瀬山士郎先生の 数学よもやま話

第3回数学大好き人間のもやもや

世に、数学大好き人間は思ったより(隠れ数学派も含めて)多いのかもしれないと思うこの頃である。おそらく、高校生の間にも学校で学ぶ数学だけではない、数学の広く面白い世界に思いを馳せている数学少女、数学少年も多いに違いない。そんな数学大好き派が、なんとなく思っていることがあると感じていた。それは、数学の知識としては知っているが、なぜなのかを知らない定理の存在である。たとえば、⁠角の三等分はコンパスと定規では不可能」⁠5次方程式の解の公式は存在しない」などだ。大学で数学を学ぶとこれらの定理の証明を学ぶこともできる。そんな知識の一つに「円周率πは超越数である」がある。πは無理数であるだけでなく、整数係数の代数方程式の解にならない超越数であることは1882年(今から一世紀以上も前!)にリンデマンによって証明された。事実としては知っていたが、恥ずかしながら、その証明をきちんと学んだことはなかった。もちろん、厳密な証明を知らなくても、事実を知っているだけでも数学の世界は大きく広がる。しかし、数学では証明のないことは信じてはいけないという警句もある。その積年のもやもやが古希を越えてやっと解消された。いままでに何度かその証明にあたって、もう1つ理解できなかったが、先ごろ比較的平易で明快な証明に巡り合うことができた。もちろん理解するにはそれなりの努力!が必要だったが、定年退職後、久しぶりに証明を追いかけ理解することの快感を味わった。おそらく、多くの数学大好き人間が、この「分かった!」体験を味わうために数学書を紐解いているのでしょう。それは具体物とは違う手触りのある、貴重な、楽しく面白い経験だと思う。

あと何十年か後(数世紀後?)フェルマーの最終定理などの証明も数学愛好家なら理解できるようになるのかもしれない。読んでみたいと思う。

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