3月11日、TOC五反田メッセ(東京都)にて、クラウドサービスAmazon web Services(AWS)のユーザグループJAWS-UGによるイベント「JAWS DAYS 2017」が開催されました。ここでは実際に参加して気になったセッションをいくつかレポートします。
AWSを使った温暖化シミュレーション!―池上香苗さん
「JAWS-UG うどん県」に所属する池上さんが発表したのは、AWS上で「陸域生態系シミュレーション」をするという試みです。
陸域生態系シミュレーションとは、地球上を細かい区画に分け、植物の葉の面積や炭素量を計算し、未来の地球の植生をシミュレーションするというものです。当初は自宅のWindows上の仮想マシンで実行していましたが、計算が終わるまでに7日ほどかかり、その間に子供が電源を押してしまう事件が何度かあったそうです。「JAWS-UG うどん県」のイベントにてその話をすると、たまたま高額のバウチャーチケットを持っていたメンバーからそのチケットを譲られることになり、AWS EC2の「C4」インスタンスを使えることになりました。これにより、計算時間を3、4日にまで短縮できたとのことでした。
コミュニティで拓く、パラレルキャリアへの道 ―小島英揮さん
7年間アマゾンウェブサービスジャパンでAWSのマーケティング統括を務め、JAWS-UGの立ち上げにも中心的に関わった小島さんが発表したのは、「パラレルキャリア」という働き方についてです。
小島さんは2016年8月にアマゾンウェブサービスジャパンを退社し、今年1月からInstaVR、Stripe、Rider's Garage、EventRegist、Moongiftという5社で、CMOやエヴァンジェリスト、コミュニティマネージャを務めています。これはなにも副業を多く抱えているというわけではなく、「複業」というスタンスで、すべての会社で本業として働いているそうです。小島さんはこの働き方によって、インプットの量、そして外の物差しに触れる接点が格段に増えたと言います。
小島さんが所属する会社は、VR(InstaVR)、オンライン決済(Stripe)などジャンルがバラバラです。しかし、すべてのキャリアで共通して「コミュニティマーケティング」に関わっているということを強調しました。コミュニティマーケティングとは、ユーザコミュニティのメンバーが情報を生み出し、さらにコミュニティが広がっていく流れをサポートすることで、プロダクトを周知させていく新しいマーケティングの形です。JAWS-UGを立ち上げ、コミュニティの強さを知っている小島さんだからこそのお仕事と言えます。
現状、パラレルキャリアを前提とした採用ポジションはまだまだ少なく、自分からアピールしていくしかない状態ですが、ひとつの軸を持ち、多くのインプットがほしい人にはお勧めの働き方とのことでした。
サーバーレスの今とこれから ―吉田真吾さん
昨年10月には「ServerlessConf Tokyo」を主催するなど、日本のサーバーレスの中心人物でといっても過言ではない吉田さん。セッションでは、現在のサーバーレスを取り巻く状況、サーバーレスを導入するにあたってのアドバイスについて話されました。
「サーバーレス」という用語自体は2012年に公開されたブログが初出と言われており、2014年末の「AWS Lambda」の登場によって、広く周知されるようになった開発手法です。本手法では、サーバの立ち上げや運用の大部分を外部のサービスに投げることで、ビジネスに関連するコードの開発に集中できるというメリットがあります。Microsoft Azureの「Azure Functions」やIBM Bluemixの「OpenWhisk」など、AWS Lambda以外のサービスも増えてきており、今もっとも注目されている分野と言えます。
吉田さんによると、サーバーレスにとって重要となるのが、
- AWS、Microsoft Azureといった「プラットフォーム」
- Serverless Framework、AWS Serverless Application Modelといった「開発・運用フレームワーク」
- 実際にサーバーレスな開発を行う「アプリ開発者」
という三位一体のエコシステムです。この内、日本ではまだまだ「アプリ開発者」の数が少なく、情報発信が少ないと、吉田さんは懸念を持たれていました。
セッションの最後では、サーバーレスを導入するうえでの注意点が話されました。サーバーレスは基本的に外部サービス頼りの手法のため、
- 自分自身でそのサービス内部の問題は解決できず、また新機能を実装することはできない
- 突然のサービス終了も十分にあり得る
ということについて考えなければならないとのことです。これら問題については、「できるだけシェアが高いサービスを選択し、そのサービスで用いられている技術をよく理解しておくことが大事」とアドバイスされました。
AWSカルタ・AWS麻雀
休憩スペースでは、AWSの各サービスのロゴが書かれた絵札と牌を使った「AWSカルタ」「AWS麻雀」のプレイコーナーが設けられていました。
AWSカルタでは、読み手の方がサービスの絵札を組み合わせながら、参加者にデザインパターンを提案するということもされていたそうです。
AWS麻雀では、AWSの導入企業から名前を取った「スシロー」「Docomo」といった役があるそうで、牌の組み合わせがそのままその企業のシステムのデザインパターンになっているとのことでした。