8月20日(土) ~21日(日) 、早稲田大学理工学部キャンパスにて、Minecraft(マインクラフト)と教育をテーマにしたイベント「MCEdu2016 Final -マイクラ教育の現在と未来 -」が開催されました。MCEdu2016は、子どもに大人気のゲームMinecraft(マイクラ)を教育や学習に活用できないか? という趣旨で開催されているイベントで、今回で3回目となります。この記事ではそのうち、「 マインクラフトで作る夏の自由研究」として小学校高学年向けに実施された2つのワークショップの様子を2回にわたってお届けします。
「マインクラフトで作る夏休みの自由研究」
宮沢賢治の短編童話「やまなし」の世界をマイクラで作る!
21日午前中に行われたワークショップのテーマは「『 想像力で創造しよう!』宮沢賢治の『やまなし』の世界をマイクラで作ろう!」 。これはPlayStation版のMinecraftで遊びながら、夏休みの自由研究の制作にチャレンジすることができるというイベントで、抽選で選ばれた9人の小学校4~6年生が、宮沢賢治の短編童話「やまなし」の内容を、自分で描くことに挑戦するというものです。
「やまなし」は宮沢賢治の短編童話
ワークショップはICT/プログラミングスクール「TENTO」の共同創立者・代表講師、竹林 暁氏が子どもたちとのワークショップを進め、ゲストの小金井市立前原小学校校長 松田 孝氏と共に解説を進めていく形式です。今回はゲストとして、テレビドラマの子役などで活躍している豊嶋花さんも、小学生たちと一緒に参加しました。
子役として人気の豊嶋花さん(写真左)も参加。ワークショップは竹林氏(右)と松田校長がこどもたちの制作進行を見ながら解説を加えていく形式
ワークショップの題材となった宮沢賢治の「やまなし」は、二編からなり、二匹の蟹のこどもが谷川の底で会話している様子が題材となっているごく短い短編童話です。ワークショップのお題となったのは、その前編の「五月」 。蟹たちが「クラムボンはわらったよ」「 クラムボンは死んでしまったよ」などと、正体不明の「クラムボン」についてのやり取りを川底で交わすお話です。小学校の教科書の1つでも40年前から採用され続けている名作ですが、謎が謎のままに終わるので、どのように読み取るかが難しい作品とも言えます。
ワークショップではこのお話を、参加した小学生たちが自由にマイクラ上で形にしていきました。制作時間は約1時間。小学生には少し長丁場ですが、子どもたちは夢中で「やまなし」の制作に取り組んでいました。その様子を見ながら松田校長は、「 普通の授業だと子どもの集中力は5分ともちません。それがマイクラだと45分でも90分でも集中が持続する。その理由は、ひとつにはゲーミフィケーションがあるし、ストーリー性や創造性、仲間といろんなことやるソーシャル性などがあると思います」と語りました。
「やまなし」の内容をマイクラ上に描いていくには、作品を読み込む必要があります。松田校長は「マイクラでビジュアル化することは、登場人物の大きさ、形、色細部にこだわり、どのように形にするかをしっかり考えること。それによって対比されているもの、物語に象徴として現れていることが見えてきたりします。少しでもそうしたきっかけを探りだして自由研究の完成度を高められたらよいと思います」と語ります。
小金井市立前原小学校校長 松田 孝氏
今回のワークショップは科目としては「国語」ということになるのですが、その意義を、竹林氏は「たぶん表現というところが大きいですね」と説明します。「 紙で表現するというのは今までもあった。マイクラでは3Dで作る。個人的に意義が大きいと思うのは、自分で1枚の絵を描くのだけど、実際は一つの大きいキャンバスに描いて、お互いに影響しあっている。それがいいと思います」( 竹林氏) 。
松田校長は、「 ビジュアル化して丁寧に追っていくということがが一番意味のあることだと思っています。物語を読むうえでは視点が大事で、一人称か三人称視点かという分析が重要。マイクラではそれが簡単にできてしまいます。」と評価します。
広大なキャンバスのうえで参加者がそれぞれの作品を作っていく(画面の赤や黒っぽいものがそれぞれ制作途中の作品)
ICTによる教育の変化
松田校長はマイクラによるワークショップを行いながら、「 ICTのようなテクノロジーを使った学びでは、主語に来るのは子どもです。そこがパラダイムシフトだと思います。わかりやすくするためのICTではない。」と語りました。
「こうした学びでは、マインドセットが変わると思います。学習では「楽しい」というのはおかしいという考え方がどこかにある人が多いと思いますが、そうした姿勢を変えていかないといけない側面はあるでしょう。」( 竹林氏)
途中、サーバエラーで制作が少し止まる場面もありましたが、参加者たちは思い思いの「やまなし」の世界を作り上げていきました。
「やまなし」の主人公?蟹の制作にかかる
語り合う蟹の上を魚が泳いでいく
クラムボンを「太陽」と捉えた作品
作った作品はプリントされ、自由研究として紙にまとめられた
日本の教育が変わる第一歩に
松田校長は講評として、「 6年生のやまなしの授業で使ってみようと思いました。作品の中でわからないことはディスカッションして、気になったところをマイクラで作ってやったら、きっと深い学びになると思います。アクティブラーニングとして良い力をつけてくれるのではないでしょうか。マイクラで作品を作り上げる子どもたちのテクニックもすごい。竹林氏が今回のワークショップを日本の教育が変わる第一歩に、と紹介していたが、そうなってもらえたらいいと感じました。」と全体をまとめました。
参加の小学生メンバー、豊嶋花さん(中央)と竹林氏(左端) 、松田校長(右端)