2019年7月6日、30歳未満のUnder30エンジニアによるUnder30エンジニアのための参加型技術カンファレンス「Battle Conference Under30(BCU30) 」が開催された。
BCU30は、Under30エンジニアによるUnder30エンジニアのためのカンファレンスで、今回で3回目の開催となる。名前のとおり、Under 30(30歳未満)のエンジニア向けのイベントで、対象となる(参加できる)エンジニアが30歳未満なだけではなく、運営の主体がすべてサイバーエージェントの30歳未満のエンジニアで行われている点に特徴がある。
司会を努めた株式会社サイバーエージェント野口忠宏氏(左)と上西達也氏(右) 。会場が元学校施設の体育館ということもあり、時間になると懐かしいチャイムの音が響いた
各スペースでの講演のほか、講演を行った登壇者と直接議論できるブースや誰でも参加できるプログラミングコンテスト、デモ展示やポスター展示など、参加者同士のコミュニケーションを促進するさまざまなコンテンツが用意された。
ここでは、基調講演を中心に、当日の模様をお届けする。
冒頭にて、運営主体の株式会社サイバーエージェントから取締役(技術開発管轄)長瀬慶重氏が登壇。「 10年前では考えられないぐらい良い時代。エンジニアの未来は明るいです。エンジニアとして活躍するために大事なこと、それは飽くなき探究心、好奇心です。今日はぜひ1日楽しみながらそれを探し、多くの仲間を見つけてください」と述べ、3回目のBCU30の幕が上がった
エンジニアとして戦略思考を身に付けること
深澤氏が起業したきっかけ
基調講演は、株式会社AppBrew代表取締役である深澤雄太氏が登壇した。深澤氏は24歳で、3年前に今の会社を立ち上げ、起業から1年後にリリースしたコスメアプリ「LIPS 」が順調に成長している。今回はその経験を中心に「技術にまつわる戦略思考」と題したトークを行った。
自身のエンジニアとしてのキャリア、そして、起業経験から、参加者に向けて「経営目線」の重要性について語った、株式会社AppBrew代表取締役 深澤雄太氏
深澤氏はもともとフリーランスとして、モバイルアプリからフロント・サーバサイド、など自身が持つスキルセットを生かしさまざまなスタートアップ企業の開発に携わっていた。その中で「社会にインパクトを生み出せるプロダクトを作りたい。その最適な手段として起業を選びました」と、起業まえから起業のきっかけについて、その経緯を振り返った。
そして、「 起業後、4つのプロダクトで失敗し、5つ目のLIPSで今の状況にたどり着きました」と、現在までを前提に、本題へと入っていった。
戦略的とは何か?
5つ目のプロダクトをリリースし、深澤氏はこう考えたと述べた。
「 プロダクトを伸ばすためなら何でもやりました。たとえば、エンジニア採用や開発のディレクションといったことから、マーケティング、さらには事業計画作成や資金調達まで、さまざまです」
そして、今、エンジニアに必要なこと、( 自社のエンジニアに)求めることとして
事業成長のために、技術をいかに選択・運用するかがより大切
採用したエンジニアにも指示出しではなく、事業を理解して個々に判断してもらう
を挙げた。これらを具現化する考え方がエンジニアの戦略的思考につながる。
深澤氏は、「 戦略思考とは、経営目線を身につけること」と表現した。その理由として、技術と経済発展は両輪であることを挙げた。つまり、エンジニアは、技術を社会に実装するスキルに加えて、経済発展を支える「経営」の考え方が必須となっていると考えているわけだ。
今は技術の高度化により、経営者側の技術理解が足りないため、それを補うためにも、エンジニアとして経営目線が求められる、と、深澤氏自身の経験と現代の状況をふまえたコメントを述べたのが印象的だった。
では、具体的にどうするのだろうか?
とにかく「目的→課題設定→仮説検証」のフローを、長期的・複合的に高い目線で考え、実践すること(深澤氏)とのこと。
中でも、目的の定め方については、「 世の誰かのニーズを満たすものである必要がある。それがなければ、単に資本主義の考え方に飲み込まれてしまう」とし、世の中のニーズを汲み取ること、そして、それを満たすことで世の中へのインパクトを具現化するために、考えていくことが、結果として戦略的思考につながっていく、と深澤氏は力強くコメントした。
また、技術の位置付けについて「まず仮説(解決策)を考えることが大事であり、技術の出番は仮説のあとです。そして、ただ技術を追求するだけではなく、経済合理性を前提に、その技術をどう活かしていくかを考えることもエンジニアには必要なことではないでしょうか」と、エンジニアでもありながら、経営者でもある深澤氏ならではの見解が、参加した若手エンジニアに伝えられた。
より大きなインパクトを出すためのポイント
最後にまとめとして、どうすればエンジニアとしてより大きなインパクトを出せるかということについて、
とまとめ、深澤氏の基調講演が締めくくられた。
小学生も登壇!年齢ではなく、熱意と技術の重要さも共有
基調講演のあとには、さまざまなセッションが用意され、また、参加者によるプログラミングバトルが開催された。
中でも注目したいのが、小学生のためのプログラミングスクール 「 Tech Kids School 」から小学6年生の2人。
登壇したのは、宮城采生君、澁谷知希君の2人。
宮城君は、全国の小学生向けプログラミングコンテスト「Tech Kids Grand Prix 2018」にて、1,000人を超える応募から総合優勝に輝いたアプリを開発。プレゼンテーションでは、自身で開発しているゲーム「オシマル」を紹介した。C#をベースに開発しており、とくにストーリーへの意識が高い点が特徴的だった。
「Tech Kids Grand Prix 2018」にて、1,000人を超える応募から総合優勝に輝いたアプリを開発した宮城采生君
澁谷君は、「 Tech Kids Grand Prix 2018」自由制作部門第2位を受賞した人物。そのときに開発したお役立ちアプリ「今日の洋服何着てく?」について、コンセプトや使用した技術(Unity) 、郵便番号や気象情報などのAPI活用など、開発の背景を中心とした発表を行った。ちなみに、澁谷君は4才からHTMLを組んでいたそう。
「Tech Kids Grand Prix 2018」自由制作部門第2位を受賞した澁谷知希君。4才からHTMLに触れているそうだ
このように、アンダー30(30歳以下)という制約の中、筆者を含め、多くの来場者の想像の範囲を超える若いエンジニアたちが登場したのは、今回のBCU30の魅力でもあったと言えよう。
各セッションの資料については公式サイトのタイムテーブルから閲覧できるので、ご興味のある方はぜひご覧いただきたい。
Battle Conference Under30タイムテーブル
https://bcu30.jp/2019/timetable/
プログラミングバトルも白熱!
イベント中には、プログラミングのスキルを競う「プログラミングバトル」も並行して開催されていた。
プログラミングバトルの結果は次のとおり。
以上、第3回Battle Conference Under30の模様をお届けした。
ITを中心とした技術は日々進化し、3年経てば、また次の技術が登場するなど、移り変わりが早い分野である。一方で、エンジニアリングの本質部分は何年経っても変わらない部分や経験が重要になる面も多い。
このような、30歳未満という制約でイベントを設計することで、今、必要なこと、そして、これからも必要になることを、発表者はもちろん、参加者たちにとっても感じ取ることができるのではないだろうか。
また次のBattle Conference Under30が開催されたときには、どのような30歳未満のエンジニアが登場するのか、楽しみである。