昨年の夏は関東地方より西では記録的に暑い夏でした。
地球全体として地球温暖化によって気温が上がったのは事実ですが、地球全体の平均では最近100年で0.7℃上昇しているに過ぎません。一方、熊谷では100年間で1.9℃、東京では3.0℃も上昇しており、これは地球温暖化の効果に加えて、都市の過熱化によるヒートアイランド現象が原因と考えられます。地球温暖化による気候変化とヒートアイランド現象による温度上昇については、時間スケールも空間スケールも異なるので、両者を区別して考える必要があります。
また、熱帯夜は1940年代は10日程度であったのに対し、ここ数年は30日を超えることが多く、近年になって急激に増えていることが分かります。一方、真夏日はここ60年ほど40~60日で推移し、ほとんど増えていません。このことから、都市化の効果は最低気温に強く出ていることが分かります。さらに、夏の暑さのお話ではありませんが、都市化の効果は最高気温よりも最低気温に、夏よりも冬の方に強く出ることが分かっています。
ヒートアイランドとは、都市の中心部で温度が高く周りでは温度が低いために、等温線を描くと島のように見えるために呼ばれるようになったもので、100年以上前からこのような現象があることは分かっていました。すでに関東地方では、南部の沿岸までのかなり広い地域で温度が高くなっており、「アイランド」というイメージはそぐわないかもしれません。
ヒートアイランドの原因は?
都市化による温度上昇は、地面がアスファルトに覆われることと、建築物が数多く建つことにより、次のような現象が発生するために生じます。
- アスファルトの道路は昼間の太陽の熱射で深層まで高温となるため、夜間にその蓄積された熱が放出される
- 樹木は大量の水を空気中に吐き出している。地面がアスファルトに覆われ緑地面積が小さくなると、植物や地表からの水分の蒸発量が減少し、蒸発潜熱が減少する
- 都市への人口の集中により各種のエネルギーの使用量が増え、排熱量が増加する
- 高層建物などの壁面で太陽光線が多重反射するため、都市の構造物が加熱されやすくなる
今年、小泉首相がノーネクタイで仕事をして話題になった「クールビズ」。自分が涼しくなるということから衣料品の話が大きく取り上げられていますが、ヒートアイランド対策としては、冷房の温度設定を高めに保つことにより、上記の3)の排熱量を少なくするという効果を生むことが期待されます。
中央官庁の集まる霞ヶ関では、すでにこのスタイルがかなり定着していて、他の省庁の人が集まるような大きな会議でも、皆ノーネクタイで出席するそうです。ところが、いまだに電車の中の冷房が効きすぎているとか、風邪を引いたという話を聞きます。民間企業の営業マンたちは相変わらずスーツにネクタイでないと失礼という場合が多いのでしょう。これ以上寝苦しい夜を増やさないためにも、弱冷房が普及すると良いのですが。