――ぶれのない論理力を身につけて的確に仕事をこなしたい…、
そんなビジネスパーソンはけっこう多いはず。そこで 『大人のための数学勉強法』 (ダイヤモンド社) などの著書を持ち、 NHK (Eテレ) 『テストの花道』 に出演するなど話題の 「大人の数学塾」 塾長、 永野裕之さんにご登場いただき、 “根っからの文系” こそ今すぐ使える数学発想術について語っていただきました。
はじめまして。私は永野数学塾
ところで…いきなりですが問題です(・
- 「そりゃあBでしょう」
と思った人が多いと思いますが、
ただし、
- 「こういうのはだいたい引っ掛けだよ。Bだと思わせといてAでしょ」
と思った人にも、
意地の悪い問題でごめんなさい。直感はアテにならないことを実感してもらうための問題でしたm(_ _)m
数学力とは何か?
ではこのような直感が通用しない問題に直面したとき、
あ、
- 「僕は
(私は) 文系だからどうせ無理だよ…」
と思ったあなた、
ここで私が事あるごとに引用させてもらっているアインシュタインの言葉を紹介しましょう。
「教育とは学校で習ったすべてのことを忘れてしまった後になお、 自分の中に残るものをいう。そして、 その力を社会が直面する諸問題の解決に役立たせるべく、 自ら考え行動できる人間をつくることである」
──アインシュタイン
数学力の本当の姿もこの言葉に集約されています。中・
そしてそれは、
国語力こそ数学力の源
私の塾で短期間に数学の成績を伸ばす生徒さんに共通しているのは、
拙書
数学発想術~7つのパターン
私が拙書の中でご紹介した7つの発想術は以下の通りです。
- ① 整理する
- ② 順序を守る
- ③ 変換する
- ④ 抽象化する
- ⑤ 具体化する
- ⑥ 逆の視点を持つ
- ⑦ 数学的美的センスを磨く
いかがでしょうか?
少なくともいくつかは
- 「あ、
こういう考え方なら普段から使っているかも」
と思ってもらえるのではないでしょうか?
数学は
ただし意識してそれができるかどうかは大きな違いです。意識していないと
どうぞ詳しくは拙書をご覧ください……ではあんまりなので、
演繹法と帰納法
演繹法と帰納法はどちらも、
- 演繹法
- 「全体に成り立つ理論
(仮定) を部分にあてはめていくこと」 - 帰納法
- 「部分に成り立つ理論
(仮定) を全体にあてはめていくこと」
たとえば、
- 「桜の花は散る。だから、
この桜もいつかは散ってしまうだろう。」
と推論するのは演繹的な考え方です。
- 「去年も一昨年もその前の年も桜は散ってしまった。だから桜は必ず散るだろう」
と推論するのは帰納的な考え方です。
いかがでしょうか? 普段、
- 「ああ~明日はA先生のテストかあ。また難しいんだろうなあ」
と考えるのは演繹的です。ここで
一方、
- 「一学期も二学期も三学期もA先生のテストは難しかったなあ。A先生というのは難しいテストを作る先生なんだ
(後輩にも教えてあげよう)。」
なんて考えるのは帰納的です。ここで
以上をまとめますと、
…と、
- 「わかるけど、
どこが数学なの?」
と思うかもしれないですね。
数学
演繹と帰納の使い分け
演繹と帰納についてはわかりましたね?
ではこの2つの推論の方法をどのように使い分けていけば良いのでしょうか? こんな例で考えてみましょう。ある文房具メーカが新製品の開発を行うとします。およそ次のような段階を経ると思います。
- ①調査→②企画→③設計→④試作→⑤営業
- ①調査
売れ筋の商品を調査し、
ターゲットとする客層に対するアンケート等を行います。どのような商品について調査をし、 どのような項目についてアンケートを取るかを具体的に決めていくのは演繹的です。次に具体的なデータが得られたら、 ヒットしている商品に共通するデザイン・ 性能・ 価格などを、 統計処理等を利用しながら抽象化しますので、 今度は帰納的な手法が必要になります。 - ②企画
①の結果を元に新製品のアイディアを練ります。①でヒットしそうな商品のスペックはすでに抽象化されているので、
今度はそこから具体的な新商品を考えていきます。今度は抽象→具体なので演繹的手法です。 - ③設計
既存の技術と新技術の組み合わせで最良の方法を模索します。すでに
「◯◯が作れる」 と理論化 (確立) されている新旧の技術を具体的に新製品に使っていきます。すなわち演繹的です。 - ④試作
試作品が出来上がったら、
使用実験・ 顧客モニター調査などから設計の問題点と改善点を明らかにします。①と同じように実験方法や調査項目の選定は演繹的に行い、 得られた具体的なデータは帰納的にまとめていきます。 - ⑤営業
試作の問題点が解消されて、
晴れて製品化された後は、 これを売るためにプレゼンテーションしていきます。営業にも演繹と帰納の考え方を応用するために少し拡大解釈をして新製品の 「売り」 をいくつかの特徴から抽象化された 「結論」 と考えます。 「売り」 に強烈なインパクトがある場合は、 演繹的に提案していくのが良いかもしれません。たとえば 「今度の我が社のボールペンは、 インクが永久に切れないんです!」 とインパクトの大きい結論 (売り) を先に言うと、 先方は 「え~~! なになにどういうこと?」 と食いついてきてくれるでしょう。その後で 「と言いますのは…」 と具体的な話を進めれば、 最後まで興味深く話を聞いてくれるはずです。 反対にインパクトがそう強くない場合、
最初に 「今度の我が社のボールペンは、 価格が当社比で10%減の90円なんです」 と言っても、 「ふーん」 とあまり積極的には聞いてもらえないかもしれません。そのような場合は 「先日発売されたA社のボールペンは100円です。同じく新発売のB社のものは、 A社よりも書き味が優れていて価格は110円です。一方当社はB社よりもさらに書き味の良いものを開発いたしました。」 と先に具体的な話をしましょう。 その後で
「しかも価格は90円なんです!」 と続ければ、 B社よりも高性能ならもっと高いんだろうなあと予想していた先方は意外に思って興味を持ってくれることでしょう。具体例から初めて最後に一番言いたい結論 (売り) をもってくる帰納的な手法を使うことで、 インパクトの弱さはカバーすることができます。
いかがでしょうか? 最後の営業に関しては、
アンケートひとつを取っても、
上記は