Philippe Hemmel氏「Integrating LibreOffice Online in Alfresco」は、文書管理のためのOSS「Alfresco」へのLOOLの統合について発表しました。Alfrescoはワークフローなどの機能を備える強力な文書管理システムですが、共同作業には不向きでした。それをLOOLを統合することで改善したというものです。パフォーマンスを引き出すためにロードバランサーの配下にLOOLを入れ、またLOOL自体の監視を行うプロセスも自作したとのこと。
ロードバランサー+LOOLについての議論は、村上正記氏による「Experiment for large-scale operation of LibreOffice Online, 2019 Edition」でも行われました。
Tor Lillqvist氏の「Collabora Office as an iOS app on the iPad」はiOSについての、Jan Holešovský氏の「Reusing the Online as an Android app」はAndroidについての発表でした。両氏はともにLibreOfficeのサポートベンダーCollaboraのメンバーで、この取り組みはCollaboraがパートナーであるスイスのAdfinis SyGroupのスポンサーを受けて実施したものだそうです。
台湾のJeff Huang氏による「Generating ODF reports on server side」は、台湾において、サーバーサイドのレポート生成を担うAPIサーバーについての発表でした。ODFはこのような用途に向いており、いったんODFに出力してから別のファイルフォーマット(PDFなど)に変換するといった場合にも利用できます。
Svante Schubert氏による「New ODF Toolkit from TDF」は、ODFの操作ライブラリであるODF Toolkitについてのものですが、それだけでなく「フロッピーでドキュメントを交換していた時代の延長線上のやりかたは終わりにしよう」「共同作業のためにはドキュメントを交換するのではなくコミットを交換すべき」というような指針と、それを実現するためのプロトタイプ実装についての興味深い発表でした。
開発TIPSについて共有があるのもLibOConの特徴。C++の-fsanitizeについて解説したStephan Bergmann氏の「Janitor of Sanity」、コードは書いた時の何倍も読まれるのだから、もっと読みやすいコードを書こう!と呼びかけるLuboš Luňák氏の「On Making Code More Readable」、LibreOfficeのPythonによるマクロ開発についてまとめたAlain Romedenne氏の「Scripting LibreOffice Python macros aka «Macros Well Kept Secrets»」、パフォーマンスチューニングとその実例を共有したNoel Grandin氏の「We’re going on an O(n^2) hunt」、Ashod Nakashian氏によるGDBのTIPSを紹介したライトニングトークなどが印象に残りました。
台湾からのKuan-Ting Lin氏とXiao-Wu Wang氏の2人は、「Making LibreOffice a lifesaver for dying languages in Asia」として、いわゆる台湾諸語の一つ、数千人しか話者がいない言語のLibreOfficeへのスペルチェックの実装を行い、UI翻訳を進めていることについて発表していました。このような機会があることはLibreOfficeの強みの一つです。
ハンガリー政府のLibreOffice移行をサポートする組織であるNISZでは、内部でLibreOfficeの開発者を育成することで、既存のOOXMLフォーマットのLibreOfficeへの移行を推進しています。Gábor Kelemen氏による発表「Newest NISZ developments, behind the scenes」はこの点についてさまざまな知見を共有するものでした。自組織の困りごとを改善するために開発者を育成するというアプローチはすばらしいです。
2019年は地域国際カンファレンス元年
コミュニティについても少しだけ。今年2019年は、LibreOfficeにとっては記念すべき年です。いままで、国をまたいだLibreOfficeの単独カンファレンスはLibOConしかなかったのですが、2019年5月25日、26日、東京にてLibreOffice Asia Conferenceを開催しました[6]。筆者の一人おがさわらがこの報告を行いました。
同じくLibreOfficeコミュニティにおいて重要な地域であるラテンアメリカでも、パラグアイにてLibreOffice Latin America Conferenceが開催され、Gustavo Buzzatti Pacheco氏が「The challenge of a regional LibreOffice Conference」というタイトルで報告していました。