10月23日(水) 、富士ソフトアキバプラザにてUMLモデリングツールEnterprise Architectの活用事例を紹介する「Enterprise Architect 事例紹介セミナー」が開催されました。主催はスパークスシステムズ ジャパン( 株) 。セミナーの冒頭部分のみ速報でお届けします。
さらに深化するEnterprise Architectの活用事例
スパークスシステムズ ジャパン株式会社 代表取締役 河野岳史氏
セミナーの冒頭にスパークスシステムズ ジャパン( 株) 代表取締役 河野岳史氏による挨拶がありました。
今回で第3回目となる本セミナーの意義や目的について説明を行い、講演者のモチベーションを上げるため、ぜひセッションの幕間や終了後に話しかけて欲しい、感想を伝えて欲しいと語り、会場を盛り上げました。
目隠し将棋状態からの脱却
国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構 研究開発部門 第三研究ユニット 研究開発員 染谷一徳氏
続いて、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の染谷一徳氏が「JAXAにおける運用を主体としたMBSE適用事例とツールの必要性」と題した講演を行いました。
染谷氏が関わる人工衛星の開発では、開発者間で運用イメージが共有されていないことから、問題が開発後半で発生。そのためシステムレベルの改善が急務でした。そこで開発者の頭の中のみに存在する運用イメージ(≒目隠し将棋状態)を脱却すべくシステムを可視化し、かつ作業の効率化および関係者間の円滑な情報共有による品質向上を狙い、MBSEの適用を試みました。
MBSEとはModel-Based Systems Engineeringの略で、システムズエンジニアリングをモデルで行う手法です。染谷氏はシステムモデルの開発手法を解説するとともに、目指すMSBE全体像に関して説明。そして人工衛星開発におけるMBSE適用について具体的に話を進めました。
慣れているからといってモデル作成を表計算ツールで行うとUML/SysMLツールと比較して効率が悪くなる可能性があるという例も示されました(表1 ) 。
表1 「表計算ツール」対「一般的なUML/SysMLツール」
項目 表計算ツール 一般的なUML/SysMLツール
UML/SysMLが書ける 〇 図形を使って記述 〇 OMG準拠で記述
ツールの普及 〇 ほぼスタンダード × 特定の人のみ持っている
操作性 〇 既に慣れている × 慣れが必要
修正の容易性 × 一つずつ直す 〇 関係性は保持、一括変更
要素間が連携できる × お絵描き 〇 データベースとして管理
他のフォーマットに変換 × 絵は絵のまま 〇 図や表形式に変更可能
動的検証 × 絵は動かない 〇 シミュレーション可
MBSE導入の効果
染谷氏は最後に、ダミー衛星の場合と「つばめ」( SLATS衛星)での試行事例について語りました。ダミー衛星の事例では、可視化により、議論ポイントが明確化され、脳内シミュレーションもしやすく、図上で調整すべきポイントの確認が容易となり、変更要求への対応もスムーズになったということです。
また、超低高度を飛行する「つばめ」の例においては、より高い高度を飛ぶ他衛星との差分が確認でき、実運用に安心して移行できたとともに、JAXA担当もこの手法に賛同し、設計段階から試験まで中断することなくスムーズに活用できたと、MBSEの効果を強調しました。
この他、コマツ社におけるMBSEとプロダクトライン開発を組合せる取り組みや、伊藤忠テクノソリューションズによるチケット予約システム開発プロジェクトにおけるEnterprise Architectの活用例など、さまざまな視点での事例紹介が行われました。