今月のお天気なんでも通信

第7回台風とハリケーン

日本では、9月初めに台風第14号が日本に上陸して大きな被害をもたらしましたが、その後は大きな被害が発生することもなく、台風シーズンが過ぎようとしています。11月1日現在で台風の発生数は21個、平年が22.9個ですから、ほぼ平年並みと言えます。昨年の11月1日の時点での発生数は24個ですから、今年よりも若干多い程度ですが、被害の発生数に大きく差があるのは、昨年は日本に接近・上陸する台風が多かったためです。

一方、北西大西洋では例年以上にハリケーンが発生し、アメリカ合衆国やカリブ海沿岸諸国に大きな被害を出しました。特に8月末にアメリカ南部に上陸したハリケーン・カトリーナは、ルイジアナ州ニューオリンズを中心に大変な被害を出し、今も復興の兆しさえ見えない地区があると聞きます。また、ハリケーン・ウィルマは10月19日に、北西太平洋のハリケーンとしては観測史上最低となる中心気圧882hPaを観測しました。さらに、北西大西洋で過去最も多く発生した21個を超え、現在は23個まで発生し記録を更新中です。

台風とハリケーンは発生する場所が違うだけで、全く同じ性質を持つ熱帯低気圧です。北西太平洋で発生した熱帯低気圧を台風、大西洋と北東太平洋で発生した熱帯低気圧をハリケーンと呼びます。極端な話では、北東太平洋海域(東経180度より東)で発生したハリケーンが、西に進んで北西太平洋海域に入ってくるとハリケーンから台風に変わるということになります。

ハリケーンは台風より激しい?

外国のほうが何でもすごいと思う日本の国民性のためか、ハリケーンのほうが台風よりも強いと思う傾向もあるようですが、実際にはそんなことはなく、過去最低の中心気圧も台風のほうが低く、1979年の台風第20号が10月6日15時に870hPaを観測しています。

それなのに、今回の台風カトリーナの被害が大きかったのは、ニューオリンズの防災対策や地形の問題もありますが、緯度が低くハリケーンが発達したまま衰弱せずに上陸したことが大きな原因です。ニューオリンズの緯度は北緯29度程度で、日本で言うと鹿児島県の屋久島と奄美大島の中間あたりになります。日本を襲う台風もこの辺りにいる時は最も強い勢力であることことが多いのです。言い換えると、それよりも南にある沖縄は、毎年何度かはハリケーン・カトリーナクラスの台風に襲われているということになります。

今年のハリケーンの勢力が強く、発生数も多かった原因は、この海域の海面水温が平年よりも高かったことと、上層と下層の風の強さの差が弱かったことであるとの分析がなされています。海面水温が高かったのは地球温暖化にも原因があると考えられますが、上層と下層の風の強さの差は数十年周期の変動で、その原因は良くわかっていません。

地球温暖化が進むと、大気中の水蒸気量が増えるため、一度熱帯低気圧が発生すると非常に発達する反面、大気の状態は安定し台風の発生数は減るという研究成果があり、昨今の台風の状況はまさにこれに当てはまると言う研究者もいます。

石油は地球温暖化の主原因である二酸化炭素を発生させる化石燃料の一つです。ハリケーン・カトリーナが石油精製の関連施設を襲ったのは皮肉な話ですが、今後も地球温暖化に伴ってどのような気象災害の変化があるのか、注意深く調べる必要があると言えるでしょう。

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