシステム、資産管理システムなどに活用されているとしました。

さらに導入事例として、⁠JIRA」で3200万ドル以上のIT資産を追跡した資産管理としてのケースや、⁠JIRA Agile Kanban」で求人管理を可視化したケース、⁠JIRA Agile スクラム」でマーケティングの運営をタスクボードで可視化したケース、⁠JIRA Service Desk」で25種類のサービスを運営するファイナンスのケースなどを紹介しました。このように、⁠JIRA」⁠Confluence」HipChatといったアトラシアンのソリューションがコラボレーションのプラットフォームとして有効であるとし、セッションを締めくくりました。

2つ目のセッションは、アトラシアンのサポートマネージャーであるAdam Laskowski氏による「Extending JIRA to business teams with ease(JIRAをビジネスチームに簡単に拡張しよう⁠⁠」が行われました。Laskowski氏は、ひとつの会社に平均112の「JIRA Service Desk」が導入されていますが、費用がかかるのはエージェントの25ドルのみで、それ以外のカスタマーは無料で利用できるとアピールし、また多くの業種で活用されていることを紹介しました。

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そして、アトラシアンのチャレンジとして、⁠カスタマーグレードのエクスペリエンス」⁠高速化」⁠ともに良い仕事をする」⁠さらに価値を加える」の4つのステップを挙げました。これをLaskowski氏は自動車に例えました。企業の現状を乗りづらい「古いバン」であるとし、サービスデスクもこれと同じであるとしました。しかし、⁠JIRA Service Desk」を導入することで、まずカスタマーグレードのエクスペリエンスを実現できる。古いバンをピカピカの新車にできるとしました。

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たとえば社内でパソコンが故障したとき、⁠JIRA Service Desk」から修理の依頼を送ることで該当する部署が素早く対応することが可能になります。担当者や発注者は「JIRA Service Desk」上で進捗状況を確認することができ、どのくらいで修理から帰ってくるかなどを把握できます。やり取りはメールで行えるほか、スマートフォンなどモバイル環境から「JIRA Service Desk」にアクセスすることもできます。

次のステップ「高速化」を、Laskowski氏はF1マシンに例えました。それは、高速化をセルフサービスで行うことです。この実現には、ナレッジベースを活用します。たとえば社内のプリンターが故障したとき、⁠JIRA Service Desk」に蓄積されたナレッジベースを参照することで、自分で解決することが可能になります。さらに「JIRA Service Desk」のルールによる自動化機能を活用することで、さらに解決が容易になります。

3つ目のステップ「ともに良い仕事をする」を、Laskowski氏はF1マシンでシーズンをともに戦うピットクルーに例えました。つまり、⁠チームとしていかにがんばれるか」ということになります。このために「JIRA Service Desk」では、コメント、シェア、メンションの3つの機能が用意されています。たとえば、チャットの機能が統合されています。これによりコラボレーションを迅速に行って意思の疎通を行い、プロジェクトを効率化できます。

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最後のステップ「さらに価値を加える」を、Laskowski氏はF1チームがシーズン優勝を勝ち取り、ドライバーやピットクルーはもちろん、チームをサポートする企業やその家族に至るまで、すべての人がハッピーになることとしました。たとえばTwitterを活用することで、レビュー時間を50%短縮したり、エンジニアリングのネットプロモータースコアを18から38に向上することを実現しています。

そしてLaskowski氏は、新バージョン「2.0」がリリースされていることを紹介しました。新バージョンは新価格になったほか、⁠Central Portal」⁠Email Requests」⁠Team Workload」⁠Collaborators」⁠Integrations」といった新機能が追加されています。さらに近い将来には、モバイル向けの「Mobile Experience」⁠Integrated Knowledge Search」⁠Automation」⁠Confluence Question Integration」が提供されるとして、セッションを締めくくりました。

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