アジアパシフィックのPyConユーザのつながりを感じた2日間「PyCon APAC 2019」レポート

PyCon APACとは

PyConはプログラミング言語Pythonに関する国際カンファレンスです。アメリカで開催されるUS PyConや日本で開催されるPyCon JPを含め世界中で開催されています。 そのうちPyCon APACはアジア太平洋地域の広域PyConとして、2010年のシンガポールからはじまり各国で持ち回りで開催されてきました。

PyCon APAC 2019は初めてフィリピンで開催されました。 筆者はこのイベントに参加者としてだけでなく、スピーカー、またスポンサーをしてブース出展をして来たので、イベントの模様をレポートしたいと思います。

PyCon APAC 2019 Webサイト
PyCon APAC 2019 Webサイト

以下はPyCon APAC 2019の開催概要です。

日程2019年2月23日(土⁠⁠、24日(日)
場所フィリピン、マカティ市
会場iAcademy Nexus(Yakal Campus)
参加費2,000フィリピンペソ(約4,300円)
主催Python Phiillines

キーノート

Liew Beng Keat氏によるキーノートは、⁠Back to the Future!」と題して、APAC地域でのPyConの歴史を語るものでした。

氏はPyCon SG(シンガポール)の立ち上げメンバーであり、PyCon APACの元を作った人です。 トークの前半はPyCon SGを開催するまでについて語られました。 そもそも「Pythonに興味ある人はどれくらいいるのだろう?」と思った氏は、Pythonのミーティングを2008年の10月に開いてみました。すると40名以上が集まり、手応えを感じたようです。 そして、PyConを開催してみようと思い、経験のために2009年にシカゴで開催されたUS PyConに参加したそうです。 はるばるアジアから参加したということもあったのか、 PSF(Python Software Foundation)のChairがいろいろと便宜を図ってくれて、PSFのミーティングに参加したり、ディナーに招待されたそうです。

そのUS PyConの経験を持ち帰り、シンガポールの仲間と5人でPythonのユーザーグループを立ち上げ、2010年からPyCon APACをシンガポールで開催するようになりました(ちなみに、その2010年のPyCon APACに日本から参加した4名が、2011年にPyCon JPを立ち上げたメンバーです⁠⁠。その後、PyCon APACは日本(2013⁠⁠、台湾(2014、2015⁠⁠、韓国(2016⁠⁠、マレーシア(2017)と各国で開催され、2019年にフィリピンへと広がっています。

キーノートの後半ではAPAC地域のそれぞれを掘り下げて、各国でどのような活動が行われているかが紹介されました。 各国を紹介するときに白地図のみを表示して「ここはどこか?」という質問をし、正解者にはTシャツなどをプレゼントしていたのですが、最初のシンガポールは誰も当てられないのに次の日本や台湾はすぐに正解が出るということがあり、いろいろと盛り上がりました。

ここでは先に上げたPyCon APACの開催経験がある国の他にもインド、インドネシア、香港、タイ、中国、バングラデシュ、パキスタンが紹介され、アジア中にPyConとPythonが広まっていることを感じました。

トークの最後は「PyCon APAC Now and Moving Fowarding」と題して、PyCon APACはどんどん広がっているので、ぜひボランティアとして運営にも参加してみてほしいというメッセージで締められました。

私自身、日本の他に台湾、韓国、シンガポールのPyConに参加してAPAC地域のPyCon仲間との交流を楽しんできました。さらにPyConが広がって、今回のフィリピンのように新しい国に訪問して、新しい仲間との出会いを楽しみたいと思います。

Liew Beng Keat氏
Liew Beng Keat氏

ライトニングトーク

ライトニングトークは5分程度で短いプレゼンテーションをするセッションです。 多くのIT系のカンファレンスで採用されており、PyCon APACでも2日目の午後に行われました。 いくつか印象的な発表があったので紹介します。

トップバッターはSlack上のbotで自動デプロイをするコマンドを作ったという話なのですが、おもむろに発表者が「この曲が好きなんだ」と言ってミッション・インポッシブルのテーマを流しはじめました。 botに命令を出して、botがbuild、deployなどを実行している間に腕立て伏せをするというパフォーマンスに場内は大盛り上がりでした。 1回目はわざと失敗して、2回目(このときも当然腕立て伏せをしています)は曲が盛り上がり、発表時間ギリギリに成功するという流れでLTとしては100点満点のものでした。 どこにでもLT芸人はいるんだなーと感心した発表です。

