スターウォーズで注目のハードウェアスタートアップ Sphero~B Dash Camp 2015 Fall in Kyotoから

先月、京都で開催された招待制のカンファレンス「B Dash Camp 2015 Fall in Kyoto」にて、Spheroの創業者でありCTOのIan Bernstein氏が参加したセッションに参加してきました。このSpheroという会社、スターウォーズの新作公開を契機にいま一番注目されているハードウェアスタートアップです。このSphero社についてご紹介したいと思います。

中央、B Dash Campに登壇する、Sphero社のCTO、Ian Bernstein氏
中央、B Dash Campに登壇する、Sphero社のCTO、Ian Bernstein氏

スターウォーズ新作に登場するドロイドの玩具ロボットBB-8

いよいよ2015年12月18日に公開されるスターウォーズの新作。この作品に新たに登場するドロイド、BB-8の玩具ロボットの開発協力をしたハードウェアスタートアップがSphero社です。BB-8はスマホのアプリで操作することができる玩具ロボットとして、149.99ドルで発売されています。

Sphero社のBB-8、直販サイト

Sphero社のBB-8、直販サイト

BB-8は回転する球の上に、半円が載ったような形状をしており、スマホで操作できるほか、音声も検知し、自律して動くこともできます。また拡張現実を利用した機能として、ビデオメッセージをドロイドが投影しているような映像をスマホアプリを通してみることができます。

ディズニー社のアクセラレータプログラムに参加したことが転機に

このBB-8の開発を行ったSphero社は、2010年にコロラドにて創業。ベンチャーキャピタルTechStarsの創業者であるDavid Cohen氏からシリーズAで112万ドルを調達。その後、何度か資金調達を行ったあと、2014年にDisney Acceleratorから資金を調達したことが大きな転機となります。

Sphero社、創業間もないころの写真
Sphero社、創業間もないころの写真

ディズニーと出会う前まで、Sphero社はすでに50万個の玩具を販売しており、2,000万ドル近くの売り上げを達成していました。すでに会社立ち上げの段階を超えて順調に業績を伸ばしていたSphero社ですが、ディズニーのアクセラレータプログラムに参加したことがきっかけで、BB-8の開発の打診を受けることになります。

ディスニーアクセラレータープログラム参加の頃のSpheroの様子
ディスニーアクセラレータープログラム参加の頃のSpheroの様子

それまで「Sphero」という名の球型のロボットや、⁠Ollie」という両輪がついたロボットを開発していたSphero社ですが、BB-8は球の上に、半円の頭部が載っているという独特の形状。打診を受けてから最初のプロトタイプはなんと24時間で製作されました。その後、10か月かけて開発が完了します。頭部がありながら、下のボールが回転するというメカニズムを販売価格$149という低価格で実現するのに非常に苦労したそうです。

机の上の右に置かれているがOllie、机の上の左に置かれているのがSphero
机の上の右に置かれているがOllie、机の上の左に置かれているのがSphero

こうした製品が土台となる技術があったとはいえ、これだけの短期間に製作されたのは驚きですが、さらに驚かされるのは、開発中に、このロボットが登場するスターウォーズでの映画のシーンも観る機会はなかったということ。映画と並行して、映画製作の進捗とは独立してBB-8の玩具が開発されることになりました。

BB-8 初期のプロトタイプ
BB-8 初期のプロトタイプ

Sphero社の開発体制

こうして開発されたBB-8は、中国深センの工場で生産されています。日本製の部品もかなり使われているとのことです。Sphero社の従業員数は昨年の時点で約60名。ハードウェア開発に携わったエンジニアの数は7,8名だそう。ソフトウェアのエンジニアは20名ほどと、ハードウェアのエンジニアに対して3倍近い人数のスタッフが関わっているとのことでした。

BB-8を生産する深センの工場
BB-8を生産する深センの工場

蛇足ですが、筆者が現在勤務しているハードウェア関連のスタートアップ、Cerevo社では,各製品に対してハードウェア設計を担当するデザイナー、電気回路を設計するエンジニア、ハードウェアのプログラムのエンジニア、そしてアプリのプログラムのエンジニア、各1名ずつがチームとなり、さらにインフラのエンジニアが複数のプロダクトを担当しているような体制となっており、ハードウェアに携わっているエンジニアに対して、ほぼ同じくらいの割合でソフトウェアエンジニアが携わっています。比較するのもおこがましいですが、両社の間で製品群に違いがあり単純に比較できないものの、どちらの会社においてもハードウェア・スタートアップといえどソフトウェアの開発はかなり重要になっているといえそうです。

Sphero社のIan氏からいただいた名刺。ハードウェア関連の会社らしく、基板を使った名刺でした
Sphero社のIan氏からいただいた名刺。ハードウェア関連の会社らしく、基板を使った名刺でした

ハードウェア関連のスタートアップに注目が集まっている昨今ですが、このSphero社のBB-8の成功を契機に、他のスタートアップでも大手企業との協業が増えていくかもしれませんね。

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