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2014年10月8日「魚は頭から腐るんだよ!」─systemd開発者、Linusとコミュニティに噛みつく

Linus Torvaldsの暴言癖はLinuxコミュニティではもはや「平常運転」と捉えられていることが多いが、このLinuxコミュニティの人間にとってはごくあたりまえの日常風景を、ときには激しく嫌悪する向きも存在する。

以前本コラムでも紹介したが、LinusのGKHことGreg Kroah-Heartmanに対する厳しい言葉に、IntelのSarah Sharpがブチ切れた経緯はまだ記憶にあたらしい。また、GNOME生みの親でSUSEの開発者でもあったMiguel de Icazaは何度かLinusを激しく批判したのち、⁠あんな独裁的な体制にはついていけない」とみずからLinuxコミュニティを去った。Linusとともに初期のカーネル開発に貢献した元IntelのAlan Coxも2013年にはLinux開発の世界そのものから引退しているが、Linusとのトラブルが原因ではともささやかれている。

そして今回、IcazaやCoxといった大物開発者と並ぶほど有名ではないが、かなり過激なトーンでLinusとコミュニティを強烈に批判した開発者がいる。Red Hatに籍を置くドイツ人開発者のLennart Poetteringがその人だ。

Poetteringは10月6日、自身のGoogle+において「オープンソースコミュニティの人々の多くは、コミュニティの外の人に向かってここ(コミュニティ)がハッピーな場所であることを宣伝しようとする。コミュニティへの貢献は技術的なクォリティのみによって評価され、誰もがカンファレンスでビールを酌み交わしながら楽しんでいる、とね。でもね、本当はそんなモノじゃない。こんな場所の中の人であり続けるなんて、きわめて病んでいる」という一文から始まる長めの投稿をポストし、現在、コミュニティの内外から大きな反響を呼んでいる。

Lennart Poettering -Google+

Poetteringはsystemdの開発者としても知られているが、最近、systemdをめぐる論争があちこちで起こっていることは周知の事実だ。Poetteringはsystemdの採用に批判的な古参のカーネル開発者とやりあうたびに「まったく、Linuxってなんてひどいコミュニュティなんだろう」と思わざるを得なくなったとしている。

Poetteringは人気の高いフリーソフト「PulseAudio」の開発者でもあるが、⁠WindowsやMac OS Xのオーディオスタックのほうがずっと先進的だよ、オープンソースとかいうデスクトップとうまく関連付けられないシンプルで90年代臭のするスタックに比べたらね」と挑発的な発言をしており、以来、いわゆるLinuxコミュニティの主流派であるオープンソース信奉者とは対立関係にある。投稿にも「オープンソースなヤツらは本当にクソッタレ(asshole)ばかり、そして僕がヤツらにとって格好のターゲットであることもよくわかっているよ。ヤツらは僕を殺そうとビットコインを集めて殺し屋を雇おうとしているくらいなんだから!」とどこまで本当かわからないものの、"オープンソース万能論者"に対する激しい嫌悪感を吐露している。

Linusに対しても「こんなコミュニティを作ってしまったのは彼自身にも責任がある。もっとも一番タチが悪いのは彼の周りにいる連中だけども。Linusはロールモデルと崇められているけれど、それはとんでもなく悪いロールモデルだよ。それにあの汚い言葉遣いがコミュニティを円滑にするって主張するのが信じられない、ありえないよそんなこと。あ、僕は汚い言葉も過激な言葉も使いたくないけどね」と批判、そして「言ってみればね、魚は頭から腐るんだよ(In other words: A fish rots from the head down.⁠⁠」と強烈な攻撃を繰り出している。

Poetteringの投稿に対し、Linusは現状ではとくに反応を見せていないが、LKMLの内部ではすでにPoetteringとsystemdを罵倒する書き込みが散見される。海外のLinuxメディアはPoetteringに対する批判的な声が多数派だが、中には「オープンソースの開発者なんて、30~40代の白人ストレート男性が中心で、そんな集団ではマイノリティや異なる文化の人々は主張しにくく、健全とはいえない」というPoetteringの主張に賛意を示す向きもある。Linus自身はsystemdに対してはニュートラルで中立的な姿勢を通しているが、今回の件で事態がどう転ぶかが注目される。

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