中国のMakerブーム事情~規模の大きさとハードウェアのレベルの高さが目立つ「Maker Faire Shenzhen」

メイカーズのためのオープンな文化祭

中国のシリコンバレーと言われ、世界最大の電気街⁠華強北(ファーチャンペイ)⁠があることで知られる中国の深セン。そこでメイカーズのためのお祭りイベント「Maker Faire Shenzhen」が11月10日から3日間開催されるということで、初めて会場を訪れてきました。

Maker Faire Shenzhen 2017
http://www.shenzhenmakerfaire.com/
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Maker Faireは、発祥の地であるサンフランシスコのベイエリアをはじめ、世界で200近いイベントが開催され、140万以上の来場者が訪れる人気イベントです。その中でも比較的大規模な開催地は、東京をはじめ33ヵ所ほど(2016年)で、深センはその1つに含まれています。

6回目となる今回は、高度な職業技術を教育する「深セン職業技術学院」を会場に、深センという街のパワーをそのまま感じさせるスケールでの展開でした。構内に入るないなや、正面校舎の壁に貼られた巨大バナーと今回のテーマである「MAKERS GO PRO」というメッセージが目に入り、前庭に飾られたマスコットオブジェや会場へ向かうアーチなど、本格的なディスプレイでイベントを盛り上げています。

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展示ブースのほとんどは屋外テントで、香港の隣に位置する亜熱帯気候なので、11月中旬でも半袖で汗をかくほどの暑さです。そこに、さまざまな電子工作機器やレーザーカッター、3Dプリンターを駆使したガジェットやプログラミングキット、アート作品がずらりと並び、その前にはたくさんのお客さんがひしめいています。

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屋内ではデジタルサイネージやキネクトを使ったインタラクティブなアート作品が並び、ファッションウェアラブルや電動ミシンでマスコットを作るといったコーナーもあります。

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自動折畳み電動スクーターやロボットアーム、鉄パイプ製で人を乗せて動くロボットや木製の垂直離陸型ドローン(VTOL)などは、いずれも体験できるようになっていて、ドローンやロボットで遊べるコーナーもありました。

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企業展示もいくつかあり、今回は地元を代表するエレクトロニクスハードウェア企業のSeeedStudioやその一角を使ってソラコムが出展。東芝メモリのFlashAir、Seed Studioの展示もありました。

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日本からの出展も増加傾向

ユニークなところでは、デジタル版射的屋台のようなシューティングゲームができる移動式トラックというのもありました。支払いもWeChat PayやAlipayなど、スマホアプリでQRコードを読み取って支払うオンラインサービスを利用します。深センでは普通のお店はもちろん、屋台でもスマホアプリを使って支払います。

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宇宙空間での睡眠をサポートする寝袋スーツ「SUITS DRAMZ」は、センサーを使って適度な寝返りをサポートすることができ、マグネットでカラダを固定することもできるそうです。

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個人的に気になったのは、香港のスタートアップが開発しているウェアラブルグラスMAD Gazeの最新バージョン。

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機能は法人向けに販売を今年復活したGoogle Glass 2.0(と呼ばれている)とほぼ同じで、やはり好きな眼鏡にアタッチメントできるのが特徴です。会場ではなぜか「Pi-sen Bord(パイ専ボード⁠⁠」を扱う日本ブースにて、スタイリッシュな眼鏡ブランドで人気のあるFACTORY900とのコラボで展示されていました。いよいよ来年には日本での販売も予定されているそうです。

日本からの出展ブースもあり、メイカーズのエコシステムの著者で、深センのメイカーズ事情に詳しい高須正和さんによると、イベントの参加者も含めてその数は増加傾向にあるのだとか。

今回は、電子工作モジュールの販売で知られるスイッチサイエンス(写真左上⁠⁠、木製プログラミングロボットPETS(写真右上⁠⁠、Maker Faire Tokyoで3Dプリンターとレーザー加工機で作った潜水ヘルメットからシャボン玉が飛び出す作品を展示したのがきっかけで今回招待されたというお台場ダイバーズ(写真左下⁠⁠、DIY女子高生まんが「ホームセンターてんこ」を執筆されているまんが家とだ勝之さん(写真右下)以外にも、いろいろなブースが出展されていました。

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来場者の多数は若い世代と家族連れ

会場には土日の2日間訪れましたが、深センは中国の中では比較的若い世代の人口が多いことと週末というのもあり、両日とも来場者は若い学生っぽい人たちや家族連ればかりという印象でした。子供の教育向けキットのブースも多く、子ども向けの体験型イベントもたくさんありましたが、日本で開催されているMaker Faire に比べると、これはすごい! という展示にはあまり出会えず、VRやAR、ゲームなどのコンテンツがらみの作品も少なかったような気がします。

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アイデアやデザインでは目新しさを感じる展示が少なかったものの、ハードウェアの完成度は全体的に高めで、CESなどの展示会で見かけるプロトタイプレベルぐらいの作品がごろごろありました。そこは、世界最大の電気街で大手メーカ製品で使われているパーツが安く簡単に手に入る環境ならでは。もしかしたらあまりにもメイカーズが日常的過ぎて、イベントならではの手作り感が薄れているのかもしれません。

いずれにしても、昨年は10万人近い来場者が訪れており、今年も最寄りの駅の構内にいくつも広告サインが並ぶほど力の入った人気イベントであることは間違いありません。日本のMaker Faire との違いを強く感じる、深センらしいイベントでありました。

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