腕立て伏せをするLTスピーカー
腕立て伏せをするLTスピーカー

もう1人印象的だったのは、10才の女の子のスピーカーです。 彼女はPythonの他にHTMLやCSS、JavaScriptなども使っているとのことです。 発表の最初はタマゴ型のカプセルにデバイスを入れて、このタマゴをみんなで手渡しするとあるタイミングでゆで上がるというゲームの紹介です。 堂々とした発表にただただすごいなという感想しか出ませんでした。

最年少スピーカーによる発表
最年少スピーカーによる発表

私自身の発表

PyCon APACでは私も発表を行ってきました。 私自身海外で30分以上の発表は初めての経験です(ライトニングトークは経験があります⁠⁠。 タイトルは「Automate the Boring Stuff with Slackbot」というもので、Slack上にbotプログラムを作成して、いろいろ自分の作業を楽をしようというものです。 ちなみにこのタイトルは某書籍のタイトルをリスペクトしたものです。 スライドは以下のリンクから参照できます。

ここでは海外での発表でどのような準備をしたかと、実際に発表はどんな感じだったかについて書こうと思います。 まず、準備としては当然スライドを作ったり、話す内容をまとめたり、練習したりという当たり前のことを行います。 とはいえ、初めての英語発表ということもあり、思ったほど作業がはかどらず、結局発表当日までスライドは完成しませんでした。

発表の前半は「なぜそういうことをするのか」といった動機の話をするところなので、自分的にも英語がすぐに出てきにくいと思ったので、原稿を用意しました。 後半はプログラムの動作やコードの説明をするので、なんとか原稿なしでも説明できたかなと思います(原稿を作る余裕がなかっただけですが⁠⁠。 また、当日午前中は通しで話してみて時間配分の確認や、英語が出てこなくて詰まる部分がないかということを確認しました。

トークの最初に「Slackbotの話をするけど腕立て伏せはしません」とLTの人にかぶせたネタと、⁠私はどこから来たでしょうか?」と白地図を表示するネタを直前に仕込んだところ、いい感じでウケたのでよかったです。 特に白地図を表示したときには「シンガポール!!」とボケ返す人に私が「Noooo!!」と返して、いい感じで盛り上がりました。

発表そのものは、直前のLTが時間が押したため私の発表時間が少し短くなり、少し延長させてもらいましたが、なんとか伝えたいことは発表しきりまし た。 質疑応答もなんとかこなし、終わった後に「発表面白かったよ」と言ってくれる人や「自分もbotを作ってみようと思う」と声をかけてくれる人がいたので、 次の行動につながる発表ができてとても満足です(声をかけてくれた一人は、私の英語のつづり間違いを修正するPull Requestを送ってくれました。恥ずかしい…⁠⁠。

終わった後は完全に燃え尽きましたが、とても楽しく発表することができました。 また次の機会があれば、今回の反省を生かして、よりよい英語発表をしてきたいと思います。

筆者の発表の様子
筆者の発表の様子

ブース出展

PyCon APACでは日本で「Python 3 エンジニア認定基礎試験」を運営しているPythonEDがSilver Sponsorになっていました。 私自身もこの試験のレビューをしたりと関わりがあります。 今回は私がPyCon APACに参加するということがあり、ブース出展をPython EDから依頼されて、カンファレンスの1日目のみブースを出してきました。

このブースではPython EDについて英語で説明したチラシとステッカーをそれぞれ100枚用意しましたが、休憩時間には多くの参加者がブースを訪れてくれて、1日だけで全てを配り終えることができました。

いろいろな人が話を聞きに来てくれるのはとてもありがたいのですが、英語でいろいろな質問に答える必要があるため、とても疲れました。 写真はブースの様子で、右側の人はブースに話を聞きに来てくれた参加者です。

PythonEDブースの様子
PythonEDブースの様子

クロージング

イベント2日目のクロージングではプレゼント抽選が行われました。 このプレゼント抽選ではPython EDブース用に持ってきたマスコットのぬいぐるみ2体とマグカップ2個も提供させてもらいました。

抽選方法はホールの座席全体に番号を割り振り、その番号をPythonのrandom.choice()で選択するというある意味ローテクな方法でした。 席が空いている場合はその横の人が当たり、みたいにすることによりそれほどダレることもなく、サクサクとプレゼント抽選が行われ、なかなか盛り上がりました。

random.choice()で当選者を決めるコード
random.choice()で当選者を決めるコード

PyCon仲間との交流

PyCon参加の醍醐味はカンファレンスそのものだけでなく、そこに参加する人たちの交流にあると思っています。 カンファレンスの夜に他の参加者とお酒を酌み交わしながら、交流することは私にとってはとても楽しみなことの1つです。 また、私はビールが好きなので、せっかくPyConで普段訪れない場所に行ったのであれば、その地域のビールを飲みたいと考えています。 最近は世界的なクラフトビールブームもあり、ご当地クラフトビールが飲めることも楽しみの1つです。

