7月6、7日の2日間、東京、虎ノ門ヒルズフォーラムにてOpenStackユーザコミュニティによる年次イベント「OpenStack Days Tokyo 2016」が開催されました。例年OpenStackの導入や運用についての実践的なノウハウを紹介するセッションが並び、今回はとくにクラウドのインフラとしてのOpenStackへの言及が目立ちました。
初日の基調講演では、4月に開催されたワールドワイドイベント「OpenStack Summit Austin 2016」での成果も加え、多彩なスピーカがOpenStackの現状をさまざまな観点から紹介しました。ここではその模様をお届けします。
OpenStackへの日本のコミュニティによる貢献
基調講演冒頭の挨拶に立ったのはOpenStack Days Tokyo 2016実行委員長を務めるビットアイル・エクイニクス( 株) の長谷川章博氏。「 OpenStack Days」は2013年から毎年開催されていますが、このイベント、実は日本(東京)での開催がオリジナルで、今では世界各国のユーザコミュニティにより行われるようになったと言います。今年は22ヵ所で開催。
「OpenStack Days」のこれまでの歩みを紹介する長谷川章博氏
長谷川氏はOpenStack DaysとOpenStackコミュニティのこれまでの歩みを紹介しつつ、OpenStackのユーザ数や利用実績が順調に伸びていることを強調しました。
続いて、OpenStack Foundationの共同設立者でCOOを務めるマーク・コリアー(Mark Collier)氏が登壇、テキサス州オースティンで行われた「OpenStack Summit Austin 2016」の模様を流しながら、ユーザ数がこの6年で100倍になったことを報告しました。とくに日本でも認定OpenStackアドミン制度が始まり、いまやワールドワイドで展開していることを紹介。それはコミュニティが多様性に富んでいるから、と日本のユーザコミュニティに賛辞を送りました。
そしてOpenStack 13番目のリリースとなったMitaka ―これは昨年東京で行われたOpenStack Summitで企画がスタートしたのでこの名前(三鷹)がつけられたそうで、その特徴として「マネージビリティ、スケーラビリティ、ユーザエクスペリエンス」の3つを挙げました。
マーク・コリアー氏
ここでOpenStack Foundationエグゼクティブ・ディレクターのジョナサン・ブライス(Jonathan Bryce)氏が登壇。いきなり「コミュニティに貢献した人」の表彰式が始まりました。
表彰者は3名、酒井敦氏(左から2人目) 、加藤智之氏(中央)は「ダクトテープ賞」 。意味は、ダクトテープのように何にでも役立つ、直せるという意味。そして元木顕弘氏(右から2人目)は「When do you sleep(いつ寝てるんだ) 」賞です
クラウド時代の「LAMP」とは?
この後、コリア―氏はさまざまな例を挙げながら、OpenStackの可能性を紹介していきました。我々を取り巻くIT環境はいま劇的に多様化しつつあり、その中でOpenStackを使うことが一歩先んじるための重要な戦略となること強調します。
OpenStack4つの成功分野、「 エンタープライズ プライベートクラウド」「 パブリッククラウド」「 テレコム & NFV」「 リサーチ & ビッグデータ」
OpenStackベースのパブリッククラウドも世界中で稼働しつつある
また、組織の中でテクノロジを有効活用させるためには、その文化を知ることが必要と語ります。苦労してクラウドを導入しても、それだけではプロダクトができあがるまでのスピードはそれほど変わらず、それに合わせて組織の文化、ビジネスプロセスを変えたところ、劇的に変わったとのこと。
オープンソースによるWebアプリケーションの動作環境として標準的とされる「LAMP」( Linux、Apache、MySQL、PHP)スタックがあります。各階層は、たとえばデータベースにP{ostgreSQLを使うといった形で置き換えも可能です。ではクラウドの場合、このようなスタック構成を考えるとどうなるでしょうか? コリア―氏は「クラウド時代のLAMP」は次のようになると言います。
それぞれは厳密に階層として分かれているわけではなく、重なるレイヤも出てきますが、各レイヤが置き換え可能で協調して便利に使うことができるようになる、これがクラウド時代の標準となっていくと結びました。
協調か死か
基調講演の最後は、このほど合同会社から株式会社となったOpenStackディストリビュータMirantisの日本法人ミランティス・ジャパンの下平 中氏が登壇し、同社の今後の日本での展開について語りました。
米MirantisのCMO、ボリス・レンスキー(Boris Renski)氏(写真) 、日本法人代表の磯逸夫氏が冒頭挨拶
ミランティス・ジャパン 下平 中氏
下平氏はプライベートクラウド導入、運用で生じる問題点のうち、技術的な要因による問題はわずか6%であると指摘、プライベートクラウド構築で重要なのは、事前のコンサルティングから構築プロセスの仕様や運用のモデルを確立させることと語りました。
前出のコリア―氏の「組織文化」の話とも重なりますが、システムのクラウド化と組織や作業プロセスの変革は並行して進めることが成功の鍵のようです。