「ファイルシステムのBtrfsは、Red Hat Enterprise Linux 6の最初のリリース以来、そのステータスは(RHELにおいて)ずっとテクノロジプレビューでした。Red Hatは今後もBtrfsをフルサポートすることはなく、将来のメジャーバージョンリリース(RHEL 8以降)においては(Btrfsを)削除することになるでしょう」
Red Hatは8月1日(米国時間)、「Red Hat Enterprise Linux 7.4」をリリースしたが、上に挙げた記述はそのRHEL 7.4のリリースノート第53章「Deprecated Fanctionality(サポート中止予定の機能)」に「Btrfs has been deprecated」として含まれているものである。リリースノートでは続けて、RHEL 7では引き続きBtrfsをサポートするが、大きなアップデートを反映するのは今回の7.4までとしており、RHEL 8以降は完全にBtrfsディプリケートする方針を示している。
- Chapter 53. Deprecated Functionality
Red HatがBtrfsから手を引く姿勢を見せたのは実は今回がはじめてではない。2016年5月にリリースした「Red Hat Enterprise Linux 6.8」において、Red HatはBtrfsの開発をディスコンにすると表明、今回と同様に「もともとBtrfsはテクノロジプレビューであり、それを中止するだけ」としていたが、開発者からの反発が強かったせいか「BtrfsをディプリケートするのはRHEL 6系だけで、RHEL 7以降はサポートを継続する」と態度を変更していた。だが、今回のRHEL 7.4リリースにともない、ふたたびBtrfsから離れる意向を明らかにしたようだ。
BtrfsはもともとOracleによって開発されたファイルシステムで、旧Sun MicrosystemsがSolaris用に開発したZFSに影響を受けており、コピーオンライト(COW: Copy on Write)やスナップショットを備えている点が特徴。ストレージシステムの耐障害性を高めることにフォーカスして開発が続けられおり、多くのディストリビューションで採用されている。メジャーなディストロでは、SUSE Linux Enterprise Server 12がデフォルトとしてBtrfsを採用している。なお、Btrfsを最初に作ったChris Masonは現在FacebookにてBtrfsの実装に関わっている。
ではRed HatはBtrfsのかわりにストレージ管理にどんなアーキテクチャを採用しようとしているのだろうか。その可能性を示すひとつの動きとして「Project Stratis」がある。Red HatのプリンシパルソフトウェアエンジニアであるAndy Groverが中心となって進めているプロジェクトで、BtrfsやZFSのようなVMF(Volume Managing Filesystem)がもつ"ストレージのプール化"という良さはそのまま保ちながら、「シンプルで一貫性のあるコマンドラインインタフェース(CLI)」と「プログラマティックなAPI」でもって、RHELユーザに対しシンプルで効率的なストレージ管理を提供することを目指すとしている。
- Stratis Software Design : Version 0.8.2(PDFファイル)
GroverはStratisのホワイトペーパーにおいて「BtrfsはZFSのようなライセンス上の問題はない。だが何年も開発に取り組んできたものの、Btrfsにはいくつかの技術的課題が残っており、それらは決して解決することがないだろう」と述べており、短くない期間の試行錯誤の結果、RHELがBtrfsとは"合わない"と判断したことをうかがわせる。Btrfsのオルタナティブとして始まったStratis、まずはバージョン1.0のリリースが最初の試金石となりそうだ。