PyCon APAC 1日目の夜は、スタッフとスピーカーのディナーに招待されたので、参加してきました。 イベントの主催者、ボランティアのみなさん、各国から集まったスピーカーで楽しく現地の料理をいただきました。 お酒がなくて、マンゴー、メロン、すいかシェイクしか選べないのは誤算でしたが…。

ディナーでの集合写真
ディナーでの集合写真

1日目のディナーの後は「ビールに行こうぜ!!」と声をかけて、歩いてすぐのビアラウンジSpektralへ移動しました。 25 TAP(25種類の生ビールが提供されていること)あり、国内や輸入もののさまざまなビールがあるいい感じのお店でした。 カウンターをPyCon APAC一行で占領して楽しくビールを飲みました。 私は2日目の発表の準備がまだ終わっていないこともあり、非常に残念なことに2杯飲んだところで店を後にしました。

Spektral Beer Loungeでビールを楽しむPyCon仲間たち
Spektral Beer Loungeでビールを楽しむPyCon仲間たち

カンファレンス2日目では日本から参加したメンバーで集まって写真を撮ったりしました。 ここで初めて会う人もいたりして面白い体験です。

PyCon APACのスピーカーに「Yohei Onishi」という日本人っぽい名前があり、会って話してみると日本出身の方でした。現在はシンガポールで働いているそうです。 Yoheiさんは飛行機の都合で2日目の夕方には移動する必要があるため、写真を撮りつつ「私がシンガポールに行ったときには、また会いましょう」という話をして別れました。

左がYohei Onishiさん
左がYohei Onishiさん

また、カンファレンス終了後に日本からの参加者で集まって写真を撮りました。 左から2人目のnobnovさん「Python mini Hack-a-thon 雪山合宿 2019」で初めて会ったのですが、そこでPyCon APACのことを知って参加したそうです。 中央のtaxfreeさんは完全に初対面。 話を聞いてみると「PyCon Kyushu in Okinawa 2019」のスタッフをやっていて、PyConに参加したことがないので体験するためにPyCon APACに来たそうです。 すごいガッツだなと思いました。

日本から来た
日本から来た

2日目の夜は、日本から参加したメンバーで一緒にディナーをしようということで、Sentro 1771というモダンなフィリピン料理で有名なお店に行きました。 いろいろな料理があっておいしかったですが、フィリピン料理はメニューの名前からはどういう料理かまったく想像できないものが多くて、注文が大変でした。

ガーリックステーキ、とてもおいしい
ガーリックステーキ、とてもおいしい

ディナーを食べた後は、台湾のNoah、韓国のYounggunなどに「私は日本メンバーとディナーに行くので、あとでここで飲もう」と伝えていたThe Perfect Pintに移動しました。 3、4人で飲んでいるかなーと思って行ってみたら、フィリピンのスタッフなどもいて15人くらいの大所帯で飲んでいてびっくりしました。 どこの国の人がいるか聞いてみると、フィリピン以外にも台湾、韓国、インドネシア、インド、タイと国際色豊かでまさにPyCon APACという感じの飲み会です。 飲んでいるときにインドの人に「日本のこいつ知っているか?」と写真を見せられたのですが、それがPyCon APAC 2018のときの写真で「日本人は全員知っているし、そもそもこの店選んだの私だから」という話をしました。世間は狭いと感じました(その写真は「PyCon APAC 2018 in Singapore」参加レポートの懇親会の写真と同じものです⁠⁠。

気がつくとフィリピン勢は全員帰っており(まぁ、スタッフで疲れてますよね⁠⁠、最後まで残ったメンバー(韓国、台湾、タイ、インド、日本)で写真を撮りました。 GREAT TIMES START HERE の文字を背景に、フィリピンでの出会いから新しいすてきなことがはじまりそうです。

GREAT TIMES START HERE
GREAT TIMES START HERE

まとめ

初めてのフィリピンでのPyCon APACは、私にとっても英語でのトーク、ブース出展など初めての体験がたくさんありました。

非常に疲れましたが、とても刺激的で楽しく2日間を過ごすことができました。 海外PyConへの参加は観光旅行とは違い、現地の人や世界中のPythonに興味のある人と出会えるチャンスです。 ぜひ、機会があれば海外のPyConにも参加してみてください。 また、日本で開催されるPyCon JPに海外から参加している人がいたら、ぜひ交流してもてなしてあげられるとよいなと思っています。

See you in PyCon anywhere!

PyCon APAC参加者の集合写真
PyCon APAC参加者の集合写真

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