2月と言えば、北日本を除いて花粉の季節。太陽の日差しも強くなってきて、気温はあまり上がらなくても「光の春」と呼ばれる時期を迎えますが、この頃最も寒い季節を迎える場所があります。それは北海道のオホーツク海沿岸の地域です。
下の図は北海道の網走と札幌の日最低気温の平年値を描いたグラフです。札幌では、1月下旬に最も低い時期を迎えた後、2月に入ってからは順調に気温が上がってきます。ところが網走では、同様に1月末に最も低い時期を迎えますが、その後も気温は上がらず2月中旬までそのまま低い状態が続きます。
これは、年によって多少の時期の差はありますが、ほぼ毎年オホーツク海沿岸を流氷が覆うためです。流氷が海面を覆うと、そこは陸地と同じような状態になり、沿岸気候だった網走がいわゆる大陸気候となって、夜間の放射冷却が強くなり最低気温が低くなるのです。
流氷のできるしくみ
オホーツク海の流氷は、北半球で最も南へ下る流氷と言われています。通常、海水は真水と違って、-1.8℃になると氷ります(真水は0℃)。また、このとき最も比重が重くなります(真水は0.4℃)。このため、水槽に入れた真水は全体が0℃まで下がらなくても、表面が0℃になった時点で氷り始めますが、海水は水槽全体の水が-1.8℃にならないと氷りません。海が氷るためにはある範囲の海域の上層から下層まで-1.8℃まで下がる必要がありますから、なかなか氷らないのです。
ところが、オホーツク海は、サハリン、北海道、千島列島、カムチャッカ半島に囲まれた狭い海で、さらに、アムール川から大量の真水が毎年補給されるために、上層に非常に塩分の薄い層ができており、これが下層の塩分の濃い層となかなか混ざらないため、結果として底の浅く塩分の薄い海があるような状態になっています。このため、この薄い層の温度が-1.8℃になった時点で海水は氷りはじめ、それが流氷として南下してくるのです。
流氷は主に、海流と風で動きます。日本海を北上した対馬暖流は宗谷岬を回って今度は北海道に沿って南下します。このため、オホーツク海沿岸では南東に向かって流れることになります。サハリンに沿って南下してきた流氷は、この海流によりやや南東に流されるため、流氷が見られる「流氷初日」は網走が最も早いことが多く、冬型の気圧配置になると北西の風になることもあって、その後知床半島に接岸します。低気圧が北海道の南を通ると、オホーツク海沿岸では東よりの風が吹くため、流氷は西に吹き寄せられ、オホーツク海沿岸の各都市でも見渡す限りの海が一面の流氷に覆われることになります。
流氷は過去には急な動きで漁船を襲い多くの犠牲者を出したこともありますが、最近は観光資源として注目されています。真っ白な流氷の平原も雄大ですが、海明けの時期の海の青と流氷の白のコントラストも見事です。一度、南下してきた流氷に会いに行ってみてはいかがでしょうか。