LINE DEVELOPER DAY 2016開催~chatbotのさらなるオープン化、そして新たなMessaging APIを公開、正式提供開始

今回で3回目となるLINE DEVELOPER DAY 2016の焦点は、LINEを軸とした「chatbot⁠⁠。chatbotとは、人工無脳とも呼ばれる会話形プログラムで、4月に開催されたLINE CONFERENCE 2016で発表され、このたび正式公開、そして、開発者向けに提供が開始した。

LINE DEVELOPER DAY 2016
http://linedevday.linecorp.com/jp/2016/

5周年を迎えたLINE、“Closing the Distance”を実現するためのスマートポータル戦略

午前のキーノートのトップバッターを務めたのは、CTOのPark Euivin氏。

LINE株式会社CTOのPark Euivin氏。同社が目指すスマートポータル戦略に向けて、技術的要素を紹介した
LINE株式会社CTOのPark Euivin氏。同社が目指すスマートポータル戦略に向けて、技術的要素を紹介した

今年5周年を迎え、夏には東京とNYCで株式上場したことなど、これまでのLINEを振り返りつつ、LINEが目指す⁠Closing the Distance⁠の世界に向けて、実現するスマートポータル戦略について語った。

同戦略は

  • コンテンツプラットフォーム
  • メッセージングプラットフォーム
  • LINEインフラプラットフォーム

の3つのプラットフォームを基盤とし、それらの組み合わせで実現していくというもの。

スマートポータル戦略を実現するための3つのプラットフォーム
スマートポータル戦略を実現するための3つのプラットフォーム

Park氏は、日本でスタートしたLINE LiveやタイのLINE TODAYなどのコンテンツを拡充するコンテンツプラットフォーム、また、LINE PayやLINEポイントと言ったLINE内の共通価値・インフラであるLINEインフラプラットフォームなどの状況と開発体制を紹介した他、このあとの松野氏のキーノートにもつながるメッセージングプラットフォームの可能性について言及した。

Park氏いわく「豊かなコミュニケーションにより、ユーザの日常がさらに豊かになる」という考えのもと、本日正式公開したLINE BOT Platformや各種拡張機能を紹介した。

そして、LINEの技術的フォーカスとして、⁠ラージスケール」⁠AR/MR」⁠機械学習」など、LINEの強みや研究に注力している分野を取り上げ、これから日本・韓国・中国・台湾、そして、あらたに開いたタイやインドネシアの開発拠点のさらなる強化を誓い、発表を締めくくった。

LINE BOT APIの公開/提供、あらたなMessaging APIを公開

次に、今回のカンファレンスの目玉でもあるMessaging APIを中心とした技術的発表について、サービス開発1室 松野徳大氏が「New world by the LINE BOT」と題したプレゼンテーションを行った。

LINE BOTの新展開について技術的に説明を行った松野徳大氏
LINE BOTの新展開について技術的に説明を行った松野徳大氏

松野氏は冒頭から2つの新機能を発表した。1つは「LINE Notify⁠⁠、もう1つは「LINE Messaging API」である。

発言専用のAPI、LINE Notify

LINE Notifyは、通知API、すなわち発言用のAPIとして機能するもの。開発者は、Personal Access Tokenを発行するだけで、誰でも無料でLINEとの通知連携が行えるようになる。認証にはOAuth2を採用し、HTTPS APIでの通信となる。

発表と同時に、IFTTTと連携している他、GitHubのIntegrationのディレクトリに含まれており、開発者をサポートする。また、実装例の第1段として、サーバ管理・監視ツール「Mackerel」との連携も開始している。

LINE Notify
https://notify-bot.line.me/

chatbotとの会話の敷居を下げる新Messaging API

次に発表したのは、あらたなMessaging APIに関する内容。

今回のMessaging APIは大きく

  • グループへの対応
  • 新メッセージタイプの用意
  • REPLY / PUSH APIの提供
  • の3つの機能が加わる。

    まず、グループへの対応は、今後Messaging APIを利用することで、1ユーザではなく、LINEグループに向けたchatbotの開発・提供が行えるようになる。

    次に新メッセージタイプに関しては「Carousel」⁠Confirm」⁠Button」の3種類のオブジェクトが追加されるようになった。この点について松野氏は「ユーザ側の観点で見たとき、chatbotへ話しかける最初のきっかけは1つの障壁となります。今回の3つのオブジェクトが、ユーザからchatbotへの最初の発言を促進する役割を果たすと考えます」と、これらのオブジェクトの目指すこと・狙いについて紹介した。

