2014年10月11日、大田区産業プラザPiO(東京・蒲田)にて、WordCamp Tokyo 2014が開催されました。ここではその模様をお届けします。
今回のテーマは「WordPressのはなしをしよう」と題し、さまざまな立場の方に向けて、多彩なWordPressのプログラムが用意されています。
実行委員長の挨拶で開幕
オープニングには実行委員長の3名が登壇し、今回の見所について紹介しました。
今回のメインステージは2つ
今回、イベント会場に工夫がなされており、ステージは大きく2つに分かれています。1つは「わぷーステージ」、もう1つは「これからステージ」。この2つのステージを使って、2トラックのプログラムが行われます。
習得レベル別に考えるこれからの勉強法と勉強会
これからステージのオープニングは、北村さん、星野さん、羽野さんの3名による「習得レベル別に考えるこれからの勉強法と勉強会」と題したトークセッションです。このトークセッションでは、まず3名それぞれが、WordPressやコミュニティに対する思いなどをふまえた自己紹介を行った後、トークを実施、最後に会場からの質問を受けて、三者三様の体験をふまえた勉強法や勉強会に対するコメントを述べました。
WordPressで作るビジネス
一方のわぷーステージには、海外からのゲスト、HappyTables.comのNoel Tock氏による「WordPressで作るビジネス」と題したセッション。こちらでは、ビジネスユースでのWordPressの強みについて、Noel氏の経験をふまえながら発表されました。
今回のWordCampではこのセッション以外にも海外からのゲストによるプレゼンテーションが予定されいるなど、ワールドワイドな展開となっています。
展示ブースも魅力的
WordCampの特徴の1つが、セッション以外の展示会場に、さまざまな趣向を凝らしている点です。
出張!ジュンク堂
今回もジュンク堂さんから会場限定の書店が出店されています。
今回、技術評論社から10月16日に刊行される『WordPress プロフェッショナル 養成読本[Webサイト運用の現場で役立つ知識が満載!]』が、一般発売に先駆けて先行発売されています。この機会にぜひ!
さまざまなベンダのブースも
さまざまなベンダによるブースも出展されています。
基調講演:アプリケーションプラットフォームとしてのWordPress
午後に入り、今回のWordCampの基調講演「アプリケーションプラットフォームとしてのWordPress」と題した基調講演が行われました。スピーカーはAutomattic社のJoey Kudish氏。通訳には実行委員長の森山さんが務めました。
アメリカ西海岸でのWordPressの状況
技術的な話に進む前に、まず、アメリカではWordPressの活用法が現在どうなっているのか?その点から説明を進めました。
すでにWordPress開発者Matt氏はアプリケーションプラットフォームとしてWordPressを活用してるとのことで、実際に調査した結果によれば、2013年の時点ですでに7%がアプリケーションプラットフォームとしてWordPressを利用しているとのことです。
なぜWordPressをアプリケーションプラットフォームとして使うのか?
続いて、「なぜWordPressをアプリケーションプラットフォームとして使うのか?」というこのセッションの本質に関して、Joey氏自身の考察をふまえて説明しました。
まず第一に、WordPressをアプリケーションプラットフォームとして使う場合、他のフレームワークや言語と統合できるという点が強みになるとのこと。とくに、HTTPリクエストを使って通信できるJSONフォーマットとなっているため、開発の幅が広がるというのが一番の理由と言えそうです。
また、WordPress自体の使命が「パブリッシングの民主化」であることからも、アプリケーションプラットフォームとしてのWordPressへと進んでいくのは自然な姿なのかもしれません。
WordPressをアプリケーションプラットフォームとして使うための2つの方法
次に技術的な内容に話が展開しました。
WordPressをアプリケーションプラットフォームとして使うためには、次の2つの方法があるというもの。
- WordPress.com/Jetpack
- WP-API
1つはJoey氏自身が開発・管理に関わっているWordPress.comのJetpackを利用する方法、もう1つはオープンソースのプロジェクトWP-APIを利用する方法です。WP-APIはもともと学生のプロジェクトだったものという補足もなされました。
Jetpackの特徴
まずは開発に関わっているJetpackに関する解説がなされました。Jetpackの最大の特徴は、多くのメジャーなサービスが使っている点。たとえば、IFTTT、Path、Pocketなど、多くのユーザを抱えているサービスで採用されています。
JetpackのAPIは、当然ですが、WordPress.comやJetpackを入れたブログであれば利用可能で、標準でインストールできるようになっています。また、すべてのリクエストがpublic-api.wordpress.comを介して通信され、さまざまな情報のやりとりが可能となるものです。
この点について「自分のサーバではないところで処理が行われるため、自分のサーバへの負荷がかからないのが強みである一方で、クエリのコントロールや変更ができません」とJetpackのメリット・デメリットを説明しました。
WP-APIとの一番の違いは、認証にOAuth 2.0を使っているそうで、ゴールはwp-adminでできることを、すべてAPI経由でできるようにすることだそうです。
WP-API
次にWP-APIの説明に移りました。
Jetpackと比較すると機能が足りない、事例が少ないなどからコアには入れられていない状況があるとしながらも、現在の開発状況や利用状況を鑑みて、将来的に入れられるようになってほしいとコメントしました。
また、自由にカスタマイズできる点、誰でも自由に使える、完全にRESTfulな操作ができる。といった点はWP-APIとしての強みとも述べています。
オープンソースとしての状況
最後にオープンソースとしての状況について触れました。現在、どちらのAPIもGithub上で開発が進められており、オープンソースとしての開発スタイルは採用しているとのこと。この点について、Joey氏は「(私たちが管理しているという点で)JetpackよりWP-APIのほうが開発の自由度が高いと思われていますが、Jetpackもpull-requestは受け付けていますので、ぜひコントリビュートしてください」と、開発者に向けたメッセージを残しました。
WordPressの未来
まとめでは、Jetpack/WP-API、どちらのチームもお互いのAPIを利用できるように開発している点について強調し、とくに開発者にとっては、より簡単に利用し開発できるようにすることが大切としました。
そしてWordPress自体の将来については「もしかしたら将来的にWordPressをすべてJavaScriptで書き換える日が来るかもしれませんね」とコメントし、プレゼンテーションを締めくくりました。
日本で注目を集めはじめた当時は「ブログとしてのWordPress」だったものが、年月が経ち、技術が進化し、環境が変化したことで「アプリケーションプラットフォームとしてのWordPress」の側面が大きくなってきたように思います。この先5年、10年、WordPressがどのように進化していくのか、期待が高まる内容のプレゼンテーションでした。
会場内全体で交流が深められたイベント
当日はさまざまなセッションの他、会場内にも趣向が凝らされており、初心者も楽しめる会場設計がなされていました。
スタッフ全員参加のクロージング
クロージングでは、実行委員長3名に加えて、今回のWordCampの運営に関わったメンバー総出で締めを行いました。