2014年11月6日、「 Apache CloudStack Birthday Party in Japan」が開催されました。
2012年11月6日はCloudStackがApacheプロジェクトに移管後、初めてのバージョンとなる“ 4.0-Incubating” がリリースされた日です。この日、Apache CloudStackは2歳の誕生日を迎えた、というわけです。主催は日本CloudStackユーザー会(JCSUG) で、会場はCloudStackベースの商用クラウドを提供するシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社のお部屋をお借りしました。ATNDでの登録者数は52名でした。
会場となったシトリックス・システムズ・ジャパン会議室
カジュアルな立食パーティ形式でしたが、そこはエンジニアの集い。CloudStackにかかわる方々からのライトニングトーク(LT)が行われました。持ち時間は5分。途中休憩を挟んでの前後半という形です。
前半、トップバッターとして登壇したのは、JCSUGの会長、大削緑氏。同ユーザ会の活動内容や運営組織の紹介ではじまりました。
JCSUG会長の大削緑氏
2番手はJCSUGの副会長を勤める島崎聡史氏。5分で振り返るJCSUGということで、2010年12月の第1回ユーザ会からこれまで行ってきたユーザ会イベントでの出来事をピックアップ。来場者の方々も懐かしそうに話に花を咲かせます。
JCSUG副会長を勤める島崎聡史氏
ここで、いつもJCSUGを支援くださっている北海道大学の棟朝先生よりいただいた、お祝いのビデオメッセージが上映されました。
北海道大学 棟朝先生からのビデオメッセージ
そしてLTが再開。名古屋支部長の中谷悟氏は自身の最近の活動報告とユーザ会への今後の貢献予定を発表。めだまはOpenVNet (オープンソースの仮想ネットワークソフト)とCloudStackを組み合わせたクラウド構築のお話で、なんとか手動での同居に成功したとのこと。同氏のブログ でOpenVNetのインストールを解説しています。
名古屋支部長の中谷悟氏
2014年9月に発足したばかりの広島支部の支部長、takata yoshitake氏はビデオ会議システムでの参加。同氏はもともと「広島サーバユーザ友の会(仮称) 」に参加しており、ここでの勉強会でCloudStackを取り上げたことから広島支部の支部長を依頼されることになったとか。支部への参加者を絶賛募集中とのこと。ちなみに同氏から会場の皆さんに、CloudStackのハイパーバイザに何を使っているかを質問したところ、KVM、VMware vSphere、次いでXenServerといった様子でした。
同じくビデオ会議システムで参加した北瀬公彦氏からの発表は、CloudStackと自身とのかかわりを追うものでした。2010年当時、シトリックスでXenServerを担当していた同氏は、Cloud.com社のCloudStackとXenServerとを組み合わせて普及させる取り組みからスタート。CloudStackに相当入れ込んでいたようですが、なんとシトリックスがCloud.comを買収。自動的にCloudStackの担当になったそうです。が、今はIBMに転職され、SoftLayerの担当に。「 決して裏切ったわけではありません」と会場の笑いを誘いつつ、SoftLayerとCloudStackの両者が使われている「Zya 」という作曲ゲームを紹介。“ CloudStack on SoftLayer” を流行らせたいと締めくくりました。
大阪支部からは鈴木譲氏が登壇。大阪でのユーザ会の参加者が最近少しずつ減ってきていることが悩みだとか。なんとか盛り上げるようにがんばりたいとのこと。また、国内で唯一CloudStack 4.3が使えるVPSサービスを行っている会社として、奥様が社長を勤めるJoe'sクラウドコンピューティング の宣伝もしっかりとされていました。
大阪支部 鈴木譲氏
ここからはLTの後半戦です。
本日2回目の登壇となる大削氏は、CloudStackのこれからについて自身の予想を話しました。クラウドという言葉がバズワードだった2010年からクラウドまわりの状況を振り返ります。2011年には国産クラウドが台頭、2012年は活用事例が増える一方で、過度な期待に対する幻滅期とも言われていました。2013年になってクラウドファーストが定着、2014年はついにクラウドセントリック(中心的な存在)にシフトしてきたと分析します。今後は、IaaSは画一化が加速し、データとの分離が進む。インフラは仮想マシンとコンテナが利用形態によって適切に選択されるようになる。そしてCloudStackは、今ある機能をベースにじわじわと拡張され、外部アプライアンスや他ソフトウェアとの連携がさらに進むのではないかと予想しました。
NTTコミュニケーションズ株式会社でクラウド・エバンジェリストを務める林雅之氏は、データから読むCloudStackと題して発表をしました。海外でのプライベートクラウドのクラウドOSのシェア(RightScale社調査)やベストオープンソースクラウドプロジェクト(Linux Foundation調査)の結果などから、OpenStackに水をあけられてはいるものの、CloudStackエンジニアは引き続き求められているというデータもあり、またエンタープライズ利用での安定性に対する高評価や国内のCloudStack採用クラウド事業者が低価格なサービスを展開しはじめたことなどを挙げ、これからも存在感のあるプロジェクトでありつづけるだろうと述べました。
NTTコミュニケーションズ株式会社 林雅之氏
CloudStackのコミッター兼PMCメンバーのGo Chiba氏からは、クラウドビルダーのためのDevOpsの提案です。いろいろな要件を突きつけられてむしゃくしゃしたあげくに“ 匠の気まぐれクラウド” みたいな誰も手が付けられないものを作ってしまった……とならないように、同氏は「VMware vSphere+Vagrant+Ansible+Pushover」での構築を紹介。スマホアプリ&サービスのPushover を自動構築の通知に使うところが巧妙です。
CloudStackのコミッター兼PMCメンバーのGo Chiba氏
2014年9月12日にエルピーアイジャパンから発表された「CloudStack技術者認定試験の配信開始 」を受け、同団体の真壁氏と大野氏からのLTもありました。大野氏がお手洗いに行く間、サプライズゲストとしてLPIの本部カナダからお祝いに駆けつけたクラウドスタッ君(LPIのマスコットキャラクター、LPIC君の双子の弟らしい)が登場。日本人特有の英語なまりの日本語で、お祝いの言葉と認定試験への参加を呼びかけて、会場は大いに盛り上がりました。
LPIの本部カナダからお祝いに駆けつけたクラウドスタッ君(LPIのマスコットキャラクター、LPIC君の双子の弟らしい)
最後に登壇したのはクラウド利用推進機構 代表理事の荒井康宏氏。当日頼まれたLTに対し「CloudStackと私」とお題をつけ、これまでかかわってきたオープンクラウド(OpenStack、Eucalyptus、RightScaleそしてCloudStack)の資料などをめくり続けて怒涛の勢いで過去を振り返りました。そして最後には、今後もがんばっていきましょうと(ちょっと強引に?)まとめました。
クラウド利用推進機構代表理事 荒井康宏氏
LTのあとは、バースデーパーティらしくケーキが登場。CloudStackのマスコット“ Cloud Monkey” が大きく描かれたケーキにろうそくが立てられ、来場者が周りを取り囲む中、会長の大削氏が炎を吹き消しました。おいしいケーキをほおばり、ビンゴ大会のおみやげを手にして楽しいバースデーパーティは閉会となりました。