    実際にどういうものかについて、グルメサイト「食べログ」のchatbotを例に紹介された。

    「食べログ」のchatbot事例①。左が最初のメニュー画面。ユーザはここで食べたい料理を選び、ジャンルや予算の幅を決める。すると左から2番目の画面となり、カルーセルタイプのサムネイルが表示される。そして店を選びネット予約ボタンを押すと、一番右の画面が表示される。この画面はWebページとなっている
    「食べログ」のchatbot事例①。左が最初のメニュー画面。ユーザはここで食べたい料理を選び、ジャンルや予算の幅を決める。すると左から2番目の画面となり、カルーセルタイプのサムネイルが表示される。そして店を選びネット予約ボタンを押すと、一番右の画面が表示される。この画面はWebページとなっている
    「食べログ」のchatbot事例②。Web予約のタイミングで各種情報入力が必要となるが、LINEが提供するLINE PROFILE+を利用すると、あらかじめ登録していた情報を、LINE APIを通じてWebのフォームへ入力できる(一番右の画面)
    「食べログ」のchatbot事例②。Web予約のタイミングで各種情報入力が必要となるが、LINEが提供するLINE PROFILE+を利用すると、あらかじめ登録していた情報を、LINE APIを通じてWebのフォームへ入力できる(一番右の画面)

    このようにユーザの質問に対し、chatbotがスムーズに回答し、さらにユーザの目的を最短距離で満たせるようになるのが、今回の新メッセージタイプの特徴と言える。

    さらに、特徴的なのは、LINEとBOTをシームレスにつなげる点。先ほどの食べログの例では、ネット予約時にいったんWebページへ飛び、登録情報のみLINEのデータを引用し、Web上で予約を完了してからまたLINEに戻れるといったデータの受け渡しおよびユーザサイドのページ遷移が可能となる。

    3つ目の新機能であるREPLY / PUSH APIについては「これまだにまったくなかった概念」⁠松野氏)とした上で、PUSHはユーザに向けて情報を流すもの、それに対し、REPLYはユーザからの返信という行為を、トークンを発行することで実現するものと説明した。

    とくにREPLY APIについては、発行したトークンに対するREPLYについて、メッセージを出す側(たとえばLINEビジネスアカウントを持っている情報発信者)は、送信料が無料になる。この仕組を活用することで、LINEを通じたマーケティングにおいて大幅なコスト削減も可能となるなど、これからの活用事例の増加に期待が持てる。

    それぞれの新機能の紹介の後、⁠新しいテクノロジー」という観点で、Beaconを利用したLINE BOTのデモが紹介された。今回紹介されたのは、カンファレンス会場で、参加者自身が体験できるBeacon+LINEによるもの。具体的には、会場内3ヵ所に用意されたBeaconスポットを訪れることで、参加者がイベント参加申し込み時に登録したLINEアカウントから各種メッセージが送られ、また、訪問した履歴がチェックされるというもの。

    LINE DEVELOPER DAY 2016アカウントから、Beacon設置場所情報の案内が出る。実際にその場所に行くとメッセージを受信する
    LINE DEVELOPER DAY 2016アカウントから、Beacon設置場所情報の案内が出る。実際にその場所に行くとメッセージを受信する

    そして、3ヵ所すべてを回ると、LINE DEVELOPER DAY 2016限定のLINEスタンプがもらえる、というおまけも付いていた。発表したばかりの技術をすぐに体験できる、というのも今回のカンファレンスの特徴の1つだ。

    LINE DEVELOPER DAY 2016限定で配布されたLINEスタンプ
    LINE DEVELOPER DAY 2016限定で配布されたLINEスタンプ

    LINE BOT AWARDS、今冬に開催

    最後にこうした技術の普及・発展を目指す取り組みとして、⁠LINE BOT AWARDS」が開催されることが発表された。同アワードは、LINEを通じたコミュニケーション、そして、chatbotの特性を活かしたユーザ体験の向上を目指すべく、それを実現するアカウントを開発した開発者を表彰するというもの。

    優勝賞金は最大1,000万円、2016年10月中に詳細を公表、2017年1月上旬に申し込み締切、同2月に結果発表および表彰が行われる予定。腕に自信のあるエンジニアはぜひ参加してもらいたい。

    LINE BOT AWARDS
    https://botawards.line.me/

    以上、LINE DEVELOPER DAY 2016から、午前中のキーノートの模様をお届けした。今回は「chatbot」を中心に、LINEの次の展開に関わる発表が多く行われた。コミュニケーションの主役は当然ながら人間ではあるが、それを、LINEなどの各種技術がどのようにサポートしていくか、また、その結果としてコミュニケーションがどのように変化していくか、引き続き注目していきたい。

    なお、キーノート後、CTOのPark氏に個別インタビューする機会を得た。その模様は後日改めてお届けする。

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