今年はQtユーザ向けのイベントである「Qt World Summit」と同時開催となりました。イベントの詳細については公式ページを参照してください。
Contributors' Summit初日は「Qt World Summit」の準備を行っている最中のbcc Berlinにて、2日目は「Qt World Summit」の初日と重なりbcc Berlinでトレーニングを行っている関係で、近くにあるPark Innホテルで開催されました。「Qt World Summit」については後日、別記事で報告させていただこうと考えています。
Welcome Session
まずはWelcome Sessionとして、Qt Community ManagerであるTero Kojoからイベントの諸注意が行われました。その後、Qt ProjectのChief MaintainerであるLars KnollからQtの方向性についての説明がありました。
Qt 3D Studioは、これまでのQtで弱かったGUIで3D UIを作成するためのツールとして大きく期待されています。
簡単なQt 3D Studioのデモの後に、現在の開発状況などが説明されました。
現在のQt 3D Studioは、NVIDIA社の実装をベースとしているため独自の3Dエンジンで動作しています。今はこれをQt 3Dモジュールベースに変更する作業が進められていること、その際にQt 3Dモジュールのパフォーマンスに問題があることが判明したために、その改善作業も行っていることなどが説明されました。
Qt 3Dのパフォーマンス改善はQt 5.9系をターゲットとして行われており、10月の初めにリリースされたQt 5.9.2ではQt 5.9.0に比べてメモリ・実行速度共に大きく改善されたということです。これらの改善結果を踏まえて、来年にQt 3D StudioのエンジンをQt 3Dベースにする予定で開発を進めているということでした。
2D系はQt Quick Designer、3D系はQt 3D Studioとツールが2つ存在する形となりますが、それらの統合については長期的な問題として考えており、まだまだ未定ということでした。現状ではQt QuickからQt 3D Studio、Qt 3D StudioからQt Quickを利用するための最小限の枠組みが用意されています。
Qt Quick Scene GraphはQt Quickのレンダリングエンジンです。Qt 5ではOpenGLを前提とすることでコンパクトで効率的なエンジンを構築し、そのパフォーマンスに大きく寄与しました。
OpenGLベースで考えた際にはQt Quick Scene Graph自体はかなり成熟してきました。しかし、OpenGLが普及してきたとはいえ3D機能やGPUのないローエンドのチップで利用したいという要求が根強いこと、Vulkanに代表される新しいグラフィックAPIへの対応が要望されていることなどから、Qt 6に向けてその構造の見直しが検討されています。
「Qt Contributors' Summit」はここで終わりましたが、多くの参加者は翌日からの「Qt World Summit」にも参加していました。
まとめ
Qtの機能実装的なセッションを主に紹介しましたが、それだけではなくQt Project の Code of Conduct(行動規範)やサンプルの作成のガイドラインなどQt に関する幅広いことが議論されました。
「Qt World Summit」と同時開催と言うことで2日目は KDAB の有力な貢献者達がトレーニングの講師をしていたために参加できていなかったり、部屋の関係で同時に開催されるセッションが多くても3つまでという制限はありましたが、ほとんどのセッションで時間オーバーするほどの白熱した議論が繰り広げられていました。